あなたのおにぎりは、丸ですか、三角ですか
ちょっと、想像してみてください。
今日は天気が良いので、あなたはピクニックへ出かけることにしました。
そうだ、お弁当を作ってみましょう。
目の前には、ホカホカの白いご飯があります。
ピクニックにお弁当と言えば、おにぎりですね。
では、おにぎりをにぎってみてください。
どうですか、うまくにぎれたでしょうか。
では、できあがったのはどんな形のおにぎりですか。
私は俵型のおにぎりができました。
みなさんはどうでしょうか。
きっと違う形のおにぎりをにぎった人もいると思います。
でも、私が育った家庭では、俵型が当たり前。
お弁当に並べてたくさん入れやすいからです。
もう何十年も、俵型のおにぎりをにぎってきました。
だから私は、娘が大きくなった時、彼女が三角のおにぎりを握ってびっくりしたんです。
三角のおにぎりは、小さな子どもの手では力の入れ加減が難しい。
娘のおにぎりは、ぐにゃっとした二等辺三角形みたいになっていました。
家には、ご飯を押し込むだけで俵型にできるケースもあって、娘に「これでやってみたら」と言ってみたのですが、娘は首を振りました。
どうしても三角のおにぎりが良いと言うのです。
そして数年前、息子が作ってくれたおにぎりを見てもびっくりしました。
まん丸なのです。
よく見たら、ちぎった海苔が貼ってあり、サッカーボールみたいになっています。
息子にとっては、まん丸のおにぎりが当たり前だったということです。
不思議ですね。
私は子どもたちに俵型のおにぎりを作っていたのに。
二人はいつの間にか、違うおにぎりを作るようになっていました。
調べてみると、おにぎりの形には地域ごとにも違いがあるそうです。
関西地方は俵型。
中部地方はまん丸型。爆弾おにぎりと呼ばれます。
関東地方は三角形。
東北地方は太鼓型。焼くことが多いからだそうです。
でも最近は、コンビニやメディアの普及で、育ちや地域に関係なく、いろんな形のおにぎりをにぎる人が増えているのかもしれません。
だって、一つの家庭ですら、3種類のおにぎりができたわけですから。
そもそも呼び方だって違ったりします。「おむすび」と言う人だっています。
私は最初、娘と息子に「その形よりも、俵型の方がお弁当箱に入れやすいよ」と言おうとしたことがあります。
でも、やめました。
娘は三角のおにぎりをかじって、具が見えるのが好きだし。
息子は不器用な手先で、簡単ににぎって食べられるのが好きなんです。
じっと見ていると気づくことがありました。
持ちやすいのは娘のおにぎりで、具をたくさん入れられるのは息子のおにぎりなんです。
お弁当箱にいれる時、ラップでまいて持っていく時、すぐ食べる時。
その時々によって、食べやすいおにぎりの形は違います。
つまり「おにぎりは俵型がいい」と押しつけるよりも、いろんなおにぎりの形を認めて選べるようになった方が、生活は豊かになるんです。
おにぎりの話になってしまいましたが、これは、職場のダイバーシティでも同じことが言えます。
会社にもいろいろな人がいて、多様な経験や気づきや文化を取り入れた方が、サービスも商品も良くなります。
働くママ社員の意見を取り入れた商品開発で売上を伸ばした食品宅配サービス、目が見えない社員の意見から生まれた手触りの良い布製品などもあります。
違いを互いに認めあって、配慮をしあえるようになれば、誰にとっても働きやすい環境にもなります。人材を増やす、社員を辞めさせない、そして一人ひとりのパフォーマンスを上げるためには、そのような環境が必要不可欠です。
私は、たくさんの違いに出会うたびに思い出していることがあります。
「おにぎりは俵型じゃないといけない」と、思い込んでいた自分のことを。
何十年も、同じ文化の中で生活していると、いざ違う文化を見た時に「それはおかしいよ」「こっちの方がいいよ」と思ってしまいがちです。そこに悪気がなかったとしてもです。
でも、言われた方は予想以上に戸惑います。
「私にとってはこれが当たり前だったのに、おかしいのかな」と思うと、自信を失ってしまいます。言いたいことも言えなくなります。
受け入れることができなかったとしても、まずは認めることができます。
「私はこうやっていたけれど、あなたはこうやるんだね」と思うだけでいいのです。
認めると、相手の考え方や行動を見つめることができます。
その中から、自分が気づかなかったやり方や価値が生まれてくるのかもしれません。
それで失敗したり、効率が落ちてしまったりするようなら、押しつけるのではなく、「こんなやり方もあるよ」と、押しつけるのではなく、提案する方法もあります。
私に違うおにぎりの形と楽しみ方を教えてくれた、娘と息子のように。
いろんなおにぎりの形を見つけていきたいな、と思っています。
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