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果敢なる挑戦者よ!(2021/12/19)

NFL第15週のサーズデーナイト、チャージャーズVSチーフス。

現在、AFC西地区でトップを走るのはカンザスシティ・チーフス、9勝4敗。
そして2位がロサンジェルス・チャージャーズ、8勝5敗。

この試合でチャージャーズが勝てば両チーム9勝5敗で並ぶだけでなく、チャージャーズは第3週に引き続きチーフスに2連勝ということになるため、1位が入れ替わるという大一番!

現在、チーフスはシーズン序盤の大スランプから抜け出し、ようやく本来の姿を取り戻しかけてますが、一方のチャージャーズも攻守ともに好調を維持!
両チームのエース、パトリック・マホームズとジャスティン・ハーバートのスター性や攻撃センスについては今更言うまでもなし。
となれば凄い試合になる可能性が高く、私は、何だかスーパーボウルを見るようなワクワク感で試合開始を待ちました。

そして試合開始。
まずはキッキングゲームでチャージャーズのリターナー、アンドレ・ロバーツが素晴らしいリターンを見せ、いきなりチーフス陣の24ヤードまでボールを運ぶというビッグプレーが炸裂しました!
盛り上がるチャージャーズのホーム、ソーファイ・スタジアム

そう、考えてみれば今シーズンのチーフスが序盤調子に乗れず大苦戦したのは、第2週、第3週でレイブンズ、チャージャーズにターンオーバー地獄で連敗したことがきっかけでした。
チャージャーズにしてみれば、いかに相手が2年連続でAFCを制している王者チーフスとはいえ、むしろ「今シーズンは俺たちの方が上!」ぐらいの気概があったのかもしれません。

このチャンスにジャスティン・ハーバートは、RBオースチン・エイケラーのランを2回連続で使って、またたく間にファーストダウン・ゴール。

しかしここで光ったのはチーフスのディフェンスでした。
ここ最近のチーフスの連勝を支えていると言ってもいいディフェンス陣の好調さが、ここでも生きた感じです。

エンドゾーン間際まで攻め込んでいたチャージャーズは、4thダウンゴールに賭けますが、失敗して無得点。そしてチーフスは自陣深くからの攻撃となりました。

やる気満々で登場のパトリック・マホームズ。
不利なポジションなど全く気にすることなく豊富なタレントたちを駆使して多彩な攻撃を繰り出します。

WRタイリーク・ヒルへのパス。
RBクライド・エドワード・ヒレアーのラン。
そしてホットラインとも言うべきTEトラヴィス・ケルシーへのパス。
さらにはこの試合で光っていたFBマイケル・バートンの力強いラン。

チーフスはグイグイと前進し、このファースト・ドライブをタッチダウンに結びつけます。

その後もチーフスは好調。
マホームズお得意の、パスラッシュをかわして即興的にビックプレーを決めるお馴染みのムーブも復活し、FGを決めて10-0と試合をリード。

「ひょっとするチーフスの圧勝?」

いやいや、そんな簡単な試合ではありませんでした。
ここからチャージャーズの反撃が始まります。

RBオースチン・エイケラーを中心としたラン攻撃に活路を見出しチャージャーズは、ぐいぐいとチーフスディフェンスを押し込んでいきます。

そうするとジャスティン・ハーバートからWRキーナン・アレンへのパスも冴えはじめ、あれよあれよという間の2連続タッチダウン。

序盤こそチーフスの一方的な展開でしたが、さすがにAFC西地区の首位攻防戦。
気づけばむしろ試合はチャージャーズのペースとなり、14-10とチャージャーズ・リードでハーフタイムを迎えました。

ところで、第2クオーターの残り3分15秒でのチーフスの攻撃において、チャージャーズ・ディフェンスチームの象徴たるDEジョーイ・ボサの素晴らしいラッシュにマホームズが捕まり、しかもボールをファンブルしてチーフスがターンオーバーを喫してしまうというシーンがありました。

しかしその後のチャージャーズの攻撃をチーズはよく耐え忍びました。
最後はエンドゾーンまで1ヤードまで迫られましたが耐えに耐え、14-10でハーフタイム。

タッチダウンを取られて21-10になっても不思議はないところでしたが、4点差のままで凌ぎ切れたということ。これは大きかったですね。

第3クオーター最初のチーフスの攻撃。
フィールドゴールで3点を追加して14-13と1点差に迫ります。
しかし、それからは大きな展開はなかなか見られません。

これは何も両チームの攻撃陣が不調なのではありません。
マホームズもハーバートも、思わず歓声を上げたくなるような見事なパスを何度も決めて相手陣深くまで攻め込むのですが、とにかく両チームのディフェンス・チームがここ一番でビックリするほどの対応力を見せ、得点を許しません。

ちなみにこの試合、他の試合ではまずあり得ないぐら4thダウンコンバージョンがありました。選手もコーチも熱くなっていたのでしょう。
しかし、何度もいうように両ディフェンスチームが素晴らしく、ことごとくそれが失敗するという展開になっていました。
主にチャージャーズにそれが多かったのですが、ある意味、潔いほどのチャレンジング・スピリットで、何度失敗しても安易にFGを取りにいかない姿勢は見ていて拍手を送りたいほどでした。

4thダウンコンバージョンの印象的なシーンとしては、第3クオーターの終わりにはチーフスが4thダウンインチーズで、しかもエンドゾーンまで1ヤードというシチュエーションを迎えましたが、ここでマホームズがエンドゾーン内でフリーになっていたWRメコール・ハードマンへパスを通せず無得点に終わるというシーンがありました。

