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『サバカン SABAKAN』感想

草彅剛が出てるから、とあんまり考えずに観に行ったお話。
とはいえ、草彅剛の出る映画の三分の一くらいは苦手な要素がてんこ盛りのことが多いので、正直それだけでは観に行きづらい。『ミッドナイトスワン』は、もう二度とこの映画観れないとまで思ったし。
なので、先に観た友達が良かったよーと言うのを聴いてから観に行きました。
草彅剛演じる久田孝明は売れない小説家。書きたいのは純文学ですが、売れないためゴーストライターをしているらしい。妻と離婚したが、娘とはときどき会っているらしい。
そんな彼の現在の姿から物語は始まりますが、実際は、彼が子供の頃のお話です。昭和61年の長崎でのお話。

孝明は小学5年生。夏休みに、家が貧しいため馬鹿にされているクラスメイトの竹本健次とひょんなことから親しくなり、二人だけで親には内緒で海に出かけることに。
二人は夏休み中毎日遊ぶくらいに仲良くなったが、秋になり、二人の人生に関わる事件が起きる。

と粗筋を書いてしまうとめちゃくちゃ簡単なのですが、この映画全般に漂う雰囲気がとても好きでした。言葉ではとても言い表せない、雰囲気。
出てくるのは長崎の昭和の家族で、九州で昭和生まれの私にはとても馴染みのある感覚でもありました。
それは当時の昭和の空気そのものでもあるし、孝明の、健次の家族たちのつながりでもあるし、遊ぶといえば外を走り回っていたあの頃の感覚でもある。
観客は若い人もいたけど私よりももっと年上の人たちが多かったな。おそらくは孫が小学生以上であろうおじいちゃん、おばあちゃんもいました。
つまり、昭和の空気感を知っている人たち。
夏でもクーラーはあまりなくって、蝉がジージーと鳴いているなか走り回って、山の中を探険したりして、兄弟も入り交じって遊んだりして、学校帰りに寄り道したりなんかもして、ヤンキーたち怖かったなってあの頃の感じ。

私は地元で暮らしているし、あの頃遊んだ友達とまだ付き合いがあって、というか今もよく会っています。
でも孝明のように都会に出ていればそんなことはなかなかないだろうし、そうでなくても、地元にいても当時の友達とは縁遠くなってしまった人たちもいるでしょう。
この映画は、そんなふうに子供の頃のいろんなあれこれと縁遠くなってしまった人たちによく効く映画だと思うんですよね。

何にも考えずに友達と走り回って遊んで、テレビを観て、カルピスを飲んで、みんなで食卓を囲んでいた懐かしいあの頃。
あの頃を思い出して、ついでに子供だった頃のあれこれを思い出して頭抱えたりもするけど、楽しい記憶がたくさんサイダーの泡みたいにふつふつと湧き上がるような映画でした。

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