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『大河への道』感想

6月1日のファーストデーに見たのはまずは『大河への道』。
ポスターを見たときから面白そうと思ってたのですが、Twitterで流れてくる感想が割と評判が良かったのでいそいそと観に行きました。
原作本を出している河出書房新社のリツイートだから、評判がいいのが流れてくるのは当然と言えば当然なのですが、どこが良かったのかがきちんと書かれた感想ばかりでより興味をひかれたので。

主演は中井貴一さん。中井貴一さんが演じるのは、地元の著名人である伊能忠敬はどうして大河でとりあげられないのか、と常々考えている千葉県香取市の職員の池本。
松山ケンイチさんがその部下。北川景子さんは香取市観光課の職員。
北川景子さんが司会を務める、香取市を盛り上げるための施策を考える会議で池本は悪目立ちして意見を求められる羽目に。そこで苦し紛れにひねり出した伊能忠敬を主人公にした大河の話が千葉県知事の耳に届き、脚本家まで指名されたうえ、池本が特命で担当となることに。
偏屈な脚本家を説得し、なんとか引っぱりだして伊能忠敬の業績や生涯を知ってもらい、そしてようやくやる気になった脚本家・加藤から池本は衝撃的な言葉を告げられる。
「伊能忠敬は『大日本沿海輿地全図』が完成する3年前に亡くなっている。だから、伊能忠敬は日本地図を完成させていない」

ここから話は伊能忠敬が亡くなったその晩へと一気に時代を遡ります。
伊能忠敬が亡くなった後、いかにして『大日本沿海輿地全図』が完成したか。

現代に出てきた中井貴一さんたちキャストが江戸時代の伊能忠敬を取り巻く人びとを演じるという、全員が二役を演じているというのも面白かったです。

この原作は立川志の輔さんの創作落語で、感動するいい話で終わりそうなところ、落語らしくちゃんとオチがつくというバランスがとても好きでした。
時代劇でもあり現代劇でもあり、史実に基づいている部分ももちろんあり、詳しい方から見たら考察すべきところはたくさんあるのだと思います。
が、私は最終的に草刈正雄さんに全部持っていかれ、「草刈正雄さんカッコイイ……!」ととても頭の悪い感想しか呟けなくなってしまった。
だってかっこよかったですよ草刈正雄さん!!!
反則やんかあんな出方。もーほんとずるいわー。

そんな頭の悪い私でしたが、やはり地図を並べたシーンは圧巻でした。あれは本当にすごい。いったいどこで撮影したんだろう?とちょっと違うところも気になってはしまいましたが(だってあんな広い畳敷きの部屋ってどこにある? セットなの? それとも本当にどこかにあんな部屋があるの?)、そんなあほなことを考えてしまうくらい圧巻で、たぶんあのシーンはポカーンと口を開けてスクリーンを見つめていたと思います。

この映画は、最初に見たポスターにあった情報、それも大きな文字で書いてあった部分のみと、原作は創作落語らしい、という程度にしか前情報としては知らずに見たので、エンドロールが流れて来てからがまたびっくりしました。
主題歌が流れている部分ってことですが「ちょっと待って、この声誰?」と思い、考えてもわからず、クレジットで玉置浩二さんの名前を見てからようやく腑に落ちた。
歌がうまいとは思っていたけれど、こんなにうまい人だったのかと改めてびっくり。なんというか、作品全体を包み込むような声だなと思いました。

そしてもう一つびっくりしたのが、脚本が森下佳子さんだったこと。こちらも正確には、びっくりしたというよりも腑に落ちたという方が近いかな。
うまく言えないんですがこの映画の脚本はとてもきれいな円環を成しているような感じで、最後の一筆で綺麗にぴったりと重なった円ができたような、そんな脚本だなと思ってたんです。そして脚本家が森下佳子さんだと知って腑に落ちたんですよね。

決して派手ではないんですが、じんわりと温かくなるような、そんな映画でした。

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