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『うちの旦那が甘ちゃんで 寿司屋台編』感想

『うちの旦那が甘ちゃんで 寿司屋台編』神楽坂淳 講談社時代小説文庫 2022/11/25読了

『うちの旦那が甘ちゃんで 寿司屋台編』神楽坂淳/講談社時代小説文庫
(表紙画像は版元ドットコム様より)

今回は寿司屋台編ですが、表紙に騙された、と思ってもしょうがないと思う。ちゃんと寿司屋台やってるし、そういう意味ではないんだけども。
でもこれはこれで新鮮でした。

それにしてもこのシリーズは相変わらずお腹が空きますね。たぶんここに出てくるいろんな食事は当時の食べ物や調理法なんだろうと思います。
今の私にはなかなかハードルが高くはあるけれど、でも今でも作れるようなものばかりで作ってみたくなります。というか、食べたいので誰かに作ってほしい。

今回のお話は牡丹が活躍してるんだけど、牡丹はいつまでこういうことができるんだろうか、とどうしても考えてしまう。
ある意味では、このシリーズもサザエさんワールドな感じなので、もしかしたらずっと続けられるのかもだけど。
でも長いシリーズになってくるとキャラクターの成長も重要なファクターになるので、今後牡丹をどうするつもりなのか……牡丹がどうなるのかが気になります。

ただ正直な話、今回も美味しそうだし楽しいんだけれど、これまでのお話と較べるといまひとつな気がするんですよね。これは前巻にも言えることなんですけども。
いろんなキャラクターを出そうとするあまりに、ストーリーの勢いが落ちてきている気がします。

音吉と牡丹は、たぶんシリーズの人気キャラクターなんだろうと思います。それ以外のキャラクターにもたぶんファンがついていると思います。
ファンがついているというだけでなく、話を進めるに当たって、この人やこの人やこの人も出て来た方がいい、というのはもちろんあると思う。
ただ最近のお話は、こういうストーリーだからこの人をではなく、いろんなメンバーを出すためにこういう話にしよう、となっているように感じるんですよね。
今回のお話もそういうのがあって、それにプラスして、いつもと同じではない何かをと思って屋台を出すような設定にしたように思えてしまったんです。
もちろんこれは私の邪推です。
邪推ではありますが、最近のこのシリーズは、まずストーリーがあってではなく、こういうコスプレをさせたい、このキャラクターを出したいというのが先に立っている感じがするの。
そういうお話の作り方もあるとは思うけれど、そして実際にそういう人気があるからだと思うけれど、結果的に以前のようなスピード感とか爽快感とか、そういうものが減っている気がするんですよね。

時代小説の全てがではないけれど、少なくともこのシリーズはミステリや警察小説といったものが根幹にあって、事件を解決するためにいろんな人が出て来ていろんなサブストーリーが繰り広げられていると思っています。
でも最近は、人気のあるキャラクターをたくさん出したり、こんな沙耶が見たい、こんな牡丹が見たいというような部分が先に立って、事件の解決がおざなりになっているというように感じてしまうのです。
確かに解決してはいるんだけど、ハウダニット、ホワイダニットなどの部分が後回しにされているように見えてしまう。
実際、その部分は最後の方に沙耶の語りでさらっと流されていたりして。
私はミステリが好きでそういう部分が見たくて、そのうえで時代小説らしい江戸の街並みや習俗や、沙耶や旦那、他のキャラクターたちのいろんな姿や掛け合いを楽しんでいるので、後者が前面に出てきている今回のようなお話が続くとこの先はどうしようかなあと思ってしまうんですよね。
とりあえず次巻を読んでみて、続けるかどうかはそこで決めようと思います。

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