見出し画像

小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-03

 第1話 SCENE 2-①

-------------------------------- 

  気がつくとそこは、どこかの建物のロビーのようだった。
  天井の高い開放的な空間の脇に置かれたベンチに私は寝かされていた。
 
  ゆっくり体を起こしたところ、幸い体に痛みなどはなかった。
  自分の身に何が起きたのか理解が追いつかないまま、ひとまず
  周囲を見渡してみたものの、目に入ってくる景色に
  私はまったく見覚えがない。

  おそらく、ここはどこかのエントランスホールと思われる。
  フローリングや壁には大理石が敷き詰められ、年季と高級感を感じる。
  吹き抜けの天井は高さ10メートル以上はありそうだ。
  天井には格子窓がはめられていてその向こうは一切の闇、夜である。
 
  中でも最も存在感を放っているのが、中央のにある大きな階段だ。
  幅の広い階段をのぼっていくと、途中で
  大きな時計が埋め込まれた正面の壁にぶつかり踊り場を形成。
  
  そこで通路が左右に分かれ、折り返すように二階へと繋がっている。
  これがCMやドラマであれば、今にもドレスをまとった美しい女性が、
  二階からゆっくりと降りてきそうな、そんな格式高そうな階段だ。 

 
 「あっ、起きられたのですね!」


  突然、声がした。
 
  しかしそれは階段からではなく、
  ベンチで寝かされている私の背後からだった。
 
  驚いて声の方へ振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
  少女の背丈は小学校高学年…ちょっと小さな中学生くらいであろうか。
  ただその小柄な身長以上に、その少女は異様な雰囲気を纏っていた。

  まず目に入ってくるのは、その美しい金色の髪の毛だった。
  つややかなストレートのロングヘアは腰のあたりまで伸びていて
  前髪はラフに7:3に分けられている。 
  顔立ちは日本人のようだから欧米の血も混ざっているのかもしれない。
  それくらい少女の金髪は毛染めではない、自然な輝きを放っていた。
 
  ただ、私が目の前の金髪少女に『日本人である』という
  可能性を見出した理由は顔立ちだけではなかった。

 <②に続く>

 <前回>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?