また第4クオーターには今度はチャージャーズが、エンドゾーンまで残り1ヤードでRBジョシュア・ケリーがタッチダウンを狙ってダイブしたものの、空中でボールを叩かれターンオーバーを食らってしまうというシーンもありました。

どちらもタッチダウンが確実だった状況でした。
特にチャージャーズの場合は、第4クオーターで1点リード。
ここでタッチダウンを取れば勝利がグッと近づくという場面でしたので、ターンオーバーを食らうのはかなり精神的にダメージが大きかったと思います。

ところがその直後のチーフスの攻撃で、またしてもチャージャーズのディフェンスチームがビッグプレーを決めチームに勇気を与えます。
マホームズが確実なゲインを取ろうとショートパスを狙いましたが、そのボールをチャージャーズのLBウチェナ・ヌウォスが空中で叩き、浮いたボールをヌウォスが自らがキャッチ。
あっという間のターンオーバー返し。
しかもそれはエンドゾーンまで2ヤードというポジションでした。

今度はチャージャーズが、しっかりタッチダウンを決めます。
21-13。

ついに大きく試合が動きました。試合の流れは完全にチャージャーズ。

しかしこれで意気消沈するほどチーフスはナイーブなチームではありません。
その後のオフェンスで、マホームズとケルシーのゴールデンコンビが相手にいった流れを一気に引き戻す、素晴らしいビックプレーを見せます。

自陣30ヤード地点からの攻撃でケルシーにパスを通したマホームズ。
ケルシーはこれをハーフライン上でキャッチし、そのまま爆走してエンドゾーンギリギリまで持ち込みます。
決して足が速いわけではないケルシーですが、重戦車のような驀進で次々に相手ディフェンダーを跳ねのけていく姿には鬼気迫るオーラがありました。

相手エンドゾーンまで残り1ヤードもありません。
そしてここでマホームズからタイリーク・ヒルへのタッチダウンパスが通ります。
実況アナウンサーが「2ビッグウェポン」と評したケルシーとヒルで、チーフスがタッチダウンを奪った形でした。

21-19。
点差は2点という状況なので2ポイント・コンバージョンを狙うチーフス。
チャージャーズ・ディフェンスもそれは心得ています。
堅固なパスカバーでマホームズを追い詰め、チーフスのプレーは完全に崩れましたが、こういうプランが崩れた時にこそ真価を発揮するのがパトリック・マホームズというスーパースターです。

パスラッシュをかいくぐりつつ、エンドゾーン内で一瞬フリーになったヒレアーの姿を見つけると心憎いほどのコントロール・パスを投げ込みます。
マホームズからのふわりとしたパスをヒレアーがキャッチし、これで21-21。
ずっとチャージャーズがリードする形でここまで来ましたが、チーフスがついに同点に追いつきました
残り時間は約7分半。

第4クオーターも残り時間が半分になっていましたが、本当のドラマはこれからでした。
追いつかれたチャージャーズは十分に時間を使いつつジリジリとチーフス陣深くに侵入していきます。

そして残り時間が2分になろうとした時、ジャスティン・ハーバートからキーナン・アレンへのタッチダウンパスを決まります。
チャージャーズが再びリードし、スコアは28-21。

残り時間はもう2分ありません。
ですが、強いチームというのは、ここから必ず大きなことを成し遂げます。

チーフスはすかさず逆襲に転じると、この日最長となるマホームズの30ヤードのスクランブルなどを絡めて、チャージャーズ陣深くに侵入。
最後はケルシーへの7ヤードのタッチダウン・パスが決まり、ふたたび同点。
28-28。

これぞ首位攻防と言うべき凄い試合となりました。

この後、チャージャーズはハーバートのキレキレのパスを軸にふたたびチーフスにとどめを刺すべく攻め立てますが、これもチーフス・ディフェンスがゾーンに入ったかのようなパスカバーを見せて凌ぎます。

結局、そのまま28-28で第4クオーターが終了。
両者譲らぬ大接戦は、オーバータイムの延長戦にもつれ込みます。

いったい何がこの激闘に終止符を打つのだろうか?
私は固唾をのんで試合を見つめていましたが、その答えは、出てみれば自明のものだったのかもしれません。

エンドゾーンまで残り34ヤード、チーフスの攻撃。
マホームズからのパスを30ヤード地点でキャッチしたのは、またしてもケルシー。
残り30ヤードを、先ほどのリプレイであるかのように驀進してサヨナラ・タッチダウン!!

まさに「困った時のケルシー」

最後は王者が最も得意とする攻撃パターンでAFC西地区の首位攻防戦を制しました。

終わってみればジャスティン・ハーバート、オースチン・エイケラー、キーナン・アレン、ジョーイ・ボサなどチャージャーズが誇るタレントたちの活躍も素晴らしく紙一重の勝負となりましたが、タレント力の厚みという部分でチーフスが少し上回っていた気がしました。
チーフスはこれでAFC西地区での優勝は間違いないでしょう。

大健闘のチャージャーズでしたが、ここで2勝差がついてしまったのは大きいですね。
とはいえ、ワイルドカードには十分可能性を残していますので、まだまだシーズンが終わったわけではありません。

それに、この若きエースを頂く果敢なチャレンジャーたちがプレーオフで強豪相手にどう戦うのかも興味があります。
何とかワイルドカードの枠には滑り込んでほしいものです。

レギュラーシーズンは残り3週ですが、これからもロサンゼルス・チャージャーズには注目していきましょう!

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