見出し画像

#11 書店員/出版者【北田博充】①

【H…Hiromi / K…北田さん】

▪️K.こんな機会をいただきまして、
ありがとうございます。

▪️H.こちらこそです!Hiromiと言います。
普段はTikTokを主にSNSで、出版を目標に本の紹介やインタビュアーとして活動しているんですが、今日は対面インタビューさせていただきます。よろしくお願いします!

「本屋のミライとカタチ」の著者
北田博充さんにお話を伺います。

【第11回目ゲスト】
北田博充さん

梅田 蔦屋書店 店長・文学コンシェルジュ。
大学卒業後、出版取次会社に入社し、2013年に本・雑貨・カフェの複合店「マルノウチリーディングスタイル」を立ち上げ、その後リーディングスタイル各店で店長を務める。2016年にひとり出版社「書肆汽水域」(https://kisuiiki.com/)を立ち上げ、長く読み継がれるべき文学作品を刊行している。2016年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社。現在、梅田 蔦屋書店で店長を務める傍ら、出版社としての活動を続けている。2020年には本・音楽・食が一体となった本屋フェス「二子玉川 本屋博」を企画・開催し、2日間で3万3,000人が来場。著書に『これからの本屋』(書肆汽水域)、共編著書に『まだまだ知らない 夢の本屋ガイド』(朝日出版社)、共著書に『本屋の仕事をつくる』(世界思想社)がある。

▪️H.北田さんは本も書かれていますが、
インタビューで場所をお借しいただいている
梅田蔦屋書店の店長さんもされていますよね!

北田さん自身は、
昔から本は読まれていたんですか?

▪️K.そうですね。本を読み始めたのは、
大学生になってからです。
ちょっと人よりは遅いと思います。

▪️H. 逆になんで大学生から読み始めたんですか。

▪️K. たまたまですよ。人が本を読み始めるきっかけって色々あると思うんですけど、大半の人は親しい友人とか、先輩とかに薦められてっていうのが多いと思うんですけど、自分もそうだったと思います。

▪️H. ちなみに、誰からだったんですか?

▪️K. いや、覚えてないんです、全く。
ただそういうきっかけだったとは思います。

▪️H. どういう本だったんですか。

▪️K. 小説ですね。
何かは全く覚えてないです。

▪️H.そこから面白い!ってなったんですね。

▪️K. そこからですね。
正確に言うと、高3の受験勉強で、
センター試験の過去問を解いていた時、
国語の小説の問題で、山田詠美さんの小説が出てきて、それがたまたま面白くて。

▪️H. じゃあ、その問題を解いてるところから。

▪️K. そうです。これを読んでみようかなと思い、書店で購入しました。そこから、一気にまとまった量を読むようになりましたね。

▪️H.急に変わったんですね!

▪️K.急に変わりました。

▪️H. その引き込まれた魅力って何だったんですか。

▪️K. 今になって思うと、1冊目、2冊目の面白さっていうのが大事なのかな。 やっぱり、いきなり薦められた本が難しいものだと、次の1冊に手が伸びないじゃないですか。その時、薦めてもらった本が、たまたま本当に面白かったからだと思うんです。

▪️H. その時はどのようなジャンルの本を
読まれたんですか。

▪️K. いろんなものを読みましたね。

▪️H. それも自分で選んでですか?

▪️K.そうですね。そこから書店でアルバイトをするようになったので。

▪️H.そこまでだったんですね!

▪️K. はい。いろんな人にお薦めとか教えてもらえるので。

▪️H. そのまま出版関係のお仕事に進まれたんですか?

▪️K. 4年間書店でアルバイトをして、出版業界で働こうと思い始めました。最初は出版取次(本の卸しの会社)で働いて。その後、書店で勤めてって感じですかね。後は、自分で出版社をやったりとか。

▪️H.ひとり出版社ですよね! 
自分で始められたんですよね?

▪️K.そうですね。

▪️H. 卸しの仕事しながら、出版をしだしたのも同じぐらいの時期からですか?

▪️K. 取次を辞めたのが入社10年目で、
その時は退職金で1冊目の本を作りました。

▪️H.その後にまた書店さんで働かれたんですね。

▪️K. そうですね。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)に入ったのが2016年なので、そこからは書店で働きつつ、個人事業主として出版活動も並行してやっています。

▪️H.逆に本を書こうって思ったのはなぜですか?

