カナダのスキーインストラクターになってみた
2019年4月から年次有給休暇5日の消化が義務化されたらしい。
今の仕事についてから毎年余った年次有給休暇が消えていくのだけど、社会人としてしっかりこれを活用しなければ!っと。
いうわけで、平日短期集中のカナダのスキーインストラクター(CSIA)資格取得コースに行ってみることにした。
ここまで全く必然性ないけど、まあだいたいそんな感じ。
雪国出身だったら小さい頃から、競技はしないしそういうレベルでないけど、学校の授業とか短期スキースクールとか友達同士でバスに乗ってとか、スキーをする機会が結構あったという人はそれなりにいるはず。
僕はそのうちの一人だけど、大学生になって京都に移ってからは、冬になっても雪を見ることがほぼないし、とにかくお金がないので、スキーに行く気が起きなかった。東京に移ってからも生活のそういう状況は似たような感じだった。
高校以来10年ぶりにスキーをしたのは、2011年10月にパリに移住して初めての冬に、Les Houches(https://www.chamonix.com/les-houches-ski-area,232,en.html)に行った時。久しぶりに履いたスキーブーツで足が痛いけど、昔使ってたスキーと形が違うカービングスキーはギュンギュン曲がる感じとか、モンブランその他距離感分からんくらい遠くまでみえる景色とか、新鮮でよかった。
次に移住したデンマークは山がないし、日本に戻ってからも引越しとか目の前の処理すべきいろいろで、しばらくスキーのことは頭に浮かばなくてフランスでのスキーから7年たった。
スキーのことを思い出すくらいは余裕が出たんだろう。ネットでたまたまカナダのリゾート地ウィスラーのことを知って、一回ここでスキーしてみたいな、と。いうことで未知なる挑戦をするのは健康にいいのだと納得した勢いでスキースクールのインストラクター養成コースに登録して航空券とホテルを予約した。
これはいわば、限られた年次休暇取得中に現職の契約終了後のための職業訓練するということになる、わけでとても有意義なことに思えてくる、完璧!
バンクーバー空港から直行バスに乗って3時間くらいでウィスラーに着く。町自体は小さくて、そこら中にスキーやスノーボードを持った人が歩いている。滞在する部屋は受付がなくて大丈夫かなと思ってたけど、インターホンでエレベータの鍵を開けてもらって部屋コードを入力して、なんとか入れてほっとした。
すぐにスーパーに行って、2リットルくらいのフレッシュジュースといろんな味のヨーグルトを買った。フランスとデンマークでいつも買ってたようなのだ。特にジュースは日本でみたことない味とサイズでときめく。おいしすぎて感動して何回も味を確かめる。ついでに、サンドウィッチ風にパンにハムとバナナを挟んで食べるとおいしいことに初めて気づく。
2日目は、インストラクターコースの初日だったのだけど、朝7時過ぎにまだ暗い中部屋を出て、ゴンドラ乗り場へ15分くらい街中を歩く。スキーを背負ってるので写真はとれなかったけど、朝から町中イリュミネーションで遊園地みたいな感じだ。
ゴンドラで山の上の総合施設まで運んでもらった後うろうろして、インストラクターコースの受付を見つけて自分の名前を見つけてほっとする。インストラクターコースの先生はチリ出身の方、生徒メンバーはUK, スペイン、ドイツ、カナダ、中国、日本(僕)の6人だった。
スキーバーンの種類はいっぱいありすぎて、3日のインストラクターコース全日程いても覚えられないくらい。ゴンドラで上がったところから滑っていくと何回も道が分岐して、だいたい最後は街中のゴンドラに到着する。上から下まで一番長くて10kmもあるらしい。分岐点を間違え続けると隣町に着くので注意しなければいけない。
インストラクターコースの内容は、メンバーの自己紹介から始まって、先生がスキー用語を徐々に導入しながら滑り方のアドバイスしてくれる。技術的には、初めてangulation(外傾)を意識して体感できるようになった気がする。そしてインストラクターコースなので、生徒が"新米先生"と"初心者生徒"の役に分かれて、ショートレッスンの練習もする。
時間はスキー技術とティーチング合わせて、だいたい昼休憩1時間挟んで9:00-15:00で、僕は最初のレベルなので、それを3日間行う。次のレベルになると、5日間+オンライン学習とかになる。
レッスンの練習で”生徒”に滑り方のアドバイスするときは、基本的には"本当の先生"が言ってたことのコピーだけど、結構戸惑う。そもそもスキー用語とか体の部位とかの英単語を知らないから隙をみて調べて、最後は吹っ切れて"先生"の演技をしてなんとか乗り切った。
コースが進むにつれて、生徒メンバーの3人がそれぞれ、僕と同じ物理のPh.D.(博士)を持ってる、僕と同時期にコペンハーゲン大学の学生だった、僕と同時期に東京に住んでた、ということがわかって、世界は狭いねー、とお決まりの感じで盛り上がる。
スキースクールが終わった後の自由時間にゴンドラに一人で乗り込んだら、乗り合わせた年配の方に声をかけてもらって話をする。
「毎日スキーをしててこれが仕事みたいなものだよ」
「えー!?」
そしたら、隣でずっと黙っていたもう一人の年配の方も、
「私も毎日スキーをしてる」
「えーーー!?」
「あなたも?」
「リタイア?年はいくつだ?」
「69」
「私は70」
なるほどそういう引退後もありか。
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