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【DXの本丸!?】Digital Adoption/デジタルアダプションについて

久しぶりの投稿になってしまいました。下書きばかりが増えて、なかなか書ききれないでいてしまった数ヶ月猛省しています。

さて、今回は最近気になっているテーマの一つであるDigital Adoption/Digital Adoption Platformについてまとめてみました。ぜひ読んでいただけますと嬉しいです。

1.Digital Adoption(DA)とはなにか

まずは、Digital Adoption(DA)を分解して考えてみます。

Digitalとは・・・デジタルのことです!(真顔)。掘り下げると奥が深いテーマなので飛ばします。

次にAdoptionを英英辞典で調べてみると、
”the action or fact of choosing to take up, follow, or use something.”
と出てきます。つまり和訳すると「採用する」とか転じて「導入する」といった意味になります。

したがって、Digital Adoptionというのは、直訳すれば「デジタル(的ななにか)を採用する・導入する」という意味になります。このままだとまだしっくりきませんが、ビジネスの世界において、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈においては、もう少し別の意味合いを持つようになります。

DAの本場、米国ではこのように表現されていました。

引用元:「What Is Digital Adoption And Why You Really Need To Know About It

和訳すると「Digital Adoptionとは、非常に簡単に言えば、すべてのデジタルツールと資産が最大限に活用される状態を社内で達成することを指します」という意味になります。

つまり、せっかく導入したデジタルツールとか、利用しているシステムとかソフトウェアを使いこなして、最大限効果を発揮できるようにすること、またその状態、それがDigital Adoptionです。ここには、折角導入しても使いこなしてないのではないか?という課題意識が含有されています。

デジタル化はデジタルなものたちに包まれただけで実現するわけではない、そのデジタルなものたちに使われるのではなく、我々が使いこなして初めてその真価を発揮し、その結果デジタルトランスフォーメーションが実現されていく。なので、Digital AdoptionはDXを実現する上で非常に重要な概念だと思います。

(ch.1のまとめ)

Digital Adoptionとは全てのデジタルツールを最大限使いこなして効果を発揮させること。つまりDXの本丸である

2.Digital Adoption Platform(DAP)とはなにか

それではDAをどのように達成していくのか。ここでDigital Adoption Platform(DAP)という言葉が登場します。まずは本場米国での定義から調べていきます。

"A digital adoption platform (DAP) is a software layer integrated on top of another software application or website to guide users through tasks and functions. Digital adoption platforms aim to help new users quickly learn how to interact with a website or application or assist returning users in learning newly added functionality. This improves onboarding for new users and drives the adoption of new features that may otherwise go ignored."

引用元:「Best Digital Adoption Platform Software

和訳すると「DAPとは、別のソフトウェアアプリケーションまたはWebサイトの上に統合されたソフトウェア層であり、タスクと機能を通じてユーザーをガイドします。DAPは、新規ユーザーがWebサイトやアプリケーションを操作する方法をすばやく学習できるようにすることや、既存利用者が新しく追加された機能を学習する際に支援することを目的としています。DAPにより、新規ユーザーのオンボーディングが改善され、利用されない可能性のある新機能の利用が促進されます」という意味になります。

つまり、いつも忙しそうにしている社内の情報システム部門や、親切でありつつもお節介にも感じてしまうチームメイトや、分厚くてわかりづらいマニュアルの代わりに、システム利用をサポートしその活用を促してくれるのが、DAPになります。

利用アプリケーション上にマニュアルを表記させ、ガイダンスを行ってくれるというのはとても便利ですよね。これでもう怖い先輩や忙しそうにしている上司に聴かなくともソフトを使いこなせるようになりますし、何よりもわかりづらいマニュアルからもおさらば!というわけです。

その機能をノーコードで作れるようにして、システム部門やシステムベンダーに頼らなくても、事業部単位で実装していくことができるというのが現在のトレンドのようです。なんて素敵な世の中になったことでしょうか。

(ch.2のまとめ)

Digital Adoption PlatformとはDAを推進するための存在であり、デジタルツールの利用方法や、注意事項をソフトウェア上でガイダンスしてくれる超便利な存在!しかもノーコードで実装できるのがトレンド!

動画で見てみるのが一番わかりやすいと思うので、サービスを提供している各社の公式説明動画へのリンクを貼ります。(YouTubeに飛びます)

WalkMe Inc.

Pendo.io, Inc.