▪️K. 1冊目の単著『これからの本屋』は2016年に書きました。10年間出版業界で働いてきたので、それまでに考えてきたことを、一度整理しておこうと思って。私が尊敬する書店主さんや書店員の方にインタビューをしてまとめたのが1冊目です。

▪️H.北田さんの本を読んで思ったのは、
『本屋のミライとカタチ』もそうですし、
すごくインタビューがお上手だなと。

▪️K. ほんとですか。そんなことないと思います。

▪️H. インタビューを1冊目でもされてたと思うんですけど、いろんな方とお話してる機会って普通の人より多いのかなと。

▪️K.そうかもしれないですね。

▪️H.その時にインタビューを通して、
学んだことってありますか?

▪️K..インタビューする時に結構やりがちなのは、「こういう結論に持っていきたい」っていうのを先に描いてインタビューしちゃうことです。そうなると、面白くなくなるというか。

▪️H.ゴールが見えちゃうんですね!

▪️K. 話す方もそれが見えちゃうと話しにくいと思うんですよね。だから、できる限りそうならないように無駄話も交えつつ。自然と話すつもりがなかったこととかが出てくる方が、結局まとめると面白かったりするので、それはすごく注意していて。だから、長時間インタビューを取って、編集してって感じです。もともと3時間とかインタビューしてるものもあります。

▪️H.それ凄いですね!
10年間働いてみてどう感じたんですか。

▪️K. ずっと一貫してるんですけど、1冊目の本でも2冊目の本でも、普段本を読まない人にどうやって本の魅力を伝えるか。それしか書いてません。同じことばっかり言ってますね。

▪️H. なるほど。『本屋のミライとカタチ』は
何冊目になりますか。

▪️K. 単著では2冊目です。共著書が他に2冊ありますが、それでも似たようなことを書いていると思います。

▪️H. そうなんですね。今回の本は私が思っていたことを言語化してくれた本だなと思っていて。
自分も本は好きだけど、別に書店員でもなければ、本屋さんで働いた経験もないんですよ。でも本は好きで読んでいて。ここで「広義の本屋」と「狭義の本屋」っていう話題が出てくると思うんですけど、自分も本屋さんなんだと思いました。

▪️K. まさにその通りです。

▪️H. それが嬉しかったのと、読者も本屋さんの立ち位置になっているじゃないですか。でも、その意識をみんなおそらく持たずに本が好きで薦めてるじゃないですか。

▪️K. そうなんです。Hiromiさんのような方が
理想としている読者かもしれないです。

一昔前の「読者」って、消費者という言葉に近かったと思うんです。与える側と与えられる側になっていたなと。書店が与える側で、読者が与えられる側です。

でも、今の時代の読者って自分たちで発信したり、魅力を伝えたり、SNSがでてきたことでそういう状況になってきているじゃないですか。

となると、1番可能性があるのが、
「読者」だと思っているんです。
つまり、読者=「広義の本屋」じゃないかと。

これまでにも、「本の魅力を発信したい人たち」はたくさんいましたけど、そういう人たちに名前がついていない状態だったと思うんですよ。

だから、本が好きでいろんな人に薦めようとしている人たちは、多分自分のことを本屋だと思ったことはなかったはずなんです。

そこを認識していただくというか、
「広義の本屋」なんだよ、あなたも!って
いうのが1番伝えたかったことで。

別に書店で働いてる人とか、本屋で集まってる人だけではなくて、そういう人たちも含めて、もっと楽しいことを一緒にしていきましょう!という発信をしたつもりなので、そう受け取っていただけるのはすごくありがたい。

▪️H. 本当に嬉しいです。たまたま私も本屋さんで今回の本を見かけて。本は好きで周りに薦めているけど、これって役に立ってるのかなとか、自己満足じゃないのかなって思ってしまっていて。

▪️K. いやいや、そんなことないですよ。

▪️H. 一緒に出版業界を盛り上げてる一員だよって言ってもらってるようで、本当に嬉しかったです。

▪️K.一員ですよ。冒頭でちょっとお話ししましたけど本を読まない人にとってどういうお薦めが本を手に取ってもらうきっかけになるかというと、書店員のおすすめとか、電車の広告ではないはずなんですよ。

