【百科詩典】あべしんぞう【安倍晋三】

安倍晋三は今の日本の現役政治家の中で「死者を背負っている」という点では抜きん出た存在である。
彼はたしかに岸信介という生々しい死者を肩に担いでいる。(中略)
今の日本の政治家の中で「死者に負託された仕事をしている」ことに自覚的なのは安倍晋三くらいである。
だから、その政策のほとんどに対して国民は不同意であるにもかかわらず、彼の政治的「力」に対しては高い評価を与えているのである。
ただし、安倍にも限界がある。
それは彼が同志でも朋友でもなく、「自分の血縁者だけを選択的に死者として背負っている」点にある。
生きている側近たちだけでなく、死者に対してさえ、彼は「ネポティスト(身内重用主義者)」なのである。

~内田樹『街場の天皇論』