川井弘子/ Hiroko Kawai

教育系の大学院を修了後、ドイツとオランダで声楽を、アメリカで《ボディ・マッピング》を学…

川井弘子/ Hiroko Kawai

教育系の大学院を修了後、ドイツとオランダで声楽を、アメリカで《ボディ・マッピング》を学び、全国的に教えながら、演奏会も少し、そして歌う人のための本も書いています。noteでは、皆さんが送ってくださる講座やレッスン・本の感想をご紹介します。また、私の日々の気づきやエッセイも。

最近の記事

あるバリトンくんの声と音楽の成長記

若きバリトンくんの7年間の成長記。私のレッスンを受講した、7年間の変化です。(本人に許可をもらったので、公開します。) イタリア古典歌曲 ”Vergin, tutto amor”を歌っています。 2016年9月1日 東京・幡ヶ谷 「ノドの奥をあける」を間違ってやっていた典型的な例でしょう。実際にはノドを下に押さえつけているので、バリトンでも声が出ない(彼の場合はひっくり返る)んです。 <レッスンメモ> ・調子が悪い? そんな時どうしますか?→それを隠そうとしてがんばりま

    • 気持ちのいい発声講座

      川井弘子の気持ちのいい発声講座このコラムは2001年に書いたものです。ここに再録します。 1. 理論と感覚の接点 <レッスン1> 楽な呼吸をしよう♪ 歌う人なら誰でも知っておきたいのは、「楽な呼吸」です。呼吸は動きです。そして私達は全身で呼吸します。 呼吸するたびにひとつひとつの細胞が酸素で養われ浄化されます。呼吸に応じて、すべての関節が動きます。 ちょっとだけ動く関節もあれば、たくさん動く関節もあります。でも、たくさんといってもかなり繊細なたくさんです。 あなたは関

      • ピアノと健康①_音楽家のフォーカル・ジストニア?

        2015年2月16日に、私はFacebookに次のような投稿をしていたらしい。本日それを改めてシェアしてくれた「ともだち」がいる。 声楽に関する自著が発刊されて以来、楽器の人にレッスンすることが随分減っているが、そうだ、こんなレッスンもできるんだった。 ~~~ 【ピアノと健康】 彼女(30代、2児の母、音大ピアノ科卒)が知り合いの紹介で初めて私のレッスンに来たのは、去年の7月のことだ。両肘が常に痛く、ピアノを弾く時、指が思うように動かない(右手の2の指が巻き込み、左手の4

        • 拙著『歌う人のためのはじめての解剖学』の増刷が決定しました!

          2021年1月に出版された、拙著『歌う人のためのはじめての解剖学』の増刷が決定しました! ありがとうございます。 皆様のおかげです。 訂正が3つあります。 購入下さっている皆様、お手数ですが、修正をお願いいたします。 ~~~~~ ① p4もくじ Chapter3の09 09 頭と×顎の関係→頭と「頸(くび)」の関係 ② p24 図の筋肉の名前(耳の上方に位置する名前) 〇上「唇」挙筋_上唇を上に挙げる筋肉です ③ p42の肺の断面図 なぜか左右が反転しており、心臓が右

        あるバリトンくんの声と音楽の成長記

          『第九』のドイツ語は歌いやすくなるか?

          11/15(日)【朝日カルチャーセンター横浜】主催のZoom講座「『第九』のドイツ語を歌いやすく」が終了した。しかし、『第九』は実は私も苦手というか、なんだか大変な大曲で、ちょっと歌うのはご遠慮したいかなという曲だった。それなのに、こんな講座をしてほしいという依頼が来るぐらい、日本では大変な人気?というか、そういう流れがいつの間にか(しかし何年もかけて)できあがっている。 コロナ禍でほとんどの演奏会が中止になって久しいが、注意しながらそろそろ活動開始の感がある中で『第九』も

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          オットー・クレンペラー指揮の『第九』(ロンドン、1970年?)

          ほとんど何もしていないように見えるオットー・クレンペラーさんの指揮なのに、オーケストラも歌い手も、なんとものびやかな演奏。リラックスの中でのアクティブな表現を、なんとベートーヴェンの『第九』でもこのように実現できるとは! ここにはあるのは、実力、音楽性、技術、エネルギー、そして尊厳、理解、音楽そのもの、、、、見事な世界が広がっている。 この演奏も、本日の【朝カル】Zoom講座「『第九』のドイツ語を歌いやすく」で紹介した。

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          Ode to Joy – Singalong Concert for Everyone/ EU讃歌-An die Freude

          この演奏は、2019年8月4日のベルリンKonzrthausでの『第九』全曲の演奏会の直後に、会場の聴衆と、会場の外に集まった人々みんなで「歓喜の歌」を歌う模様です。 (1985年、EUの加盟国首脳は、欧州の歌”An die Freude”を共同体の歌とすることを採択しました。1990年10月3日に、ドイツが再統一されたときにも歌われました。) タイトルにあるように、”Europe’s anthem Ode to sing alone to"で、”ひとりひとり”が歌っている様子がわかります。日本で同じようなことがあると、なんとなくいっしょに合わせて歌うので、重くなりどんどんテンポが合わなくなるのではないでしょうか?ひとりひとりが歌っていないために。 これからの日本での『第九』も、アマチュア合唱団が指揮者とオーケストラの力を借りて、わけもわからず声を張り上げて無理やりベートーヴェンを歌うのではなく、ベルリンでのこの演奏のように、歌える調性で、穏やかに、シラーの詩の本来のメッセージを受け取りながら、できるだけ多くの人が口ずさむ機会があるといいのにと思います。 『第九』はしんどいからと変に敬遠する『第九』嫌いグループと、よくわかっていないから歌える『第九』好きグループに分断されるのではなく、人間として何かメッセージを受け取り発信する。。。そんな楽しみ方ができる曲でしょう。 本日、朝カルZoom講座で「『第九』のドイツ語を歌いやすく」という講座をしました。そのときに使用した演奏の一つです。