親しい友人とか、尊敬している先輩とか、そういう人たちから、「この本面白いよ」って言われることで、興味を持って手に取るはずなんです。

その親しさや間柄っていうのが重要なんです。
読者の方が身近な人に広げていくっていうのが
1番本の魅力を伝えやすいはずなんです。

書店員が書店の現場で頑張ろうとしてできることとは違うことができるはずなんです。

▪️H. 確かに。ちゃんと役割を分けてくれていますよね。書店員さんはその興味を持った人をいかに楽しませるか。
本屋の入り口と言いますか、蔦屋書店さんもだと思うんですけど、別に本だけじゃなくて、たまたまスターバックスに来たとか、旅行の相談があってきたとか。いろんな入口を作られてるなと思います。

▪️K. そうですね。蔦屋書店はまさにそういう店作りをしています。この本の中で言った、「広義の本屋」と「狭義の本屋」っていうのは、それぞれ役割が違うってことをこの本に書きました。

基本的に「広義の本屋」っていうのは、
わかりやすく言うと、
”種まきをする人たち”です。

一方で、「狭義の本屋」っていうのは、
書店の現場で、
”刈り取りをする仕事”です。

「広義の本屋」から「狭義の本屋」への導線作りも必要だし、両者の役割分担も重要です。やってる仕事は違うけど最終目標は読者に本を読んでいただくことなので共通目的は一緒なんですよね。

蔦屋書店の場合は、刈り取り(本の販売)はもちろんするんだけれど、 本に興味がない人に足を運んでいただく工夫もしています。

読書への入り口みたいなものが
本以外のところにもあるっていうのが、
蔦屋書店の魅力かなと思います。

スターバックスでお茶をしに来るとか、シェアラウンジに仕事をしに来るとか、そこに来た結果、その周辺に本があるから本を手に取ってみようっていう店作りになっています。

▪️H. 確かに、本の置き方も独特ですよね。

▪️K. そうですね。分類が十進分類になっていないので。生活提案ジャンルって呼ばれるカテゴリーに基づいて、そのジャンルに関わる本が版型に関わらず置いてあります。

▪️H. それに、コンシェルジュさんも
どの本がいいかお薦めしてくれますよね。

▪️K.お店でお声掛けしていただければ、その担当ジャンルのコンシェルジュが本をおすすめしてくれますので、「こんな本を読みたい」とか、「こんなことで悩んでるんだけど」と相談してもらうとコンシェルジングします。

▪️H. それもすごいですよね。
実際、興味ない人って薦められたら、とりあえずその本を買おうってなると思いますけど、最初って何を読めばいいかわからないですし。たまたま1冊目が苦手な本だったりとか、思っている本と違うかったりしたら、読むのをやめてしまう人もいるかもしれません。そこに寄り添える環境があるっていいなと思いました。

▪️K. 梅田 蔦屋書店だけではなく、全国の蔦屋書店にコンシェルジュがたくさんいるので、できれば会いに行って、本のお薦めとかを聞いてもらえると嬉しいです。蔦屋書店は従業員がバッジを付けてるんですね。 オレンジ色のバッジとグレーのバッジがありまして、コンシェルジュはオレンジ色のバッジを付けています。

▪️H.じゃあ、オレンジの人を見たかけたら。

▪️K. あ、コンシェルジュだ!と思っていただければ。

▪️H. わかりました!それに、コンシェルジュさんによってもこの本が得意とかあるんですか?

▪️K. うちはジャンルごとにコンシェルジュがいるので、そのジャンルのプロフェッショナルがコンシェルジュなんですね。 普通の書店だと、食の担当っていうのは、食の本に詳しい人だと思うんですけど、蔦屋書店でいう食のコンシェルジュというのは、食の本のコンシェルジュじゃなくて、食というジャンルのコンシェルジュなんです。
食の本も雑貨も家電も全部詳しいですし、要は生活提案をすることが仕事なので、その領域の本だけのプロではありません。

▪️H. そうなんですね。面白いですよね。
この本にも書いてあったと思うんですけど、本がゴールじゃないじゃないですか。

知識を得たいとか、
自分が興味あることを知りたいっていう
ツールが本であって。

その先は別に、もしかしたら家電が欲しいだったり、料理をもっと学びたいであったり、別に本を読みたいから来てるわけでもないかもしれないし。そこまで考えて店作りをしているのって本当にすごいなと。

▪️K. ありがとうございます。

▪️H. 北田さんはどのジャンルがお得意なんですか?

▪️K.私は店長兼文学コンシェルジュです。自分で出版社もやっていて、その出版社で刊行しているのも文学作品なので。人が出してる本を売るのも面白いですけど、自分で作った本を売るっていうのは、また熱量が違って面白いです。(②に続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?