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生姜のお話

前回、前々回と冷え性について話しました。今回は、冷え性の漢方治療で非常に重要な役割を担う生薬、生姜についてです。

生薬としての生姜も、一般的に家庭で料理に使われる生姜と同じものです。ただ、生薬としての漢方は、加工してあります(生薬に加工することを修治といいます)。
この加工方によって、生姜は生姜(しょうきょう)乾姜(かんきょう)に分かれます。

・生姜(しょうきょう)

ひね生姜を、そのまま乾燥させたものです。乾かした生姜なので乾生姜ともいいます。主な成分にジンゲロール、ショウガオールという辛味成分があります。
発汗作用、健胃作用、体を温める作用などがあり、風邪に用いる方剤、吐き気や食欲不振に用いる方剤などに含まれています。

・乾姜(かんきょう)

生姜に熱を加えて乾燥させたものです。生姜と比べてショウガオールの含有量が多くなっています。
生姜よりも、体を温める作用が強力なため、冷え性に対する方剤や、冷えて衰弱している状態に用いる方剤に含まれています。

・ジンゲロールとショウガオール

生姜に含まれるジンゲロールが、加熱することで脱水反応をおこしてショウガオールに変化します。すると体を温める作用がより強力になります。
ジンゲロールは生姜を食べた時に最初に感じるピリッとした辛さで、ショウガオールは後から感じるジワジワとした辛さです。
ショウガオールの多く含まれる乾姜を使用した漢方薬を内服すると、口の中がジワジワと辛くなり、体も奥からジワジワと温かくなり、汗が出てきます。

・ひね生姜について

吐き気を止める効果は、生の生姜の方が強いとされています。なので、吐き気の治療に使う時は、漢方薬にスーパーなどで売っているひね生姜をすりおろした汁や、チューブ入りの生姜を少し加えると良いです。また、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、乾姜人参半夏丸(かんきょうにんじんはんげがん)など嘔気に用いる方剤の生姜・乾姜をひね生姜に変更すると、嘔気に対する効果がより一層強くなります。

ひね生姜→生姜(しょうきょう)→乾姜 と変わるにつれて、制吐・健胃作用がメインだったのが体を温める作用がメインに変化していく、というイメージで捉えてもらうと良いと思います。

・生姜を活用しよう!

家庭で生姜を使用する時、胃の調子を整えたいとき、吐き気をすっきりさせたい時には、生の生姜を使うと良いでしょう。
体を温めたいときには、加熱して用いましょう。調理法としては、生姜を60分蒸すという方法が、茹でる・焼く・レンジ加熱よりも、ショウガオールへの転換率が高いという論文がありました。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/6/48_398/_pdf
日本調理科日学本会調誌理科学会誌vol.48,No.6,3 98~404,2015)

自宅で生姜を蒸してから乾燥させた自家製乾姜を作っておき、料理に使っても良さそうですね。また、「蒸しショウガ」でレシピ検索したら、体が温まりそうなメニューが沢山出てきました。
生姜はとても身近で非常に有用な生薬ですね。

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