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『流転の地球 太陽系脱出計画』感想

『流転の地球 太陽系脱出計画』2024/3/30鑑賞

中国のSF映画。最初にチラシを見たときには特に興味はそそられなかったのですが、予告を見てとても気になり調べてみたところ『流転の地球』は『三体』の作者の劉慈欣さん。これをもって観ること決定。

『三体』はSF好きな方には説明不要な話題作。ヒューゴー賞を受賞し世界各国で話題になっており、中国でドラマ化されたものがWOWOWで(後にU-NEXTでも)配信され、それとは別にNETFLIXでも舞台をイギリスに移してドラマ化され配信されています。
私も読みましたが、設定も衝撃的ならその展開も衝撃的で、ぐいぐい引き込まれる作品でした。とはいえ個人的に第三部は、第一部、第二部と較べて引き込まれなかったな。主に第三部の主人公のために。
それはさておき、三体の作者の方ならばこれまた圧倒的なスケールのSFではないかと思い『流転の地球 太陽系脱出計画』を観ることにしたわけです。

この作品は『流転の地球』という2019年に公開された映画の前日譚です。
劉慈欣さんは『流転の地球』の原作者であり、『流転の地球 太陽系脱出計画』では制作陣に加わっているとのことなので、厳密に言えばこの映画の原作者ではないのかな。ただ『流転の地球 太陽系脱出計画』には随所に『三体』で観たような考え方や『三体』の設定に近い部分が見受けられるので、やはり劉慈欣さんの影響が大きな作品だと思います。

あらすじは以下のとおり(公式サイトより)。
「そう遠くない未来に起こりえる太陽系消滅に備え、地球連合政府による1万基に及ぶロケットエンジンを使って、地球を太陽系から離脱させる巨大プロジェクト「移山計画」が始動! 人類存亡の危機を目前に、各国の思惑や、内紛、争いが相次ぐ中、自らの危険を顧みず立ち向かった人々がいた。
亡き妻への想いを胸に、宇宙へと旅立つ飛行士・リウ(ウー・ジン)。禁断のデジタル技術によって、事故死した娘を蘇らせようとする量子科学研究者・トゥー(アンディ・ラウ)。そして、大きな決断を迫られる連合政府の中国代表・ジョウ(リー・シュエチェン)。多くの犠牲を払いながら、地球と人類の存亡と希望を懸けた最終作戦が始まった!」

観ていてつくづく思ったのは、太陽の変化により滅亡の危機に瀕した地球をどう救うか、という話なのにアンディ・ウイアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』とはずいぶんと趣が違うということです。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は映画『オデッセイ』(原作小説は『火星の人』)と同じ作者の方で、こちらは地球は滅亡の危機に瀕しているのに悲壮感がなくどこか明るいんですよね。
でも『流転の地球』の方は容赦がない。希望が無いわけではないんですが、とにかく容赦がない。
ジェットコースターのように次から次に困難が降りかかる、ようやく掴んだ幸せに影が差す。世界の正義と個人の幸福は対立し、そのどちらに価値を置くかでまた不穏な空気となる。
その決断から引き起こされる結果はまったくもって容赦がない。

あくまで前日譚なので『流転の地球』本編を知っている方には行きつく先は見えていますが、それでもラストシーンまでに見ているのが辛いシーンがたくさんありました。
病院でのシーンとか、各国から死地へ赴く人たちを選抜(志願)するところとか、月での最後のシーンとか。

でも私が一番辛かったのはアンディ・ラウの親子のシーン。最初から最後まで全部辛かった。
たとえば『梨湖という虚像(作:梶尾真治)』や『フェッセンデンの宇宙(作:エドモンド・ハミルトン)』のような、私の好きなSFのエッセンスがたくさん詰まっているけれど、映像化されるとこんなに胸に迫ってきて辛いんだな。
『心にかけられたる者(作:アイザック・アシモフ)』に通じるところもあって、本当に好きなものがたくさん詰まっているのに、いろいろと迫ってくるの。
映画の力をつくづく感じました。

この映画、ラストシーンやスタッフロールなどの細かいところがまたすごく良かったです。
特にスタッフロールは作品世界の石器時代から現代までが現わされているのかなあ。
隅から隅までこだわってるな、と思いました。

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