重力に負けているこころ

夜明け前は星がよく見える。オリオン座の上にぎょしゃ座。

昨日はソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げてちょうど60年だったらしい。そしてまばゆい満月だった。とにかく白い、ほのかに紅い、輪郭が青く輝く円。

なんて喪失感に満ちた夜だろうと思って見ていた。
なにを失ったわけでもないけど。いや、なにか失ってしまったのかな。わからないけど、ただ、まとわりつく悲しみの感覚を久しぶりに思い出した。

何かを失ったり何かにこだわったり。ながい時の流れからすれば、宇宙から見れば、自分の一生から見てさえ些細なことだとわかってはいても、こんな気持ちに長居すべきではないとわかっていても、未だに重力に負けて座り込んでしまうことがある。辺りを見回すと見覚えのある河原で、ああ、またこの場所まできちゃったな、と思いながら目の前の渓流をぼうっと眺めてしまうような。

この河原が、もう二度と来なくていい場所なのか、それともこれこそが忘れてはいけない場所なのか、判別がつかない。助けを求めて叫びたくなったり、文字を書き殴りたくなったりするこの気持ちがなんなのか、わからない。今どのあたりにいるのかも、よくわからない。心のままに、とよく言うけれど、心がクリアな時は考えなくてもすぐにわかるものごとが、曇っていると簡単なことさえなにひとつわからないものだ。

しかし、私が得体の知れない喪失感と悲しみに立ち止まっているあいだにも絶え間なく世界はまわり、凄惨な事件が起き、研究者の功績が報われ、政党がどうにかなり、陽が昇り、雨が降り、星が輝いて季節がうつろっている。
置いていかないで、と思いながら重い手足を動かしている。

こんなとき、Good Riddanceという曲を思い出す。まるで今の自分のために書かれたような歌詞だ、と思うのはこれが初めてではないけれど、沁みる。

Another turning point, a fork stuck in the road
Time grabs you by the wrist, directs you where to go
So make the best of this test, and don't ask why
It's not a question, but a lesson learned in time
It's something unpredictable, but in the end it's right
I hope you had the time of your life

時があなたを行くべき場所に連れて行くから、今精一杯やるんだよ、と。
なぜだと思い煩うものではなく、やがて知恵になるのだから。予測つかないものだけど、結局最後は正しいから。十分楽しんでね、と。

歌は「自分のためにあるような曲だと感じる」瞬間があるところが素敵だと思う。自分の曲についてそんな感想をもらうときも本当に嬉しい。自分が助けられてきたように、誰かの背中を押せたんだと思えるから。バトンを渡したような気分になれる。

自分の内側にある泉を見つけ出したい。
たしかにあったはずなんだけど。どこだったかな。
まあ、これは、ちょっと疲れている人間の単なるぼやきです。

ありがとうございます!糧にさせていただきます。