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『若草の頃』感想

あまりミュージカル映画というものを見たことがなかったのですが、ミュージカル映画のリバイバル上映が行われていると知り行ってきました。
『午前十時の映画祭』もそうですが、こんなふうに過去の名作を上映してくれるのは嬉しいですね。まだ生まれてなかったりとか、当時はあまり映画を観ていなかったとか、いろいろな事情で見ていなかった作品が大画面大音量で見られるのはとてもありがたい。
名作と言われるような作品であれば、見ようと思えば家でも見ることはできますが、やはりスクリーンで見られるのは嬉しいです。
そしてミュージカル映画は楽しいですね! 音楽が好きだからというのもあるんだろうけれど、楽しそうに歌って踊る人を見てるとうきうきします。

というわけで、今回のリバイバルで何作かあった中で選んだのは『若草の頃』。ざっとあらすじを見たときに、登場人物が四姉妹であることから『若草の頃』と名付けられた云々というのがあったので選びました。
『若草物語』が大好きなので。
とはいえ、単に四姉妹だから若草物語を想起させるタイトルをつけただけですね、これ。
『若草の頃』には四姉妹の上に兄がいるし、父親と離れて暮らしていることもない。『若草の頃』は家族愛も描かれているけれどどちらかというと男女の恋愛の部分の方が大きいですし。
それにそもそも原作タイトルは『Meet Me in St. Louis』。「セントルイスで会いましょう」なんですよね。
このタイトルは1904年のセントルイス万博のテーマソングですが、日本で公開するにあたってはたぶんセントルイスという地名も一般的ではなかっただろうから、日本人になじみのある『若草物語』から持ってきたのかな、と思いました。

舞台は1903年夏~1904年の春。セントルイスの中流家庭の四季を描いた作品です。
主演はジュディ・ガーランド。『オズの魔法使』に出てた人だ、ということは知っていましたが、実際に見るのはこれが初めて。
『ジュディ 虹の彼方に』という彼女の伝記映画が公開されていましたが、予告を見る限り、スターの凄絶な半生(お酒や薬に溺れた日々)を描いているように思えたので見ませんでした。その頃の私は、自分が手術後だったこともあって、もっと明るくて楽しいお話が見たかったのもあったのかな。映画を見るにあたっては、原則として、辛い苦しいものよりも楽しい嬉しいものの方に惹かれてしまうのもあったかも。
ともかく、そんなわけでこれまでジュディ・ガーランドの作品も、彼女の過去もろくに知らずに『若草の頃』を見ました。
そしてとにかく歌のうまさにびっくり! 美味いという話は聞いていたけれど、最初に彼女の声が聴こえた瞬間から釘づけでした。
声も綺麗で踊りながら歌ってもブレることがない。それに可愛い。
顔の造りで言ったらもっと綺麗な女優さんはたくさんいるでしょうが、声や歌や表情や仕草がとにかくチャーミングで目が惹きつけられる人でした。
ジュディ・ガーランドが演じているのは四姉妹の次女、エスターです。
彼女は最近隣に引っ越してきたジョンに一目惚れしたのですが、なかなか彼と話す機会がありません。
長女のローズは付き合っている彼ウォーレンからのプロポーズを待ち焦がれていますが、ニューヨークに進学している彼はなかなかはっきりとした態度を取ってくれません。
三女のアグネスはたぷんプレティーン、四女のトゥーティはプレティーンにもなってないくらいの年齢みたいで、彼女たちは色恋沙汰にはまだまだ興味がなく、いたずら盛りのおてんばです。
四姉妹の兄、ロンはじきに大学進学で家を離れる予定で、その壮行会でエスターはようやくジョンと知り合い、ふたりの距離は徐々に近づいていきます。
そんなある日、突然、父アロンゾがニューヨークへ引っ越すと宣言し……。

この映画のことを調べると恋と家族愛がテーマのようですが、先に書いたとおり恋の方が前面に出ているように思えます。
が、一番印象に残ったのは、四女トゥーティと次女エスターのクリスマスの夜のシーン。
突然持ち上がった引っ越しの話に衝撃を受ける彼女たちですが、落胆したトゥーティは深夜に部屋着のまま庭に出ると、昼間にみんなで作った家族の雪だるまを泣きながら次々に壊していくのです。
このときのトゥーティと彼女を必死に止めるエスター。このシーンがとても胸に迫ってきました。トゥーティ、本当にすごかった。
トゥーティを演じたマーガレット・オブライエンは、この作品を含めたこの年の評価で、アカデミーの子役賞を受賞したそうです。

この作品は1944年に公開されたものですが、先に書いたとおり、舞台となったのは1903年~1904年。
公開された頃からするとノスタルジックな感じなのかな。
衣装も1903・1904年頃のデザインだったようで、見ててとても楽しかった!
普段はともかく、パーティのときのドレスのためにコルセットをぎちぎちに締めたりもしていて、私なんかは絶対に着れないなぁと思いつつもああいうドレスには憧れますね。
服の形や色味、男女の関係なんかも興味深くて、この作品まるごと通してとにかく見ていて楽しい作品でした。

ひとつびっくりしたのは、映画の終わり。
私はいつも映画を観るときには映画館で飲み物を一つ頼むのですが、たいてい最初の頃に少し飲んで、途中から夢中になって飲むのを忘れ、エンドロールで慌てて残ったのを飲む、という感じなんですよね。
この映画でも途中で飲むのを忘れて最後に半分くらい残っちゃったのでエンドロールの間に飲んじゃおう、と思ったら、エンドロールがなかった!
この当時はみんなそんな感じだったんですかね。
確かに始まるときにキャストやスタッフ・プロデューサーの名前なんかは出てましたけど、本編が終わったらすぐに「The End」と画面いっぱいに出てそのまま終了でした。
客電ついてから慌てて残ったカフェラテを飲みました。
いつから今みたいにエンドロールが長くなったのか、ちょっと興味がありますね。

そんなこんなでジュディ・ガーランドを堪能した『若草の頃』ですが、ジュディ・ガーランドはこの映画がきっかけで監督のヴィンセント・ミネリと結婚し、ライザ・ミネリが生まれたということにもまたびっくり。ライザ・ミネリがジュディ・ガーランドの娘ということも知らなかったよ。
私にとってはいろいろと驚きに満ちた作品でした。

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