見出し画像

『陰陽師0』感想

夢枕獏氏の陰陽師、の前日譚ですね。夢枕獏氏も完全協力の映画オリジナルストーリーで晴明と博雅の出会いの話。

開始早々、心の中で「ツダケンじゃねーか!」と突っ込んでしまいましたがナレーションが津田健次郎さんでした。津田さんの声は好きなので嬉しいんだけどまったくもって不意打ちだったので衝撃が大きかったです。
私も津田さんの声がわかるようになったんだなあと思いました。そう思ったけど、ナレーションの声ならわかるけどきっと役柄に入った声だとわかんないと思うわ。声優さんて奥深い。

今回の安倍晴明は山﨑賢人さん。実写化や山﨑賢人と言われる彼ですが、彼の晴明様は私は割と馴染んだな。ただ最初はやさぐれてて、この晴明があの晴明になるのか?とは思っちゃった。
より気になったのは染谷翔太さんの博雅の方。滑舌が悪くて台詞が聴き取りづらくて、それが気になって気になってしかたなかった。
が、これが最後には気にならなくなってたんですよ。慣れたのとは違う。最初と最後では明らかに喋り方が違ってた。つまりは晴明と初めて会ったときと、共闘して心を許してからの違いなのかな。俳優さんてすごい。

夢枕獏氏の陰陽師は何度か映像化されていますね。私はNHKでやってた稲垣吾郎ちゃんのが好きかな。
夢枕獏氏の陰陽師は必ずと言っていいほど晴明と博雅がふたりでお酒を飲んだり話したりするシーンがありまして、そこが本編の半分近くを占めることが多いんです。吾郎ちゃんのやった陰陽師はその部分が原作の雰囲気に近いと思う。あのドラマでフィーチャーされた晴明様の式神の蜜虫も好きだった。

という脱線はさておきまして、今回の陰陽師0。
オリジナルストーリーということで普段の陰陽師とは違って晴明様がまだ若く、陰陽寮の学生だった頃の話。
シリーズの導入という意味もあるのかもしれませんが、映画の最初にそもそも陰陽師とは何か、陰陽寮とは何か、といった説明から入ります。その辺のナレーションが津田さん。
そして原作がそうなのですが、地の文(この場合にはナレーション)には割とメタな説明や現代の言葉が入って来るんですよね。それが苦手な方もいるだろうけど、こういう世界になじみのない方にはわかりやすいのも確か。
映画では、ナレーションだけでなくキャストの台詞も現代の言葉を多く使っていたように思います。

私がこの映画で目を瞠ったのはキャスティング。とにかく曲者ぞろいなんですよね。
陰陽頭に小林薫さん。陰陽寮の教師である陰陽博士に國村隼さん、北村一輝さん、嶋田久作さん。
徽子女王を演じた奈緒ちゃんは可愛かったし帝(村上天皇)を演じた板垣李光人さんは美しかった。
安藤政信さんも良かったけど村上虹郎さんはもったいない使い方だったなぁ。彼の役が嫌味ったらしいお貴族様というのはわかったけれど、どういうお貴族様か、その嫌味ったらしさに何らかの根拠があるのか、そういうのがまったくわからなかった。それどころか、彼が村上虹郎さんだとはっきりわかるほどには顔があまり出て来なかったんだよなあ。
時代が時代なので光が弱かったというのもありますが。

この映画、鬼と戦うシーンはあまりありませんでしたね。晴明が術を披露するところも比較的少なかった。考えてみれば式神も出て来なかったな。
晴明が本物の力を持った陰陽師だとわかるシーンはちゃんと用意してありましたが、これまでの陰陽師のイメージのような術を使って戦うシーンはほとんどなかったです。が、主役が山﨑賢人さんだけあってアクションシーンがあったのは良かったな。山﨑賢人くんらしい立ち回りと、おそらくは羽生結弦選手を意識したであろうアクション。

それとは別の登場人物の立ち回りも良かった。いわゆる殺陣というのとは少し違うのかもしれませんが、業物を持って渡り合うシーン。
最近は時代劇が少なくなったから昔ながらの殺陣が受け継がれなくなったのではないか、少なくともできる人は減ったのではないかと思いますが、でも刀や他の武器を使って戦うシーンというのは良いですね。

そして博雅。
陰陽師の原作では博雅がどういう人間か、あまり詳しく書いてはいなかったですが(調べればすぐにわかることではある)、この映画ではわかりやすく説明があったのはありがたかった。調べずに読んでいた無精者なので。
その博雅は龍笛の名手。今回も龍笛がかなり重要な位置を占めています。小説ではよく博雅が龍笛を吹くシーンが出てきますけど、映像になってそこに音が乗ってくるとやっぱり全然違うんですよね。映像作品の強みだなあ。

正直に言って、少しばかり話は散漫ではある。
主眼を置いているのが、晴明の力なのか、徽子女王と博雅の想いなのか、晴明と博雅の出会いと友情なのかがよくわからない。
最後のシーンを見て思ったのは、晴明と博雅の出会いとふたりの世界が出来上がるまでを見せられているのか?ってことでした。
少々語弊のある言い方だけども間違ったことは言っていないぞ。
原作からして晴明と博雅のふたりの世界が延々繰り広げられているので、ある意味原作どおりなんだけども。

この映画、シリーズ化するんでしょうか。
原作はもうずいぶん長いこと続いているのでネタはたくさんある。これまでの映像化でまだ使われていない話もたくさんありますし。
もしシリーズ化するとしたら気になるのはやっぱりキャスティングですね。
蘆屋道満が誰になるのか。
陰陽頭と陰陽寮の博士たちがあれだけ曲者揃いだったから、道満も期待してしまうのです。

この記事が参加している募集

#映画感想文

68,361件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?