【今年好きだった映画2020】
【今年好きだった映画2020】※確定
■10位 ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 3.9
■9位 もう終わりにしよう。3.9
■8位 レイニーデイ・イン・ニューヨーク 3.9
■7位 ザ・ファイブ・ブラッズ 4.1
■6位 はりぼて 4.2
■5位 アナと雪の女王2 4.2
■4位 クイーンズ・ギャンビット 4.3
■3位 スパイの妻 4.4
■2位 TENET 4.5
■1位 この世界の片隅に 4.8
■『クイーンズ・ギャンビット』実は「将棋」の話?!天才「猫娘」の魅力をネズミ男気分で!20201227
アニャ・テイラー=ジョイの魅力がすごいよ。ぞっこん。ポーンの駒を攻撃的に「捨てた」直後の、顔をあげたときの上目遣いに毎度ゾクゾク!その指先で僕のことも美しく捨てて欲しい!下から見つめられるドキドキを最高潮にすべく、鑑賞時は画面位置を低めにするのさ!
■『シカゴ7裁判』20201205
不当に起訴されたでなく、時代に「選ばれた」というアビー・ホフマンの台詞が「コンプレックス足りないよなぁ」とぼやいてた僕の浅はかさを打ち砕く。分断と閉塞の今の日本で生きていること自体がもはやコンプレックス。だから叫ばないと!あと裁判官がアンフェアで予算委員会みたい。
■『ホーム・アローン』20201205
子どもならでは手加減無用の痛恨の一撃を食らっても食らっても立ち上がり、もはや「本分」忘れ、復讐だけに突き進むボロボロ泥棒コンビのファイトに喝采と同情が止まらない。何が何でも帰宅しなきゃと焦りまくる母親も近所のシャイなおじいちゃんも含め、大人も可愛らしい作品ね。
■『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』ぺこぱ好き日本人に圧巻の「18禁」を。あのコント芸人も救えるかもしれない。 20201204
■『なぜ君は総理大臣になれないのか』サンジャポ芸能人のイメージを払拭せよ!20201130
答えは「誰についていくかを間違い続けているから」ですね。付き従う政治家が風見鶏タイプばかりで失敗している。というか!本来は間違う必要すらないんですよ。「国民」についていくだけです。国民に寄り添い、政策や質問に昇華させる能力は抜群なのですから。
■『スパイの妻』。「片想い」体質を劇的に改善できます。20201120
愛を貫き過ぎて、もはやホラー。空襲の戦火を「燃料」にして、愛情を燃やす妻の「一途プレイ」に感服。軍人でもない市井の女性は、自称「スパイ」になることで愛の強靱さを表現する。片想いに悩む貴方に「両想い気分」を自作自演するやり方を教えてくれますよ…
■『おそ松さん season3』究極に堕落した令和の寵児=六つ子ニートに比較優位に立つつもりが「一松ラジオ」でまさかのブーメラン!トド松のツッコミが沁みる 20201113
■『ミッドナイト・イン・パリ』時には昔の話ができる貴方はそれだけでキラキラです。20201028
キラキラの登場人物たちは「昔はキラキラだった」と皆ぼやく。槇原敬之「どんなときも。」の♪昔は良かったねといつも口にしながら生きていくのは本当に嫌だから~を思い出す。母が好きだった一節。「昔は良かった」つい言っちゃうけど、昔を愛せる人はそれだけでキラキラ。
■『東京沈没2020』。制作者たちの「パニック大喜利」を大いに笑おう!日本は沈んで滅ぶけど。20201021
劇中では1億2000万人まで殺し放題&日本列島壊し放題。アニメ表現を謳歌する者たちの遊びと主張の「クセ」がすごい。辻褄とか地質学とか感情移入とか二の次さ!刹那主義と表現の自由に今宵は万歳。
■『エマ、愛の罠』躍り狂うエマは『パラサイト』の「きわめて不道徳」版?『ダークナイト』ジョーカーの再来?火炎放射器であったかいんだから♪ 20201008
■『TENET』 ネタバレなしで3つの興奮ポイントを解説。ドMの方は必聴!SMの女王様と堪能する気分になれます、それはもうエントロピーナ。テネット!20201001
クリストファー・ノーランの映画館への情熱が熱すぎて誰も逆らえない<上映>作品『TENET』と、ディズニーの中国政府への根回しとそろばん勘定が見え透いた<配信>作品『ムーラン』。客に届いたのは「情熱」でした。関係者は調整に「死んだ」でしょうが面白いことはいつも「面倒くさい」のです。
■『はりぼて』半沢直樹よりも半沢直樹な展開と、不正議員の土下座の美しさに、黒幕の巨悪が見え隠れする。20200924
■『ブックスマート』には高学歴おじさんを連れて行って救ってあげよう!
