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前世退行したら、江戸時代の武士だった話8(79歳編)

少し立派な板張りの部屋。
布団が敷いてあって、老人が寝ている。この老人がハカマダさん。歳は79歳。

時刻は夜になったばかり。
命のともしびが消えつつある。頭はフサフサの白髪で、目を瞑っている。穏やかな顔。

ハカマダさんの右側に、正座して泣いている中年男性がいる。右腕の着物で何度も何度も涙を拭っている。いろんな人から慕われているけど、人払いをしているのか周りにはこの男性だけ。ハカマダさんに恩を感じている人。


セ)何が原因で死ぬのですか?

ハ)老衰。

セ)33歳から79歳の今まで何をしてきましたか?

ハ)妻も娘も失ってすぐ、牢屋に入れられた。そこで鞭打ちの刑(背中がえぐれて血が出ている)を受けた。3年ほど牢屋に入って出てきた。そのあとは世のため人のためになることをして生きてきた。人に優しくしたり、お金は貧しい人に分け与えたり、寄付したり……。

セ)この人生で思うことはありますか?

ハ)つらかったけど……自分なりに精一杯生きたから後悔はない。


満ち足りた気持ち。
白髪のてっぺんあたりから、光り輝く光の玉が抜け出る。


セ)今、魂になりました。誰に会いたいですか?

ハ)妻に会いたいです。迷惑をかけてしまったから。


奥さんの魂が現れ、ハカマダさんと奥さんの魂が対面する。
ハカマダさんは30代くらいの姿、奥さんは20代後半くらい。

私はその対面を少し離れたところから見ている感じ。

ハカマダさんは両膝をつき、太ももに手を置いて、泣きながら奥さんに頭を下げる。


ハ)迷惑をかけてごめん。

ハ)死なせてしまってごめん。


ビックリしたような顔をする奥さん。泣くのをグッと堪えたような笑顔になって、


奥さん)水臭いなぁ!!


顔を上げるハカマダさん。


奥さん)……もう充分罪は償ったんだから謝らなくていいよ。(刑を終えたあと)あなたは世のため人のために生きた。(一緒に過ごした日々は)私も幸せだった。


2人とも涙を流している。


奥さんはハカマダさんのことを恨んでいない。短い間だったけど一緒に暮らせて幸せだったと感謝している。

そんな温かなイメージが伝わってきた。

▶︎次の話へ(自己肯定感に変化が!)





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