バービー映画公式はどうして炎上したのか

問題が拡散された一昨日から今日(7月30日~8月1日)にかけて日本では多くのメディアが取り上げるようになった映画『バービー』の炎上。

発端はコラ画像


2023年7月21日に公開された『バービー』と『オッペンハイマー』という毛色の異なる二つの映画を掛け合わせた「バーベンハイマー(Barbenheimer)」がネットミームとして盛り上がりを見せたことで、ピンク色のバービーと原爆を組み合わせたコラ画像がファンやクリエイターによって作られるようになった。(これにはAIの発達も一役買っている)

(※バーベンハイマー自体は元は二つの映画をはしごするという意味で使われていたらしく、英国のスナク首相一家も鑑賞している)

それらのコラ画像は数十万いいねを獲得し、さらには米国の映画公式アカウントが反応を示したことで日本人の目に留まることになり、炎上へと発展した。

作られたコラ画像と公式の反応

さらにはグッズ化もされ、バービー公式への批判的なツイートのこれらの宣伝リンクが貼られるというカオス状態に

日本での反応

この公式の動きに気づいたのは、バービーの映画を楽しみにしていた人達、とりわけアメリカの文化に詳しい女性クリエイター達だった。

彼女たちは「#Barbenheimer」というハッシュタグに抵抗して「#NoBarbenheimer」というタグを作り、このバービー映画のアカウントやバーベンハイマーというネットミームを好意的に受け入れる層(無邪気なアメリカ人達)への抗議をはじめた。

今は元のアカウントが鍵垢になってしまい見れないが、ツイートで抗議をしていた。

反応としては
「原爆の悲惨さを知らないアメリカの若者に原爆について知って欲しい」
「原爆は日本でも作品内に取り入れられてるからミームにするのは別にいいけど、公式がそれに乗っかるのはダメ」
といったものばかりであった。
※ポリコレについては後述

日本の反応への反応

当人たちがネットミームで盛り上がっていたところに水を差される結果になったので、日本人に対しての心ない言葉が目立つ。

驚くのは日本にとって絶対的な悪(非人道的兵器)扱いされる原子爆弾がアメリカでは戦争を終結させた立役者として位置づけられ、その開発者であるオッペンハイマーが英雄扱いされていることである。

アメリカ国内でも原爆の扱いには慎重にならざるを得ないらしい
『オッペンハイマー』が批判されている点は原爆の悲惨さを描かなかったことで、その結果、海外では『はだしのゲン』の原爆投下シーンが拡散されることになった。

「現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています。それは、そうした行動自体が「アメリカにとっての謝罪行為」であり、国家への反逆だという言い方で批判される危険があるからです。バイデンはそれゆえに、資料館の一部しか見なかったし、この『オッペンハイマー』も同じ理由から惨状の描写を控えたと考えられます。」(引用)

映画『オッペンハイマー』は今のところ日本での公開予定はないので、どんな内容かはわかりかねる。それでもアメリカで許容されるギリギリという声もあったので、記事コメントにあるように反核的だと信じたい。

しかし、『オッペンハイマー』公式も監督であるクリストファー・ノーラン監督も今回の炎上にはノーコメントなので、物語に説得力がなくなるのは仕方がないのかもしれない。

アメリカで原爆の悲惨さを描くのにはリスクが伴う
一方で作品内で原爆を批判する監督もいるので、映画『バービー』公式だけを見て批判できるものでもない。

しかし、その一方で映画『バービー』公式は過去ツイを連投し、意味深なメッセージをツイートし、ノーダメージアピールをしている

ポリコレ批判と対抗

日本にはポリコレに批判的なオタク層が多い。
スーパーマリオの映画や実写版リトルマーメイドでもポリコレ批判が起きた。

私はポリコレ(ポリティカル・コレクトネス=政治的正しさ)には肯定的だったのでこうツイートした

私の場合は欧米的ポリコレへの失望だけれども、元々ポリコレに対して批判的だった人は、ここぞとばかりに攻撃をしている。今回の炎上には欧米VS日本または白人VSアジア人、ポリコレVS反ポリコレという構図でも盛り上がっているので一気に火が燃えあがった。