テックタッチ株式会社

3.マーケット規模


このDAPはどのくらいのマーケット規模があるのか。WalkMe Inc.の第二四半期のIR資料*には、TAMは$34Bであると記載されています。1ドルを110円と換算するのであれば、約3兆7400億円規模ということになりますので大きな規模です。

今後一段とデジタル化が進みDXが至上命題となっていく上で、多種多様なデジタルツールが次々に開発され導入され、そして変化してく中で、それに戸惑う人たちがたくさん出てくることが予想されます。そのような状態が広がることで、DAの必要性への認知が進み、DAPの提供価値への理解が広がっていくことでしょう。

米国での広がりを見ていると日本ではこれから一気に導入が進むのではないかと思います。特にリモート勤務が定着するとその重要性は増していくと推測します。(実体験を「4.まとめ」に記載します)。

ガイダンスを行うだけではなく、先回りをしてユーザーに注意喚起を行ったり、定型的な入力については自動化したりと、すでに提供機能は多様ですが、各社がどのようなサービスを今後展開していくのか、目が離せないですね。

(*)「WalkMe Inc. IR

4.主要プレイヤー


【海外勢】
WalkMe Inc.
 └ 設立は2011年
 └ 現在は米国カリフォルニア州にHQがあるが、元々はイスラエル発の企業
 └ 日本法人は2019年2月に設立。日本法人の代表は元SFDCの道下和良氏
 └ DAP分野の先駆者的存在
 └ 2021年にNasdaqに上場(ティッカーコード:WKME)
 └ 最新のIR情報によると(*)、2021年Q2のARRは$191.0M(=1ドル110円とすれば、210.1億円)
(*)「公式IR

Pendo.io, Inc.
 └ 設立は2013年
 └ 米国の企業(ノースカロライナ州にて設立)
 └ プレスリリースによると(*)、2021年にはシリーズFで約165億8,000万円を追加調達、累計調達額は3億5,600万米ドル(約391億円)
 └ 日本法人は2021年に進出。日本法人の代表は元Box Japanの高山清光氏
(*)「Pendo、シリーズFで約165億8,000万円を追加調達

【国内勢】
テックタッチ株式会社 
 └ 設立は2018年3月1日
 └ 代表取締役の井無田 仲氏は、新生銀行、ドイツ証券を経験後、ユナイテッド社を経て同社を起業
 └ 日本におけるDAP分野の先駆者的存在(同社ではデジタルトランスフォーメーションプラットフォーム;DXPと呼称)
 └ 2021年9月8日段階で社員数35名

5.実体験とまとめ


最後に実体験を一つ。昨年、転職して一番最初に苦労したのは、システム・ソフトウェア周りの利用方法について覚えることでした。現職はフルリモート体制なので、オフィスで誰かに気軽に聞くとか、他の人が使っているのをこっそり覗き見して学ぶということができませんでした。

「なんでも聞いてね」とか「すぐにチャットとしていいからね」と言われた時にありがたいなと思いつつも、正直なところ「いやいや、誰に聞いたらいいかがわからないんだよ・・・」とか「まだ、入ったばっかりで緊張しちゃうし、遠慮してしまうんだよな、みんな忙しいだろうし」と思ってしまい、ちょっとした細かいこと疑問が積み重なっていき、息苦しくなっていくことが結構ストレスになっていたことを覚えています。

オフィスに居ない人をいかに包み込んでいくのかは、これからの企業経営において非常に重要度の高いテーマですが、特に新しく入ってきた人をエンパワーし、エンゲージメントを創り出していくという観点において、DAPが果たせる役割は大きいのではないかと思います。

新しい環境に飛び込んだ時に、いかにその環境に適応していくか。何か新しいツールが導入された時に、それをいかに早く使いこなすか。これはなにもビジネスの世界だけの話ではなく、デジタルツール限った話でもなく、この世界で私たちが常に経験していることです。誰もが環境にすぐ適応できるわけではない。

新学期が始まれば不安で学校に行けなくなってしまう小学生がいたり、親の都合で転校することになって新しい風土に馴染めずに一気に性格が変わってしまうような人もいるでしょう。

そんな時に自分だけの力で状況を打開できることは少なく、きっと誰かが手を差し伸べてくれていて、サポートして、フォローして、エンパワーしてくれていたはず。そういう支えがあったからこそ、一歩前に進めたという経験を持っている人は決して少なくはないはずです。

私はDAPが果たそうとしている基本的な役割はまさにこういう機能なんだと思います。誰もがすぐに何かを覚えられるわけでもなく、遠慮なく誰彼構わず質問攻めにできるわけでもなく、デジタルツールに馴染んでいるわけでもない。

「ミスターX」を想定したオンボーディング設計や、業務設計ではなく、あくまで多様な存在を前提としてグランドデザインを行い、包み込んでいく。それはまさしくD&Iの理念そのものです。

このようにDAPは、DXの実現のためだけではなく、D&Iの理念を実現していく上でも重要性が高いものですし、今後も広がりを見せ、進化をしていく興味深い分野になります。今後が本当に楽しみですね。

本稿は以上になります。
読んでくださったみなさまありがとうございます。

Hiroya Sakamoto , 2021/9/19

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