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インターン生のホワン君がやって来た

私たちのお店では毎年この時期になるとインターン生を迎える。
2年前はフランス人、去年はポーランド人だった。

今年は5月からインターン生のホワン君が私たちのお店で働いている。
21歳、中国は広東省出身の大学生。現在は中国とフランスの大学の両方で学んでいる。

ホワン君はアンジエの大学でワインツーリズムを専攻している。
ワインツーリズムとは、ワインの試飲、消費、購入を目的とする観光のこと。ワイナリーへの訪問、ワインの試飲、ブドウ園の見学などのガイドをすることらしい。
詳しいことはわからないが、ここワインの産地ならではの学部なのかもしれない。

仕事の仲間内では名字じゃなくて下の名前で呼ぶが、私たちはホワン君を名字で呼んでいる。なぜかというと名前の発音が難しすぎて、誰も発音できないからだ。

ホワン君は毎朝トロチネットと呼ばれる電動キックボードで颯爽とやって来る。出勤して先ずはパン・オ・ショコラを食べる。それから掃除や打ち合わせをして、お客さんを迎える。少し時間はかかるが、仕事は丁寧だ。

アジア人にとってフランス語を話すのは容易なことではない。私も最初は苦労した。ヨーロッパ人は言語が似ているので、習得が早い。生まれがローマ字ではない言語の私達はそれなりに苦労する。

彼は中国の大学で2年間フランス語を毎日勉強したそうだ。まだまだ言いたいことが言えないもどかしさはあるみたいだけど、この1ヶ月でかなり上達したと思う。フランス人の中で揉まれて日々成長している。

ホワン君は怖がらずにどんどん話す。わからない言葉があるとすぐに聞いたり、ネットで調べて理解する。そして使うを繰り返している。
常連さんを相手に喋りまくっている。お陰で覚えなくてもいいスラングも覚えてしまったが⋯
やはり語学の上達は実際に使わないとダメなんだなと彼を見ていて思う。

ホワン君は素直で、いつも笑顔を絶やさないから皆んなに好かれている。
身なりや行動からして育ちの良さが伺える。

彼の夢は「フランスでワイン観光の仕事をすること」。
今年卒業予定だが、卒業後もフランスに残りたいらしいので、仕事先を見つける必要がある。できればワインに関する仕事に就きたいそうだ。

その熱い思いを周りの人に伝えている。彼の情熱が周りの大人たちを動かし始めた。

私たちは彼の夢が叶うようにと願って、ワイン生産者やガイド関係の人達に彼のことを紹介している。

普段ホワン君と私はフランス語で会話しているが、時々違う手段も使う。
それは「漢字」だ。発音は違えど、漢字で意味は伝わるので分かり合える。

この間、大河ドラマの「光る君へ」を見ていた時、まひろと周明が浜辺で名前だったかな?砂に漢字を書いて会話しているシーンがあった。
私たちもあんな風に漢字を書きながら、意味を伝えている時がある。
この時ばかりはフランス人たちは中に入れない。

これから夏の繁忙期にかけてホワン君が戦力になってくれることを期待しつつ、彼にとって就職につながる良い出会いがあることを願っている。

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