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Moon Sick Ep.8

「ねぇ、知ってる?」
天体望遠鏡を覗きながら彼女が聞いてきた。

「人類は、何度か、滅びと再生を繰り返しているって話…」急にどうしたのだろう?

「……聞いたことはあるよ。それがどうかした?」
彼女は、それに答えずに話し続ける。

「人は滅びが近づくたびに、別の星へと移住してきたの」
「うん…」
「だって、そうしないと、人が生き延びる術はなかったから…」
「うん…」
「そうなった時、人が、最初に目をつけるのは、どこだと思う?」
月を眺めながら、彼女が尋ねる。
「月?」
彼女が頷く。
「月は、そのたびに、人類が全滅するのを救ってきたの」
「それは、何かの小説の話?」
彼女は、俺の問いには答えない。
「人は、そのたびに月に移り住んできた」
まるで見てきたかのような言い方をする。

「そのまま、地球で再び暮らせるようになるまで、月で何百年、何千年と暮らしていたの。月で暮らす内に、人はだんだん小さくなっていった…」その言葉に、俺はゾクリとした。この話は、まるで…。
彼女は、話し続ける。

「地球の6分の1しかない重力に対応していく内に、人の身体は、だんだん小さくなっていったわ。重力は、質量に対して働くから…」

「逆に、長く地球で暮らしていると、身体はどんどん大きくなっていく。恐竜がいい例よね」確かに人の平均身長は、年々伸びているし、恐竜はかなりでかい…。いや、そんなことよりも、さっきから、彼女は何を言っているんだろう?

しだいに手が汗ばんできた。

ついさっきまで、あんなにも近くにいたはずの彼女が、急に遠くへ行ってしまったような感覚に、俺は焦っていた。

何よりも、彼女が口にしたセリフと同じようなことを言っていた人を俺は知っている。そのセリフをなぜ彼女が…?

彼女は、まだ月を眺めている。

【御礼】ありがとうございます♥