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すりこみ(2020.6.3)
かたい殻を割って
ようやく這いだした先に
柔らかい胸をひらいたあなたがいたから
愛するしかなかった
ちいさな部屋を捨てて
息を吐きだした先に
ほうとゆれて光るあなたがいたから
愛するしかなかった
いつでもその先に
わたしのあらゆる先に
あらわれては消えるあなたがいたから
愛するしかなかった
そのしかたなさは
まだらの膜のなかで
うすい壁のなかで
すでに育まれたに違いなかった
でなければ
いずれ消えてゆくものを
あなただからといって
どうして
愛したりするだろう
また
ノックの音がする
しかたなく
また
あなたを愛する
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