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先生

 「今年の冬は暖かいな」と思っていたら3月になって寒い日が続いてたけれど、家の前の桜がまだ1分咲きの暖かい週末に中学の同級生がうちに集まった。飲み会は色々なメンバー構成があるけれどこのメンバーがいわゆる"スタンダード"。心穏やかに過ごせる。

 その中のひとり、お転婆娘のMちゃん。お転婆娘なんて言葉は古いけれどピッタリなのだ。じゃじゃ馬娘でもいい。とにかく元気はつらつ、よく飲み、よく喋るが、美しく聡明でもある。

 彼女は別の同級生たちとゴルフで交流している。その中に中学3年の担任教師Sも入っている。そのSが会うたびに「M(私)は元気にしているのか」と心配していると言う。特に一昨年、長年勤めた会社から販売店に転職するタイミングで離婚し、その仕事を昨年の秋に辞めているからだ。離婚するために購入した団地のローンもあるのにもう半年働いていない。それを心配しているという。

 私は皆が帰った後、S先生にLINEを送った。気にかけていただいている感謝と現状と心配はいらないと。しばらくして返信があった。遠くに住んでいた同級生が地元に戻ってきたという情報もあり、近々また飲み会があると思われる。

 S先生は生活指導、学年主任になるようないわゆる「おっかないけど生徒思いのいい先生」だ。問題のある生徒を引き受けるタイプで、当時はあの生徒とあの生徒はニコイチで引き受けるとか、ドラフト会議があったとも聞く。時代は昭和、番長のSくんがベランダでタバコをふかしてして殴られてたっけ。でもSくんは私たち普通の学生とも仲良く喋っていた。だからなのかもしれないけれど、まとまりのあるクラスだったと思う。高校はアルバイト三昧でなんとなく通っていただけの私にとって、あのクラスが人生の「学校生活のピーク」だったと思う。

 定年退職されてからも、教え子に慕われ、教え子とゴルフを嗜み、晩年を豊かに過ごされている。人間だから本当は色々抱えているのかもしれないけれど、どうか幸せであって欲しい。次に会った時は、安心してもらえるように、少し私の話を聞いてもらおうと思う。私は今、居心地のいい暮らしをしているから。

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