見出し画像

それに価値はあるんですか?

10年ほど前のことですが、ある展覧会のオープニングで、作品を見ていた時でした。
展覧会をサポートした会社の役員の方々が、学芸員の女性から解説を受けながらやってきました。

大きな作品の前で、一人の男性が尋ねました。

「これ、価値があるんですか?」

どの作品のことを言っているのだろうと、私は興味津々で振り返りました。
ダリの作品でした。
ダリの作品と聞いて思い浮かべるものとは少し違う毛色ではありますが、れっきとしたダリの絵です。

え?!あなた、この展覧会にお金出した会社の役員でしたよね?
この絵がどれだけの価値があるのか調べずに、お金出すこと許可したんですか?

そうツッコミたいのをグッと堪え、なんて返すのだろう、と女性の返す言葉に聞き耳を立てていました。
すると彼女はすました顔でサラッと答えます。

「はい、4億円ほどだと思います」

えーーーーーー!そこ?!
価値を金額で返すかぁ??

絵の価値は、値段ですか?

アートの価値は、人それぞれだと思っています。
有名なアーティストの作品だから価値がある、とか、その時代を象徴する作品だから価値がある、とか、そんなことはどうでもいいと思うのです。

自分にとって、大切なのは、
その作品で、魂が揺さぶられたかどうか
です。
魂が揺さぶられた作品が、自分にとって価値あるものなのです。

魂が揺さぶられる作品は、人によって違います。
だから、価値は人それぞれだと思うのです。

でも、美術館は違います。
価値ある作品を万人に見てもらうために所有したり、所有者から借りて展覧会を開催したりするのが目的です。
そして、その作品の価値は、その時代にどれだけインパクトを与えたかどうかも重要です。もちろん、収集担当の魂が揺さぶられた作品が所有されることもあったりします。

先ほどのダリの作品は、時代背景を考えると、とても重要な作品の一つでした。
なので、その説明をするのかと思いきや、学芸員の女性は絵の値段で返したので驚いたのです。
それを説明しても、その男性が理解できるとは思わなかったから、ということだったのでしょうか。

アートは時代を反映しています。
だから、アート鑑賞すると、その時代時代のことが、理解できるようになってきます。

でも最初は、なぜこんな絵を描いたんだろう、なぜこんな作品を作ったんだろう、と思うところからでも良いので、魂が揺さぶられる作品を探してみてください。
魂が揺さぶられたら、なぜ揺さぶられたかを考えてみてください。
そこには、自分が知らなかったものを見つけることができるかもしれません。

そして、少しずつ、時代背景などがわかってくると、作品の楽しみ方がもっと増えてきて、アート鑑賞が楽しくなってきます。
すると、今の時代にとって何が価値あるものなのか、みんなが考えるようになれば、この世界はもっと変わっていけると思うのです。

この記事が参加している募集

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?