小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-04
第1話 SCENE 2-②
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少女は振袖を着ていたのである。
しかも子供が着るには若干不釣り合いな真っ黒な振袖だ。
厳密にいえば生地や帯部分にところどころ金色や銀色の模様が
施されてるが、それでも圧倒的に黒い部分が衣服全体の面積を占めている。
少女の金色の髪の毛と白く透明感のある肌が
漆黒の振袖で一層際立って見えた。
カラン コロン……
小気味よい下駄の音が大理石に反響する。
その長い髪の毛を左右に揺らしながら
私のもとにかけよってきた少女が尋ねてきた。
「お加減はいかがですか?」
「え? あ、はい たぶん大丈夫…です」
私が少女に返事をすると、なぜか少女のほうが
ひどく驚いたような表情をした。
まるで "返事をするなんて思いもしなかった" というような、
そんな表情である。
さらに少女の顔はみるみる紅潮してゆき、
眉毛は困っているような、だが口角は上がってなんだか嬉しそうで、
いったい私にどのような感情を抱いたのか
全く判別できないものになっていた。
「…えへっえへへへ……ハッ もっ申し訳ございません!
わたくしったら…!」
自分の顔がニヤけているのを自覚したのか、
少女は慌てふためきながら私に謝罪した。
<③に続く>
<前回>
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