『なめらかな世界と、その敵』感想

『なめらかな世界と、その敵』伴名練 早川書房 1/26読了

SFの短編集。一遍めからなかなかになかなかな世界観で読んでいて頭がチカチカしました。すごかった!
どの作品もきらきらしていて、深い色味のモザイクタイルが敷き詰められているみたいで、どこを見ても二度見ると新しい発見がある感じ。

自分でもびっくりしたのが、この短編集を読んでいて、この作者の方のほかの話が読みたいというよりももっと強く、この作者の方と話がしてみたいと思ったこと。
こんな話を書く人がどんな人なのか、作品以上に作者その人にこんなに興味がわいたのは初めてです。

私はSFは好きなんだけど、ひとに自慢できるほどの数をこなしているわけではないし、スタンダードと言われる作品だってそんなに読んでいるわけではないんだけど、それでもこの短編集を読んでいて、これはあの作品から来てるのかなと思える部分があったり、作中に出てくるかこの作品のことなんかでにやりとできる部分があって、そういう意味でも楽しかったです。

読み終わってから知ったんだけど、作者の方は本当にSFが大好きで、日本・海外問わずたくさんの作品を読んでいるようで、すでにアンソロジーの編纂者としても活動されているみたいで、だからこんなにきらきらしたお話が書けるんだなと思いました。すごいなぁ。

三編めの『美亜羽へ贈る拳銃』は、タイトルは梶尾さんの『美亜へ贈る真珠』からですよね?
私は日本のSF作家さんで梶尾真治さんが好きで昔はよく読んでたので嬉しかったんですが、『美亜羽へ贈る拳銃』のことを調べたら伊藤計劃トリビュートのことばかり出てくるので気になって。タイトルを見た瞬間、梶尾さんのから来てるんだ!ってすごくうれしかったんです。
私は伊藤計劃はまだ読んでないので、トリビュートとあってもどこがどう、というのはわからないんだけど。

短編集最後の『ひかりより速く、ゆるやかに』も、同じく『美亜へ贈る真珠』に出てくる航時機を思い出しました。
『美亜へ贈る真珠』は最後まで書ききらない切なさと美しさ、『ひかりより速く、ゆるやかに』は最後まで書ききる潔さとひたむきさ、という印象。

この短編集、私がもっといろんなSFを読んでいたら、もっといろいろ楽しめたんだろうなぁ。

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