数字を見ると何が分かる? 輸入農産物に貼られているシールとPLUコードの話
先日、妻が1本のショート動画をシェアしてくれた。マーク・パンサー氏がアヴォカドに貼られたシールについて語る動画だ。
マーク・パンサーと言えば、かつてはMEN'S NON-NOの初代専属モデルとして活躍し、1990年代からはglobeのメンバーとして一世を風靡したことは説明するまでもない。
世代的にど真ん中でその活動を見ていただけに、最初は「健康生活研究家」という肩書きの意外性で動画の内容が頭に入ってこなかったんだけど、実はとても重要な情報を発信されていた。
シールの数字はPLUコード
動画では、アヴォカドに貼られたシールに書かれている5桁の数字の意味について、こんな風に紹介されていた(抜粋)。
妻によると「今日、店頭で見たアヴォカドは番号が4桁だったよ」ということだった。どうやら4桁のものもあるらしい。気になってちょっと調べてみたところ、実際に流通しているPLUコードで8で始まるもの=遺伝子組み換えということではないようだ。
8で始まる5桁の番号、実際には?
そもそもPLUコードというのは商品管理用のコードで、国際農産物規格連盟の規格である。IFPSのデータベースで検索すると品種やサイズなどの情報を確認することができる。店頭などでぱっと数字を見て判断できる情報は下記のとおり。
4桁のコード=慣行栽培(農薬や化学肥料を使用して栽培されたもの。3か4で始まる)
アタマに9がついた5桁のコード=有機栽培(農薬や化学肥料を使用していない)
では、8で始まるコードの話はなんだったのか? これはかつてGMO農産物を識別するために用意された番号だったが、実際にはその用途で使われることはなく、現在は3000/4000番台を使い切った後に使用するために確保されている。結局、接頭辞の「8」は特に意味を持たない管理用の番号である、ということだ。
つまり、その商品がGMOかどうかは(少なくともPLUコードからは)確認できない。当初そうする予定だったが実際には別の運用をすることになったという背景には「シールの数字でGMOだと判ったら売れなくなりかねない」という考えがあったことは想像に難くない(*個人の想像です)。
GMO農産物の是非についてここで論ずるつもりはない。しかし(それだけではないにせよ)上記のような経緯は消費者の「知る機会」と「選ぶ権利」をしれっと黙殺している感じがして、すこぶる不愉快に感じる。
消費者の「知る機会」と「選ぶ権利」
消費者が知りたいのは過不足なく正しい=ごまかされていない情報だ。それがあればこそ、消費者は自分の責任において判断することができるのだ。
そういう意味では、最低限の表示義務を果たしてさえいればそれでいいというのは売る側としていかにも無責任、あるいは責任転嫁と言っていいだろう。輸入農産物に限った話ではない。個人的には海産物の原産地や原材料表記なども”ごまかし”を感じるものが多いように思う(これはまたきちんと調べてから別の文章で取り上げてみたい)。
食品の安全性についての情報は店頭やメディアで消費者に対してもっと積極的に周知されるべきだと思う。「ちゃんと確認すれば判るようにしてあります」ではなく、消費者の目に留まる場所にもっと判りやすく明示されているべき重要な情報ではないか。
これまで「今日はアヴォカドがずいぶん安いね」なんて購入したものは果たしてどうだったんだろうか。そうとは知らずにGMOのフルーツを購入していたんじゃないだろうか。実際にそうでなくても不安と不信感が募るのは、上記のような(信用しきれない)状況が平然とまかり通っているからだ。
繰り返しになるけど、「遺伝子組み換え反対!」とか「農薬を使うな!」とここで叫びたいわけではない。使わない方が安心だろうけど、それは生産のコストや手間、そして販売価格に跳ね返る。毎日口に入れる全てのものをオーガニックにしなくちゃ、という話でもない(できたら良さそうけど、お財布との兼ね合いがあるからね)。
重要なのは「選択肢があること」と「選択権が消費者にあること」、そして「選択の根拠となる情報が広く分かりやすく開示されていること」だ。
娘たちの世代が自分の判断で生活する頃には状況が改善されていてほしいと心から願う。そういう社会を作るためにはどうしたら良いのか。それは今、大人である僕たちに問われているのだ。自分で考え、行動し、政治や社会にきちんと参加することが大切なのはそういうことなのだ。
というわけで、健康生活研究家 マークさん。有益な情報と気づきをありがとうございました。
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