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マジシャンという仕事

マジシャンを目指す志望動機

 マジシャンという仕事は、どのような仕事なのだろうか。
 「マジックをする仕事」ということは、多くの人が知っているものと思われるが、他の職業と比べて、どのような特徴があり、どのような利点がある仕事なのだろうか。

 人がある職業に就くにあたっては、何らかの理由があり、その理由のことを「志望動機」と呼ぶ。その志望動機は人それぞれであり、父親がその職業でその背中を見て育ったとか、その企業の製品を愛用しているとか、社長の人格に惹かれたとか、知人から紹介されたからとか、会社を見学して社員の働く姿に感銘を受けたとか、ある特定の分野に貢献するという趣向が一致したとか、家から近いとか、給料が高いとか、実に様々な理由があり、しかもひとつだけの理由とは限らず、2つ3つの理由を掛け合わせた志望動機であることも多いだろう。
 同様に、退職する理由も様々で、給料は良かったが職場雰囲気が悪かったとか、紹介してくれた知人がすぐ辞めたとか、家から近いから就職したのに転勤を言い渡されたとか、結婚する段になって子育てに理解のない会社であることが発覚したとか、そのような、就職する段階では知り得なかった事情によって退職することも多いものと思われる。

 このようなことを踏まえて、マジシャンを目指すにあたって、事前に事情を知っておくことは、とても有用なことであるだろう。マジシャンを目指す志望動機が「マジックが好きだから」であるならば、とても良いことであるし、その志望動機によってマジシャンになった人は多いものである。他にも「人に喜ばれるのが嬉しい」「笑顔を作る職業に就きたい」という志望動機も多い。
 一方で「食べていけるのかどうか心配」という経済的な理由で、マジシャンになりたいのに踏み止まっている人も多いのではないだろうか。

 その心配に対してここで答えるならば、食べていく事はそう難しいことではない、ということになるが、しかし実際問題、その人のやり方次第であるのは言うまでもない。
 これはマジシャンという職業にまつわる問題ではなく、一般的にマジシャンはフリーランスであり個人事業主であるという事情にまつわる問題である。会社員よりもフリーランスのほうが、会社の取り分が存在しないために高い収入を得られるという一般論もあるが、たとえば喫茶店で仕事をして食べていけるのか、という疑問に対して、従業員は月々の固定給がもらえるから食べていけるが、経営者は売り上げを確保する努力をしなければ食べてはいけないし、従業員の給料の支払いに圧迫されてしまえば食べていけない、という答えになるだろう。要は職業よりも、雇用形態や勤め先に「食べていけるかどうか」の答えはあるということになる。

 マジシャンも同じで、マジックバーに雇用されるという形態もあれば、自分で飲食店と契約したり、出張マジックの営業を探したりするという形態もある。その仕事をたくさん取れるマジシャンもいれば、そうでないマジシャンもいるのだから、「マジシャンとは食べていける職業なのか」と問うても、一律の答えは返ってこないものであるだろう。プロ野球選手に年俸500万円の選手と5億円の選手がいるのと同じことであり、500万の選手と5億円の選手では「食べていける職業なのか」という問いに対する答えが違うのと同じことである。

 というように、マジシャンとして食べていく事はそう難しいことではない、とここで書いたとしても、実際のところは個々人の裁量に委ねられるものであり、何ら確約できるものではないことは、他の様々な職業と同じである。マジシャンになった後の行動によって、道は分かれることとなるが、より強い志望動機を持ったマジシャンが、分かれ道を正しい方向へ進むことができることと思われる。

 この章では、マジシャンという職業の利点というよりは、マジックというエンターテイメントの利点を紹介することにする。このマジックの利点をうまく利用できるマジシャンが、つまりは成功するマジシャンとなることだろう。

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