勉強できた過去にしがみつき、日々を小器用に事務処理し「いつかオレも」と心に誓うだけの、勉強やめて久しいアラフォーサラリーマンは青春コメディなのに泣きますよ。多様性を謳歌する高校生たちの眩しさに。
■『もう終わりにしよう。』猛吹雪のNetflix画面に浮かび上がる姿に絶叫。20200924
■『ようこそ映画音響の世界へ』ポップコーンよりも柿の種よりも。(2020/9/7)
「サックサク」のポップコーン片手に観てはいけません。でも映画館では塩っ気が欲しくなりますよね。新宿シネマカリテの売店を覗けば、プリングルスと柿の種と歌舞伎揚げ。これはいけません、全部「サックサク」なのです。音響の映画です。小劇場ではスピーカーこだわりおじさんが集結し、耳を澄ましているのです。あーしっとりした梅干しを持参するべきでした。キュッと唇がすぼんで咀嚼音も漏らさぬ酸っぱめの紀州南高梅を。そのくらい、とにかく「『音』に真剣な映画」の映画でした。
■『この世界の片隅に』片渕須直監督。「24時間テレビ」の裏番組で毎夏放送しませんか?(2020/8/31)
まっさらな気持ちで初めて観た時も、おいおい泣きました。でもなぜこんなに感動しているのか、よくわからなかった。たぶん「情報量」が多すぎるんです。戦時下の日常描写、昭和初期の家族観、瀬戸内海の自然、兵器や軍艦、細やかに描かれたそれぞれのリアリティを飲み込む前に、解説もなく次々と物語が進んでいく。すずさんが失っていく大切なもの、ひとつひとつの悲しみに浸る間も無く物語が進んでいく。
柔らかなタッチで描かれた映画と、すずさんの明るく生きようとする姿は「一見、楽しげにも映るけれど、残酷な現実を隠し切れない」という構造は同じです。クラウドファンディングで集まったギリギリの予算で製作されたアニメーション、ひとつとしてメッセージのないシーンはありません。観賞後に勉強したり、改めて観たりして、それぞれの「情報」の裏側にある悲しみに気付く恐怖。新しい怖さを見つけてはズズーんと心打たれる。自らの成熟に合わせて毎年違う感動が待っているのです。8月が巡るたびに、自分がどこまで他者への想像力がある人間になれたかを教えてくれる、大切な映画です。
■『ゴキブリ刑事』渡哲也のコーラ瓶・歯ブラシ・ブルドーザの目的外使用が目に余る 20200820
何でも武器になる!SM女王様必見です。
■『ザ・ファイブ・ブラッズ』を山小屋で観たら。高田純次は出てこないけど… 20200816
■『悪人伝』イ・ウォンテ監督。この際、全部パンチだ!(2020/8/7)
コロナで陰鬱してますと、こんな堂々とした悪人が観たくなるのです。すぐカッとなってぶっ殺す系の悪さがいい。そういう意味では満点でした。ロバート秋山を極悪に仕立てた風貌のマ・ドンソク組長はとにかく強くて悪かった。しかもヤクザなのに全然拳銃を使わない。ドンパチしない。むかついたら全部パンチ。たまにビンタ。
本来ヤクザがやるべき裏仕事はそこそこ。違法賭博で金儲けとか警察対策で賄賂わたすとか適当にやって、とにかく「ムカつくアイツを八つ裂きにしてくれるわ!」にただただ全力。意地がすごい。復讐への集中力の高さにもはや感動しました。ヤクザの組長はメンツがすべてですから、メンツを潰した奴は絶対に許さない。職業として恐ろしくシンプルですね。
映画館を出れば、ややこしい雑事がまた待っているカタギにしてみりゃ、いいストレス解消でございました。
■『ダークナイト』クリストファー・ノーラン監督。ジョーカーと違って悪人として中途半端な映画泥棒に告ぐ。(2020/8/3)
映画泥棒に告ぐ。
残念ながらあなたは映画を盗めていない。「映画館で撮影した映画をネットで見せられたところで全然興奮できないの!『映画ドM』の気持ちが全然わかってないのね!映画を盗んだ気になってんじゃないよ!このニセ泥棒!」である。