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          川ジイの授業「芸術教育とは」~大学時代のノートがひょっこり出てきた

          突然、大学時代のノートの1ページがひょっこり出てきた。当時、ルーズリーフを使っていたのだ。でも出てきたのは、このぺージだけ。この授業は川原浩教授の授業だったと思う。(私たちは、親しみを込めて「川ジイ」と呼んでいた。)大学3年か4年のときだから、昭和58年か、59年のことだ。 広島大学教育学部 教科教育学科 音楽教育学専修の「音楽教育」の授業である。川ジイの授業の多くは、明治時代?のように(笑)、先生の言われることをそのまま書き取るというスタイルだった。しかし、なんともいいこ

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          「才能がない人には教えられない」と、あるピアニストは言った...しかし私は同意しない

          久しぶりに聞いた言葉だった。「才能がない人には教えられない」と。 私がまず感じたのは、「ああ~、こういういい方をする音楽家がそういえばいたなあ~」だった。そもそも「才能がない」とは、誰が、いつ、どうやって決めるのだろう?その証拠に、いくら才能があったって、ピアノを弾くことがなければ「ピアノを弾く才能」は現れないではないか?! 私自身は、声楽を教える中で、次のような経験がある。音大ピアノ科を卒業したMさん、愛好家の合唱の伴奏をすることが多く、時には発声指導もしてほしいと頼ま

          「才能がない人には教えられない」と、あるピアニストは言った...しかし私は同意しない

          歌唱の”Deckung"に関しての考察

          よい歌唱のためのテクニックの一つだと思われている、ドイツ語の「デックング ”Deckung" 」(英語では”Cover")は、日本語では「かぶせる」「暗くする」という表現で、声楽のレッスンでよく使われる。 しかし、本当に、意図的に声を大人っぽく「暗くした」り、音域の変わり目で「かぶせる」ことがよいのだろうか? ミュンヘンでフースラー(Frederick Husler 1889-1969)に学び、発声指導者として日本の声楽界を牽引した木下武久(1924-1990)は、”De

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          『歌う人のためのはじめての解剖学』感想2~澄み切った穏やかな・坐禅・悟り・幸せを贈る

          94歳の高階和重さんからも、こんな感想をいただいた。高階さんは拙著2冊目の『うまく歌える「からだ」のつかいかた【実践編】』に登場している、岡山県在住の方だ。高校の社会科の教諭をされていた方で、今でも神主さんであり龍笛を吹かれる、教えられている。 【実践編】の撮影の時には、88歳。P66に登場する。これらの受講生の演奏の撮影は、東京・大阪・岡山で行った。特に岡山までわざわざ東京からスタッフの皆さんに来ていただいたのは、この高階和重さん(当時88歳)と林多喜子さん(当時93歳)

          『歌う人のためのはじめての解剖学』感想2~澄み切った穏やかな・坐禅・悟り・幸せを贈る

          【朝カル】オンラインの感想から

          私の新刊『歌う人のためのはじめての解剖学~しなやかな発声のために』(誠信書房)をテキストに、朝日カルチャー新宿で2021年1月から月1回のZoom講座が始まった。 都庁の正面にある超高層ビル(新宿住友ビル)10階でのリアル講座は、熱心な受講生に囲まれていつもワクワクするものだったが、コロナ禍で始まったオンライン講座は地域に限定されることなく参加できるので、結果的に受講生は倍以上となり、全国から(そのうちきっと海外からも)参加で、また別の賑わいを感じている。そして、受講後のア

          【朝カル】オンラインの感想から

          解剖学者 坂井建雄先生の腎臓愛!?~川井弘子のZoom講座

          コロナ禍のために、2020年2月末からリアルのレッスン/講座はすべて中止している。そして、そんな中始めたのが、Zoomを使った講座と個人レッスン。2020年3月29日(日)以来30回あまりになるから、よくがんばってる?? いや、そんなつもりはなく、ただなんとなく始めて、ただ続いている。そうしたら、「勇気をもらった」とか「元気が出た」とか好評で、うれしい。まったくがんばっている感はない。が、時に「あ~~、準備の時間が足りない!」と思うことも。ということは、結構熱心にやっている

          解剖学者 坂井建雄先生の腎臓愛!?~川井弘子のZoom講座

          『歌う人のためのはじめての解剖学』

          ついにでき上がった、私の3冊目の本『歌う人のためのはじめての解剖学』。2021年1月30日の発売! 43項目、見開き2ページで例えば「01ノドは歌うとあいてくる」「03軟口蓋の動きはわからない」「08脊柱は26階建て」「27横隔膜は縦にも長い」「37舌は硬くならない」などなど、精緻な解剖図とともに。 親しみやすく、しかし専門性にこだわり、監修の世界的解剖学者の坂井建雄先生をはじめ、耳鼻咽喉科医の三枝英人先生や文珠敏郎先生、スポーツドクター・整形外科医の渡會公治先生のお力も

          『歌う人のためのはじめての解剖学』