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コルプス

今回唯一行きたいと明確だったのが「コルプス」という街である。地中海に面したボン岬半島にある小さな街で、地球の歩き方にはこのような説明がある。

岩の間から湧き出た50℃の温泉が海に流れ込み、青い空や海を眺めながらオープンエアの温泉につかれる。

これはいかずにはいられない。

コルプスまでの行き方を調べると、朝イチでバスが一本あるらしい。
それに乗れないとソリマンという場所で乗り換え、そこからコルプスまで向かうのがよいみたいだ。ということで、チュニスのバスステーションからコルプスを目指す。
工程1まず、バスステーションまで歩いて20分。50メートルに一回くらいのペースで人に尋ねる。みんな快く教えてくれる。こうしてみんなに聞くと間違えにくい。
工程2バスステーションにつくやいなや、バスを待っている人や運転手に聞いていく。自分の行き先を叫ぶ。コルプス!コルプス!
工程3ここでも色々な人が、あっちじゃない?と教えてくれる。そうこうしているうちに、朝イチのコルプス行きはもう出発してしまったことを知ったので経由地であるソリマンを目指す。ソリマン!ソリマン!と行き先を変更して叫びまくる。どのバスが何時に出発するのかわからないので必死だ。
工程4現地ではソリマンではなく、スリメンと発音するらしいことを知る。そして順にしつこく聞く中で、やっと目的のバスが見つかった。「スリメン?」乗り合わせた乗客たちが顔を見合わせて確認し合う。「スリメン」一安心で席に着く。
工程5私の停車場につくと他の乗客たち一同が、私にスリメンだと知らせてくれた。無事に降りると、今度は乗り合いタクシー(ルアージュ)に乗り換えてコルプスに向かう。

私は海外でこうやって人に聞いて頼るとき、いつも樹木希林の「助けが必要なときは助けを求めればいいじゃない」という言葉がとても力強く感じられる。私は旅人で、ここのことは知らないことが多いのでわからないことはどんどん聞いていこうという心意気でいる。

アインオクトーという温泉場で私は降りた。目の前には地中海、反対側は山で囲まれている。道路脇に、パラソルがある小さな海の家みたいのが一つ併設されていて、そこの階段を降りていくと人々が岩の間に集まっているのが見えた。子供と大人のはしゃぐ声が聞こえる。

私は岩に自分の荷物を置いて、さっと半袖短パンになると岩間に近づいた。全部で30人以上の人々が温泉に浸かっている。岩をつたって滝のように流れ込むところは温泉の温度が高く、熱さを求めて人々は主にその近くに集まっている。流れ出た温泉が地中海と混ぜ合わされるので自ずと地中海に向かっては温度が低くなる。地中海は冷たい。ある程度体が温まったら集まりから離れて泳ぐ人、岩から飛び込む子供たち、熱々のお湯をすくって頭からかぶる人とそれぞれが思い思いに水に浮かぶ。水を舐めると温泉と海の味が混ざってとってもおいしかった。場所によって水の温度が違うことをみんなが共通事項として身体的に認識している。だから人々が熱さを分け合って無意識のうちに移動しているのがよかった。みんなで大きな温泉を楽しんだ。私はこういう自然の中で入る温泉が大好きである。こんだけ一箇所に人が集中していれば、自然と距離も近くなる。ほとんどがチュニジア人であった。私はコルプスで出会ったチュニジア人の家族と仲良くなり、昼ごはんと夜ご飯を一緒に食べた。

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