決められた時間にわざわざ歌舞伎町とか「夜の街」に繰り出して、2000円近く払って、こっちはお客さんなのに、持ち込みダメだの、スマホは切れだの、おしゃべりするなだの、どんなに足が長くても〜♪だの禁止事項ばっかり!そう「縛り」ばっかり!つまり、外部から遮断された暗い密室にですよ。座席に身体を固定され、モノも言えず、目の前で起きることをただ見ていればいいのよ、と。なんというお預け。
そうです。SMです。映画館はSMの館なんですね。亀甲縛りにされ猿轡をはめられ、視界全体を覆う女王様が「私だけを観ていなさいよ」と。上映時間つまり「プレイ時間」が3時間を超えてくるとトイレにも行きたくなるのに行けない。うーんと我慢しているうちになんだか恍惚としてくる。そうですそれもSMです。または膀胱炎です。以前はゆったりと好き勝手に映画を見せてくれよと思っていたんですけど、あのたくさんの禁止事項が全部女王さまからの命令だと気づいたその時から、映画館がめくるめく場所に変わる。ポップコーンすら女王さまからいただいた「餌」に思えてくるのです。
小綺麗な言葉を使って、映画館のことを「非日常」とか「夢を見せてくれる場所」とか「デジタル漬けの日々にあってむしろ映画はアナログな時間をくれる」とか言う人もいますけれど、毎週、お金を払ってSMの館に通っているようなもんですよ。だから!とにかくいいたいのは最高に興奮した方がお得ってことです。せっかくならどMになりましょうよ。最近は4DXでしょ。匂いとか振動とか水しぶきとかで刺激してくれるんでしょ。もはやそれでしかない。
んでもって観に行ったのが「コロナで新作が出てこないついでに、名作をもう一度観てみよう」やっているじゃないですか。洋画だと『ダークナイト』やっているんですよ。しかもTOHOシネマズのIMAXで。普通の映画館より大画面大音響ですよ。刺激強めのやつです!意気込んで前から3列目ぐらいに座ったらダメージがすごい。女王さま、本当に勘弁してくださいと。そこまでの上級者ではないのか僕は。Mとして。
バットマンもなんだか、女王様みたいに見えなくもないし。バットマンがビルからビルに飛び移る時にだす黒いケーブルみたいなのが、鞭に見えなくもないし。悪役のジョーカーがすぐ使う火薬の爆発音が、後頭部のスピーカーから不意打ちしてくるのは、背中に垂らされる低温ロウソクということでいいでしょうか?『ダークナイト』のナイトは『騎士』ではなくて『夜』ですよね。邦訳は『暗がりの夜で』でいいですか?僕のバットマン様!!
■『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』ウッディ・アレン監督。ハリー杉山が松潤に変わる魔法。(2020/7/21)
ティモシー・シャラメこと、ハリー杉山が嵐の松潤に見えてくる不思議。もはや魔法。魔法使いのおじいちゃん、ウッディ・アレン。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』では、フジテレビ「ノンストップ!」でコーナータイトルを叫んでいたハリー杉山が、夢叶って?ハリウッドに抜擢され熱演しているようにしか見えなかったのです。しかし、ウッディ・アレン監督が描く、雨で煌めく優雅なニューヨークで、色恋に翻弄され、愛の言葉遊びに興じるティモシーは、もはや嵐の松潤のようになるのですね。
それは夢のような時間でした。90分少し、映画館にいながら、コロナも貧困も差別問題も垣間見えない、嘘みたいにキラキラしたニューヨークで繰り広げられる恋愛模様を、ニヤニヤしながら眺めていればいい贅沢。フランク・シナトラのバラードに乗せて霧雨が踊る中、ミニスカの恋人たちがすれ違うニューヨークの時計台の下に現れるのはやはり王子様、嵐の松潤でなければいけません。日本の情報番組で汗をかくハリー杉山の居場所は残念ながらなかったのでした。
あ、ティモシーの演技の幅がすごいって話ですよ。
■『WAVES』トレイ・エドワード・シュルツ監督。テイラーが微笑めば、世界は煌めくのです絶対に。(2020/7/14)
