見出し画像

2022年の通訳(欧州編)

概要

1年前はちょうどオミクロン株についてWHOが懸念を示し、やっと緩和されて戻りつつあった対面通訳需要がまた振り出しに戻り、相次ぎキャンセル。暗い気持ちで年末年始を迎えたことを覚えています。
幸いオミクロン株は軽症で済むことが多いことが分かり、イギリスではジョンソン首相がFreedom day(自由の日)と名付けた2月19日、すべてのコロナ規制が解除されました。それ以来、どこで何をしても陰性証明やマスク着用を求められることはありません(イギリス国内に限り)。
まだ日本の水際対策は厳しいままでしたが、少なくともイギリス側(続いてヨーロッパ諸国)は緩和されたため春先から対面需要が戻ってきました。
私自身はロンドンでの日帰り案件のほかイギリス国内の地方都市、フランス、ドイツなど出張案件も続きました。
2020年〜2021年の同時通訳では1人1ブース与えられましたが、またコロナ前のようにパートナーと一つのブースで同時通訳するようになりました。
リモート通訳に慣れてはいたけれど、「パートナーと物理的に一緒にいられるってこんなに楽なんだ!」と感動。
日本からの出張者は初日はマスク着用で到着されますが、会場でマスク着用は日本人だけだと気づくと大半はすぐに外されます。でも、まだ日本に帰国するためにはPCR検査の陰性証明が必要でしたので用心してマスク着用を続ける方もいらっしゃいました。
今思えば春先の通訳ではまだ欧州でもコロナ対策の雰囲気が少しありました。案件によっては毎朝コロナ検査が必要だったり、公共交通機関(フライト含む)利用時はマスク着用や陰性証明書提出が義務付けられていたり、日本人がマスクをしていると西洋人も気を使ってマスクを着けたりなど。
夏の間は欧米でも感染は増えていたようですし、私も罹患しました。でもコロナ規制は緩和される一方で、観光地は大賑わい。私自身、ニューヨーク、トロント、イタリア旅行を満喫。どのフライトも満席で空港は混雑。
その後は実家の事情で日本に6週間ほどリモートワークをしながら滞在し10月2日にイギリスに戻りました。
というわけで夏休みをしっかりとった後、秋に欧州にて対面通訳を体験すると…春先と違って完全にポストコロナの雰囲気。コロナ検査を求められることはなく、「密」そのもののカクテルパーティ、ハグ、握手、ビュッフェ形式の食事などコロナ禍ではNGだったことも再開し、あまり気にしている人はおらず皆楽しそう。私も楽しかったです。そういう会議に出た後コロナ感染者が出たという話も聞いていないのでこのままコロナ前の雰囲気で対面通訳が増えればなあと思っています。

会議の開催方法ーハイブリッド形式が主流に

対面の通訳需要は戻りつつありますが、まだまだリモート通訳の問い合わせも多いです。そして、対面の案件でもリモートの案件でも結局はハイブリッド形式であることがほとんどです。
つまりリアルな会場で大勢が参加していてもリモートでも参加できるようになっていて、通訳者はオンサイトの場合もあればリモートの場合もあり、またその組み合わせもありです。

先日は150カ国以上から500名くらいが参加する大きな国際会議で通訳しました。大半は現地に集合しましたが、やはりまだ旅行できない人たちもいるのでZoomでも参加できるようになっています。公式言語の同時通訳はコロナ禍をきっかけにInterprefyを使って提供されます。コロナ禍当初はスマホで通訳を聞く必要があり上手く使えない人が多かったようです。あるときからInterprefyの同通をZoomの同時通訳機能に取り込めるようになったので通訳の聞き手には便利になりました。

ただ採決が必要なタイプの会議はハイブリッドだとずいぶん煩雑です。以前は挙手で採決が取られていたのが全員電子投票になり、参加者のITスキルが試されます。会議参加者は年配者も多く、リアル会場から各自のデバイスを使って電子投票のプラットフォームにうまくログインできない人が続出し、会議の進行が遅れることもしばしば。
リモート参加の場合は遠隔ログインの環境を整えて参加する人も現地で対面の会議だと準備が足りない(デバイスの準備、バッテリーの充電、ログイン用のID, パスワードの事前確認など)ことも多々あるようです。

ハイブリッド形式だから出来る新たな通訳モード

通訳者としては、ハイブリッド形式だから出来ること、またその課題にも気が付きました。
私自身は以前なら簡易同通機器を使って同時通訳をしていた某リピート案件にて、今回からLINEグループの通話で同時通訳をするようになりました。
簡易同通機器だと電波の届く距離が限られているけれどもLINEの場合はネットにつながれば遠くの人も、例えば欧州に出張できなかった人が日本から通訳を聞くことも可能というメリットもありますが、やってみて分かるデメリットも発覚。
通訳を聞く人は、前なら簡易同通機器の受信機を受け取って専用のイヤホンを付けるだけでしたが、その人たちも事前の準備が必要です。当たり前のようですが、スマホ用のイヤホン持参、スマホのバッテリーが十分に残っているだけでなく会議が1日中の場合は途中で充電も必要などです。また通訳を聞く人のマイクがONになっていて、その方がMute/unmuteの仕方を知らないなどの問題もありました。会社や自宅からのリモート参加ならイヤホンやバッテリー充電のことをあまり気にしなくていいのですが、オンサイトだと忘れがちです。
また私はオンサイトの会場からZoomにログインしてリモート同通を試みましたが、これもZoomと会場の音のバランスやデスクスペースなど自宅でのRSIとは勝手が違うので一長一短でした。
ということで、ハイブリッド形式は、通訳者も通訳の聞き手も、そして一般会議参加者も現地に向かう準備とリモート参加の準備と両方が必要になることを体感しました。

リモート参加の登壇者

会場に来られない人がいる場合、事前収録した動画を流す場合とリモート参加してスピーチする場合があります。リモート参加のほうが一体感があっていいけれど参加の仕方によっては閉口することも。これまでに車や電車で移動中に参加した人を何度か目撃してきました。バーチャル背景にしていても明らかにシートベルトを着けていたり、ぼかし背景、または勇敢にも(?!)リアル背景なので移動中ということがバレます。加えて先日の発言者は、移動中の車の中から早口で音質最悪。大勢の参加者がいる会議でそのような発言の仕方って通訳しにくいだけではなく他の参加者にも失礼じゃないでしょうか? どんなに忙しい人であっても会議時間と移動が重なる場合は事前収録が望ましいかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?