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捨てるものから価値あるものへ ー呼継のとんぼ玉

#私の作品紹介
私が主に使っているガラス棒はイタリア・ムラノ島で作られているエフェトレ社の「モレッティ」と呼ばれるガラス棒、ヴェネチアンビーズと同じ材料といえばわかりやすいだろうか。

材料のガラス棒、仕入れたときの状態


直径8mmほどのカラフルな棒ガラスで、これをバーナーの炎で溶かしながら数色混ぜて模様のパーツを作ったり、細く引き伸ばしたものを使って玉を成形して文様を入れる。
正確な幾何学模様を作るためには同じ大きさに引いたパーツを規則正しく並べていかなければならず、新しいデザインの玉やネックレスの色合いを思いついたときには何種類も新しいパーツを引く。
中途半端に残ったり、色合いが思ったようにならずに使わなかったケーンは廃棄する作家さんも多いようだが、その残りものの素材を組み合わせて作るのが、私の「呼継」と名付けたシリーズのとんぼ玉やネックレスである。

半端に残ったツイスト・ケーンも炎で端を溶かして繋ぎ合わせ使う
花や市松模様、渦巻きなどガラスで作った模様パーツ

「呼継」とは割れた茶碗などを直す金繕いの技法のひとつ。通常は破片を全て使い間を漆で接着し金粉や銀粉で継ぎ目を装飾して仕上げる。破片が足りないときにその部分を補うために、別の破片を組み合わせて繋ぐので「呼継」。また、古い陶片を集めてその中から厚みや角度があうものを選んで一つの茶碗に仕上げたものもある。
この「織部呼継茶碗」は陶芸家・荒川豊三氏旧蔵の品で、かの白州正子氏もたいへんお気に入りだったらしい。

織部呼継茶碗

「呼継茶碗」で検索をすると、他にもこのような画像が見つかった。どれも物を大切にする心だけでなく、愉しく美しい、同じものを二度と作ることが出来ない芸術品。

呼継茶碗のいろいろ

アメリカにもも同じように、ドレスの生地やレースの残りを大切に繋いで刺繡を施し何年もかけて作り上げた、「ヴィクトリアン・クレイジーキルト」という美しい作品があり、私の心惹かれる世界だ。1800年代に作られたヴィンテージ物はコレクター垂涎の逸品である。

ヴィクトリアン・クレイジーキルト画像検索結果

呼継茶碗やクレイジーキルトのような「捨てられない大切な端切れを繋いで、新しい作品に蘇らせる」というコンセプトで作る私の「呼継とんぼ玉」シリーズの作品は、その場の思い付きで破片を乗せていく、偶然性に左右される作品で全く同じデザインを作ることができない一期一会。


捨てられるはずの物を大切に使う、という点ではSDG's への私のささやか取組み、と言えるかもしれない。

トップの画像は組みあがったばかりの新しい呼継ネックレス。
とんぼ玉は4,000年前のものが現在も残っているくらいだから、私の作品も数十年後、数百年後にも誰かの身を飾っているかもしれない。捨てずに残してもらえる価値のあるものになっているだろうか。

心に問いかけながら炎に向かう。

ガラス工芸作家 林 裕子

〒930-0151
富山県富山市古沢237-3 富山ガラス個人工房4号棟A
蜻蛉玉丙午/KOGURE Glass Works

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