しょっちゅう死にたかったもんです青春時代は。毎回それなりに「真剣に死ぬ気」なんですけど、生命力とか性欲とかが勝手に溢れる頃合いでもあって、結局生き延びました。悩んでも悩んでも、自力で「答え」までたどり着くほどの精神力と勇気が足りなかったおかげかもしれませんね。「答え」を出しちゃった秀才は何人か天国に行っちゃいました。
逃げる場所はどこかに必ずあるのに、逃げられないと思い込む。永遠の絶望を感じる。悩んでいる自分が世界の端っこに小さく閉じ込められている気分になる。しかし、若い体は「行動」を求めます。走り出せ!叫べ!壊せ!悩むな怒れ!一通り暴れて傷だらけになって涙も枯れ果てて、でも、それでも生きようとする自分に笑えてくる瞬間が訪れた気がします。恋だったか夢の入り口だったか小さな成功だったか、何だか嬉しくなれそうな予感が多分あったのでしょう。
『WAVES』はタイトルも美しい。同じ波は1つとしてない。どうしようもない荒波でも、過ぎるまでは膝を抱えていればいい。やがて、テイラーが微笑めるようになった時には、柔らかな波が煌めいているのだから絶対に。
■『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』グレタ・ガーウィグ監督。浅はかな宣伝文句は劇場で泣き流してしまえばいい。(2020/7/7)
《今日も「自分らしく」を連れて行く――》
違う、そうじゃない。日本語ポスターの宣伝文句が浅はか!というか宣伝関係者各位は作品を観ました?若草物語の四姉妹は誰も「自分らしさ」などというペラペラなものに構っている暇などなくて、あの時代で女性が幸せになるために何が大切なのか必死で葛藤し、精一杯生きている。迷い、ためらい、後悔し、意地を張り、失って泣く。弱くて、強くなれなくて、生き方ブレブレで、最高に魅力的でした。
ポスターもハモネプみたいな四姉妹「分割画面」ではなくて、色とりどりの花が咲き乱れる大樹のように寄り添う四姉妹の「集合写真」の方がうんと素敵だったと思いますよ。
■『攻殻機動隊 sac_2045』。クールな戦闘の果ては、生温かった。(2020/5/5)
最新の攻殻機動隊シリーズで「敵」の攻撃手法が、「幼少期の忘れ難い記憶をむりやり呼び覚ます」に最終的に至ったことは、正直、観ている僕自身へのダメージも大きかった。自分だけでこっそり胸にしまっていた生温かな懐かしさを、自分の脳内に、他者が人工知能の力で強引に引きずり出す手法は、それがどんな柔らかな記憶であれ、それだけで十分に暴力的な攻撃と言える。自分が好んで懐メロを聴くのとは違って、突然、望んでもいない「大量の懐かしさに襲われる」と人は立ち止まってしまう。現在を生きる力を奪われてしまう。ネット上の集団リンチよりも内部から人間を破壊する攻撃力があるかもしれない。
今回の「攻殻機動隊 SAC_2045」が3Dだったことは、その「懐かしさの情景」を鮮明にし、観るものを没入させていく点で成功していた。3Dのお陰か、ふっくらと愛らしくなった草薙素子さんに見惚れてばかりだった僕は完全に油断していた。それまでの激しい戦闘シーンから打って変わって郷愁を漂わせる、ラスト2話が放つ緩やかな光に僕は吸い込まれてしまった。いつの日かの少年の葛藤が、本当にあったかどうかもわからない遠い記憶が、僕の古い傷口を勝手に撫でていった。
観た者を別の人間に変えてしまう作品を名作と呼ぶなら、そう呼んでもいい。
■『アナと雪の女王2』。ラスボス不在。若者が戦う相手が、伝統や自然への畏れを忘れた人類の横暴な「過去」という点で『天気の子』と相似形。20200104
「文化の乱獲」を繰り返してきたディズニーの懺悔ではあれ、メッセージ性の強い『アナ雪』は、世界中の子供たちにとって、未来を語る「共通言語」になり得る。
■『アイリッシュマン』マーティン・スコセッシ監督。エンドロール後に映画館なら外に出ればリセットされる余韻も、Netflixだからこそ、リビングのソファで続く続くしんみり。20200102
灰色の絵の具を上塗りしていくような、40分もの静かで薄暗い「終章」は、観終えた者の「余生」に痛切に訴えかける。