【百科詩典】わたし【私】

仏教の基本には、「私」には実体がないという考え方があります。
むしろ、「私の実体とは何か」と考えること自体が「私であろうとすること」という欲望に支配され、苦しみにつながるのであって、「そもそも、私の本質というものはないのだ」と気付いたときに初めて人は解放されると考える。
つまり、「無我の我」というように、「絶対的な私はない」と気付いた時に初めて「私」という現象を引き受けることができるという逆説が、仏教の本質なのです。

~中島岳志「100分de名著 オルテガ『大衆の反逆』」