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卵は1日何個まで食べるのが安全か?

Lサイズの卵には1個あたり約300mgのコレステロールが含まれており、コレステロールの摂取量が健康に影響を与えるとして、1日あたりに摂取する卵の個数には議論があります。

かつて、厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」では1日のコレステロール摂取基準が女性は600mg、男性は750mgと設定されており、「卵は1日1個まで」と信じられていました。

2015年に「日本人の食事摂取基準」は改定され、コレステロールの摂取基準に関する記載が消失しています。これは、コレステロールを多く含んだ食品を摂取しても血中コレステロール値に影響を与えないという研究が報告され、摂取基準量に関する科学的根拠が不十分とされたためです。

現在は、卵を1日2〜3個食べても問題ないと一般的に言われています。例えば日本卵業協会(日卵協)は、健康な人であれば卵を1日2~3個食べてもコレステロール値が上がることはないとしています。

果たして、卵は1日何個までなら食べても良いのでしょうか?

科学的な見解は対立

卵を1日あたりに摂取する個数について、科学的な見解は対立しています。

Egg consumption and risk of coronary heart disease and stroke: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies
」はメタアナリシスの結果として、卵の消費量が多い場合(1日あたり最大1個)、冠状動脈性心臓病や脳卒中のリスクの増加とは関係ないことを示唆しています。

ただし、糖尿病患者における冠状動脈性心臓病リスクの増加と、卵の消費量を増やした場合の出血性脳卒中リスク減少に関するサブグループ分析については、さらなる研究が必要であると指摘しています。

一方、「Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality」は、「1週間に卵を3〜4個食べると、そうでない人に比べて心疾患や早死するリスクが高まる」という研究結果を報告しています。

この研究は、1985年3月25日〜2016年8月31日までにアメリカの6コーホート(共通した因子を持つ、研究対象となる集団)からプールされた参加者の個別データが使用されています。

参加者は29,615名(平均年齢51.6歳)のアメリカ人(成人)で、そのうち44.9%は男性です。追跡期間中央値17.5年で、5,400件の心血管疾患と6,132件の全死因がありました。

結果として、1日あたり300mgの食事性コレステロールを追加するごとに心疾患のリスクが高くなり、1日あたりに消費される卵が半分ずつ増加することは、心疾患の発症リスクおよび全死因死亡率と有意に関連することが示唆されています。

研究を踏まえると、「卵1日2~3個」には慎重になった方が良い

Re-evaluation of the associations of egg intake with serum total cholesterol and cause-specific and total mortality in Japanese women」は、日本人女性において卵の摂取量が癌死亡・全死亡と有意に関連していることを示しました。

この研究は脳卒中・心筋梗塞の既往がない30歳以上の女性4,696名(平均年齢52.8歳)を15年間にわたって追跡し、参加者は卵の摂取量に応じて、

(1)週1個未満
(2)週1〜2個
(3)2日に1個
(4)1日1個
(5)1日2個以上

の5グループに分けられました。

追跡期間中は心血管疾患死亡が183件、癌死亡が210件、全死亡599件が報告され、背景因子を調整したCox分析によると、卵摂取量が癌死亡率と全死亡率に直接関係していることが明らかになっています。

結果として(5)対(4)のハザード比(臨床試験などで使用される相対的な危険度を客観的に比較するための方法)は合計2.05、癌死亡3.20と高く、(2)の癌死亡率は(4)と比べてハザード比0.68と有意に少ないことが報告されています。

すなわち、卵の摂取量は癌死亡率と全死亡率に関連しており、「少なくとも日本人女性において、卵の摂取量を減らすことで、決定的な健康上の利点があるかもしれない」ことが指摘されています。

また、「Egg consumption, serum cholesterol, and cause-specific and all-cause mortality: the National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease and Its Trends in the Aged, 1980 (NIPPON DATA80) 」でも同様のことが指摘されています。

日本卵業協会はコレステロールの増加にのみ着目していますが、病気のリスクという広い視野で見た場合、現時点での研究結果を踏まえると「卵を1日2〜3個食べて良い」という見解には慎重になった方が良いかもしれません。

癌や心疾患、早死などさまざまな病気との関係性や性差、年齢差などがあるので、一概に何個が良いという結論を出すのは難しいですが、卵を1日1個以上摂取することに懐疑的な研究が少なくないことは踏まえても良さそうです。

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