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元外資系コンサルが5,000枚のスライドを見て気付いた良いプレゼンの特徴 | #3 「割れせん」から学ぶ確証バイアスの対処法

この投稿では、前職のコンサルや現職の人材育成・ワークショップなどで出会った5,000枚以上のプレゼン資料、及びその発表の中で学んだ「良いプレゼン」の特徴を少しずつ発信していきたいと思います。今回は特に質疑応答の準備で必要となる「確証バイアス」の対処法についてです。

確証バイアスとは?

自身の主張を証明するために都合の良い情報ばかりを集めてその正当性を信じようとする一方で、反証する情報は軽視したり無視しようとする心理的傾向の事を指します。

例えば、就職活動の際に大手企業への就職が成功への近道であるという仮説を持ったとしましょう。その瞬間「ネームバリュー」「福利厚生」「終身雇用」等、自身の仮説の正しさをサポートするような情報ばかりを集め、「過去の大企業の倒産」「早期退職制度」「年功序列」等の本人に不都合な情報を無意識に見ないようにするといったことが起き得ます。また投資をする際に、保有株式の悪情報を無意識に避けること等もこれに該当します。

人間であれば誰しも持ちうるこの確証バイアスの存在を知ることが、第一歩となります。

確証バイアスの罠とは?

多くの場合プレゼンでは自分の主張を繰り広げ、最終的に相手から「YES」を引き出そうとします。そのため、当然ながら自身の主張を正当化するために都合の良い情報を準備します。これ自体はダメな事というよりもむしろ欠かせないことです。

しかしここで理解すべきことは、聞き手は批判的に話し手のプレゼンを聞くことが多いということです。ここに心理的ギャップが存在します。結果的に聞き手の反撃に対して準備が出来ていない話し手が質問に適切に答えられず、提案が却下されるということが起きてしまうのです。つまり、プレゼンというのは話し手と聞き手の心理的構造上、失敗するように出来ているのです。

確証バイアスとの戦い方 - 反証に備える

良いプレゼンというのは反証に対する準備がしっかりと取られています。具体的には予め相手が気にしそうなポイントをプレゼンに盛り込んでいたり、又は質問が来ても回答できる準備が出来ていたりします。

<例:反証に準備するための視点>
・メリット⇔デメリット(例.いい事ばかりじゃなくてリスクはないの?)
・解決策⇔実施計画(例.アイディアはいいけど本当にできるの?)
・プロセス⇔結果(例.何をやるかより最終的な利益はいくらなの?)
・定性⇔定量(例.数字で説明してもらえる?)
・内部⇔外部(例.顧客や競合はどう見てるの?)
・論理⇔感情(例.それみんなはぶっちゃけどう思うの?)

お手本となる「割れせん」

反証される前に予め都合が悪い情報を開示し、信頼を勝ち得たいい例が「割れせんべい」です(割れてしまったせんべいを集めて安く販売する商品)。何も考えずに確証バイアスに沿っていい事ばかり並べると、売り文句はおそらく「品質はそのままなのに安い!」といった内容になるでしょう。

しかし残念ながら、これだけを書いてしまうと「本当?」「何で?」「なんか怪しい」と思い、消費者は購入しない(YESとは言わない)訳です。

そこで割れせんが秀逸なのは、「割れている」というデメリットを前面(商品名)に出している点です。これによって怪しいと批判的に思っていたポイントが解消されるため、消費者は安心して商品を購入できるのです。

都合の悪い情報+その対処法をセットで説明する

ここまで確証バイアスの罠や反証に備えるための視点について書きましたが、少し補足があります。それは自分の主張にとって都合が悪い情報を、相手にとって都合が悪い情報のまま終わらせてはいけないということです。

例えば自身の提案に対する反証に備えるため、考え得るリスクを洗い出したとしましょう。それをそのまま出しても相手の反証をサポートするだけですよね・・・。ですので、そのリスクに対してどのように対処するかをセットで説明することで相手の反証を潰す必要があります。良いプレゼンというのはこの捌きがとても良く出来ています。

イメージ的には「私の提案は○○です。この案には○○といったメリットがあります。実は考慮すべきリスクとして○○があるのですが、この点に関しては○○によって対処可能だと考えています。」といったようなストーリーになります。

割れせんの例だと、「形が悪いというデメリットはあるけど、味や品質は一緒なので形を気にしない人にとってはお得ですよ」というイメージでしょうか。確証バイアスを理解した上での反証への準備。おすすめです!

まとめ

・人間は無意識に都合のいい情報ばかりを集めがちということを知る。
・反証の視点を洗い出す。
・反証に対する対処法を考え、予めもしくは質疑で説明する。

最後までお読みいただきありがとうございました。
もし宜しければ、次の記事(元外資系コンサルが5,000枚のスライドを見て気付いた良いプレゼンの特徴 | #4 人は比べる生き物)もご一読ください。

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