実際のところはアジア人ヘイトに抵抗するのがポリコレ的な行為なのだが、その点も指摘されている。

戦争問題にまで発展

日本人はバーベンハイマーブームに対して抗議するけど、アメリカ人が取り上げることがないように、中国人や韓国人が同じように先の大戦での被害を訴えてもネットでは同じ反応になると思うのが、ガッカリポイント。

多分どこの国も自ら進んで自分の汚いところを見ようとしないだろうし、そうやって突き進んできた結果が今回の炎上に繋がったのかもしれない。

なぜコラ画像が流行ったのか

これは別にアメリカの肩を持つわけではなく事実としてそう思ったので付け加えておくと、原爆を象徴するキノコ雲の画像の背景は荒野や海が多く、市街地ではなかったところに核のイメージが集約されているのではと思った。

日本人にとっての核は広島と長崎に投下された原子爆弾しかないけれど、アメリカではだだっ広い場所で行われる核実験が真っ先にヒットする。その印象の違いもありそうな気がする。

コラ画像には人の目を引くピンクの服を身にまとった金髪白人女性のバービーとスーツに身を包んだ白人男性のオッペンハイマーと彼が開発した原子爆弾から発生したキノコ雲が描かれている。

その絵面のインパクトもさることながら、クリエイターならインスピレーションを刺激されそうな題材というのも事態を悪化させたと思う。

またコラ画像を見ると古き良きアメリカを思わせる懐古趣味な一面があり、白人男性と白人女性の組み合わせが支持されている部分もあると思う。

白人女性と原爆の組み合わせの是非はさておき、多様性云々言いつつもなんだかんだ言ってみんな白人女性をアイコンにしたいんだなという結論に至る。

コラ画像での意趣返し

目には目を、コラ画像にはコラ画像という風に日本人がミラーリングをはじめた

この行為には日本人からも批判が多かった

マーケティングの成功なのか?

今回の騒動がさっそくWikipediaに載っていたので見てみた

普通であれば共食いになるはずだった公開日の同じ映画が、SNSの力によって同時にヒットを果たすという異例の事態が起きた。このことがもうバーベンハイマー現象と名付けられているのだとか。

そして毛色の違う作品をぶつけることはカウンタープログラミングと言われるらしい。経緯を見ればワーナーによるノーラン監督への嫌がらせにも思えるので、バーベンハイマーに対してオッペンハイマー側が終始無言でいることも納得する。

むしろ日本で公開するチャンスをバービー側によって失いかねないことを考えると一番の被害者かもしれない。

バーベンハイマーはマーケティングの面からいえば大成功である。
『バービー』公式アカウントも本人の仕事をしたに過ぎない。

この部分がどうしても引っかかる。
結局のところはポリコレも経済のためのものになっているのではないかと思うからだ。
アメリカの映画評価サイトでは、映画がポリコレ的であるかどうかが、評価の基準になっている。

今『バービー』の映画がヒットしている原因もやはりポリコレ要素である

しかしその一方で公開中止にもなっている

なんかきな臭い……

ちなみに『オッペンハイマー』の方はインド人を怒らせていた

結局のところ、ポリコレにも限界がある。
経済的・政治的理由でいつだって切り捨てられてしまうのだ。

作品内に含まれる多様性は果たしてビジネスとしての道具なのか、あるいはクリエイターがメッセージ性を込めて発したものがビジネスを通して歪められてしまうのか、それは定かではない。

ネットではポリコレの代表とさせるディズニーですらも中国マネーや中国当局には敵わない。こういうニュースを見た時のガッカリ感は半端ない

そしてディズニーといえば今回のバービーと似たような炎上も経験したことがある

逆に好感度を上げた人達

横浜DeNAベイスターズに所属しているバウアー投手

公式よりも先に謝罪するヴァチカンのエクソシストのプロデューサー

このツイートに対する反応

なんだろうお金や成功や正しさよりも愛や知性・道徳が勝る時ってあるんだな

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