息子が仕事をサボって帰ってきたとき、信頼の縦と横について考えた〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜
「良太くんが今、バスに乗って帰りました」
家を出て1時間もしないうちに、良太が通う作業所から電話がかかってきました。
今、機嫌よく出かけたばかりなのに、もう帰る?
どうして?
バスを降りて作業所に着いた良太はご機嫌ななめ。「今日は帰る」の一点張りだったそうで、どうしても帰りたいという良太の意思を尊重してくださり、帰宅させてもらうことになりました。
そんなことは滅多にないこと。何があったのか心配しながら、良太の帰宅を待っていました。
「ただいまー!」
予想とは違う、あまりにも元気なただいま!の挨拶に戸惑いを隠せないまま聞きました。
「どうしたの?大丈夫?」
「あのー、恐竜が〜、ガーってきて、もうあかんねん…◎△$♪×¥●&%#?!」
あたふた、しどろもどろ。
大嘘をついているわけですが(笑)
もうちょっと続きを聞いてみることにしました。
「えーっ!それは大変やん!だから帰ってきたの?」
バツが悪くなった良太は、少し怒った様子で「もういい!大丈夫!」と、話を終わらせました。
そういえば、最近、ジュラシックパークが大好きで繰り返し観ている良太。
なるほど、いい言い訳を思いついたものだと感心しそうになりましたが、ここは感心するところではない!!!
あの手この手で理由を聞き出そうとしましたが、「もういい!」機嫌が悪くなり、全く何も話してくれなくなりました。
そうだ、話をするのは今じゃない!
機嫌良く話ができるのは車の中に限る!
ということで、夕方、良太を誘ってドライブに行くことにしました。
【親子の対話は安全地帯を見つけることから〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜】
車の中でご機嫌になった良太に再び聞きました。
「今日は作業所に行きたくなかったの?何か嫌なことがあったの?」
何度聞いても良太は、「大丈夫やって、もういい」しか言いません。
本当に大丈夫なのかな。何があったのかな。
心配で必死で聞き出そうとしていたちょうどその時、姉の奈美から電話がかかってきました。
ちょうどいいタイミングだったので、今日あった良太の出来事を奈美に伝えた後、良太と話してもらうことにしました。
「良太、どうしたん?なんで行きたくなかったん?まぁな、そんな日もあるよなぁ〜」
奈美が話しかけると、堰を切ったように良太は話し出しました。
「あのね、奈美ちゃん、ぼく、ちょっとしんどかっってん。でも、もう大丈夫や。元気。明日、がんばるねん」
「そっか、良太、がんばってんねんな。えらいわ。奈美ちゃんも今、仕事いっぱいせなあかんから、大変やねん。奈美ちゃんも今日は休みたいなーって思っててん。奈美ちゃんも休んでもいいかな?」
ここから良太の様子が変わりました。
「えっ?奈美ちゃん大丈夫か?しんどいの?休んどき!大丈夫か?」
自分のことはさておき、大変だから休んでもいいかな?と相談されたことで、奈美のことを心配して、一生懸命に励まし始めました。
人は、誰かから相談されると、頼りにされていると感じます。頼りにされると強くなれるのです。
そこからしばらく2人の会話が続きました。
私には話したがらないことも、なぜか奈美にはいつもたくさん話をする良太。
良太と私、良太と奈美、この関係性の違いってなんだろう?
改めて考えてみました。
答えは、「縦の信頼関係」か「横の信頼関係」なのか。縦と横、信頼関係の方向の違いでした。
私と良太は親子なので、どうしても上下、つまり縦のつながりでのコミュニケーションと信頼関係になってしまいます。教えなければ、守らなければという思いが勝ってしまいます。心配が大きくなると、時には信頼できなくなることもあります。
奈美と良太は姉弟なので、同じ位置関係、つまり横のつながりでのコミュニケーションと信頼関係になっているようです。何を教えるでも、何を教わるでもない関係性で向き合っています。
「奈美ちゃんは僕の話をちゃんと聴いてくれる」という横の信頼関係を良太は無意識に感じとっているから、安心して本音を話せているのです。
そういえば、いつも誰よりも良太のことを信頼するのは奈美です。良太が初めて何かする時には必ず、絶対できる!大丈夫!と言って良太を信じてチャレンジさせます。私はいつもドキドキしながら心配しています。
良太が初めてのおつかいに行った時も、絶対にできると信じていたし、お金を持たずにコンビニで買い物して私が赤べこになった時も、良太のことを信じて疑わなかったのも奈美でした。
【弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった】
奈美と良太を見ていて気づくこと。
それは、縦ではなく横の関係で誰かに信頼されてると感じた時、人は強く、優しくなれるということでした。
信頼関係を築くコミュニケーションとは、縦ではなく、横の関係で相手を自立した1人の人間として扱い、向き合うこと。
横の信頼関係からうまれた安心が、思いやりや、折れない心、挑戦する勇気を与えてくれるんだということ。
息子が仕事をサボって帰ってきたことから学んだことでした。
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