プロフェッショナルチームのマネジメント 3:多様なワークスタイルへの適応

リモートワークの話題が多い昨今ですが、私自身、前職からリモートワーク制度が整っていたこともあり、以前からリモートワークに慣れ親しんできました。リモートワーク自体は、単にワークスタイルの1つのオプションに過ぎぎないので、リモートワークが新しくて良い、従来のオフィスワークは古臭くて良くない、ということではありません。

ただ、ワークスタイルが多様化してくると、異なる場所で、または異なる時間に働く人が増えてくるのは確実です(グローバル企業ではずっと前から当たり前ですが)。その多様化するワークスタイルの中で、同じビジョンを持って1つの価値をどう生み出していくか。これはプロダクトマネジメントにおいても1つの重要なテーマです。

なぜ多様なワークスタイルに向き合う必要があるのか

そもそもなぜ多様なワークスタイルに向き合うのか、それは一言で言うと、プロフェッショナルなチームにおいて、必然だからです。

多様なワークスタイルを受け入れることは、働く時間や場所を制約することなく、様々なプロフェッショナルの英知を集めるられることに繋がります。現に、今、私が携わっているAI事業でも、その人のいる場所(拠点)に関わらず、その事業・プロダクトに最適なスキルを持つ人達でチームが構成されています。また、その人のライフスタイルに応じて、働く時間も割とバラバラです。さらに、プロフェッショナルであれば、組織や会社、時には仕事とプライベートの枠を超えて、多数のプロジェクトを同時平行で関わっていることが多くあります。

そのような人達の力を合わせようとすると、多様なワークスタイルを受け入れることは、もはや必須条件になります。つまり、チームのポテンシャル、それぞれの人が持つ専門性を最大化しようとすると、ワークスタイルは必然的に多様化します。

プロダクトマネジメント観点での理想の状態

一方、プロダクトマネジメントの観点で考えた時にはどうでしょうか。実際にはほぼあり得ないのですが、もしある目的を達成するために最高なプロフェッショナルチームが、同じ時間・決まった場所に集まり、それぞれの顔が見える距離でワイワイガヤガヤできるような環境が作れるのであれば、それは間違いなく理想的です。なぜなら、物理的な距離の近さは、心の距離の近さになるからです。

スクリーンショット 2020-03-14 0.03.49

心の距離の近さは信頼関係につながりますし、信頼関係があればビジョンを共有したり、思いついたアイデアを建設的に議論したり、また考えのズレがあったとしても直ちに修正できます。さらにFace to Faceのコミュニケーションは、アジェンダに沿った議論と結論だけでなく偶発的なアイデア、いわゆるセレンディピティも起こりやすくしてくれます。近い方がいい、これは大原則だと思います。

マネジメントの観点では"ワイガヤ"環境が理想的、一方で、先に書いた通りプロフェッショナルの力を集めるためには、多様なワークスタイルを受け入れる必要がある、ここにワークスタイルのジレンマが存在します。このジレンマをどうやって解消するかが、ポイントになります。

ワークスタイルのジレンマを解消するには

まず考えるべきは何を優先するか、即ち、個の力を優先するために多様なワークスタイルを受け入れるか?、マネジメントのしやすさを優先するか?ですが、この答えは簡単です。個の力を優先します。

スクリーンショット 2020-03-14 0.03.58

何かの価値を生み出すのに、個の力は言うまでもなく全ての源泉であり、何物にも変えがたいからです。では、個の力を優先することで発生するワークスタイルの多様化、そして必然的な"物理的な距離"、この"物理的な距離"がある中でいかに"心の距離"を縮めるか、これが解決すべき課題です。

では、具体的にどうするか、キーポイントは3つです。
1. 価値観を共有し、信頼関係を作る
2. ビジョンを徹底的に共有する
3. 定期的にFace to Faceで話す

1. 価値観を共有し、信頼関係を作る

一言で言うとリレーションを太くするプロセスです。物理的な距離による弊害を打ち消すために、リレーションを太くします。

スクリーンショット 2020-03-14 0.04.08

具体的には、価値観、即ちその人の考え方の源泉を共有します。なぜ働くのか、なぜ今その環境にいるのか、個人として何を成したいのか、働く上で大事なこと・大事じゃないこと、絶対やりたくないこと、など。どういう哲学を持っているかを共有しあいます。

実際にあまりやっている人を見たことがないのですが、私はこのプロセスが一番大事だと思っています。私自身は、組織やプロジェクトのキーパーソンに対しては、ストレートに"価値観を話ししたいから時間をくれ"と言って、30分から1時間ぐらいの1on1ミーティングを実施させていただきます。基本的に、この1on1ミーティングは対面で実施します。なぜなら、価値観の伝達には言語以外にも表情、仕草などノンバーバルな情報に多くの意味が含まれるからです。

その際に一番重要なのは、お互いの価値観をリスペクトし、その違いに興味を持つことだと思っています。プロフェッショナルが持つ価値観は、それもう本当に多種多様ですが、その全ては意味深く、深い哲学があります。それを知ることは、私の個人的な知的好奇心が刺激されるのはさておいても、新たな多く気づきがあります。

そのような会話を経て、面白いなぁすごいなぁと思い、私はこんな考えなんだよと話ししている間に、自然と信頼関係が生まれていることが多い気がします。信頼関係は、心の距離を縮め、顔を合わせずともスムーズにコミュニケーションするために土台になります。

2. ビジョンを徹底的に共有する

信頼関係がある太いリレーションを整備するプロセスです。より効率的に意思疎通するために、ビジョンを共有し、そのリレーションを整えます。

スクリーンショット 2020-03-14 0.04.18

そのためには、生み出したい価値を未来のビジョンとして、色々な言葉で共有します。シンプルなワードでだけでなく、なるべく多くの具体例、体験を持って、思いを共有します。どういう価値をユーザーに提供したいか、それによって何を良くしたいのか、どんな課題を解決したいのか、何故それを実現したいのか、実現すると世の中はどう変わるのか、など。言語だけでなく、そのビジョンをイメージとして捉えられるように、多くの違う言葉で1つのビジョンを表現します。この時の会話は、"つまり"と"例えば"の繰り返しです。

その際に大事なことは、ユーザーの視点と自分の視点の両方を持つことです。ユーザー視点はそのままの意味です、当たり前のことですね。もう1つの自分の視点、これは特に大事だと思っていて、いつも意識します。一言で言うと、自分自身が本当にそれを実現したいか、です。何故、自分の意思が必要かと言うと、最終的にはそれ以外に頼るものがないからです。もちろん、ビジョンの正しさを確からしくするために、調査をしユーザーを知ろうとするわけですが、実現したいようなビジョンはいつも一見不可能に思えるようなコトであり、その正しさは成功するまでわからないわけです。

そのような不確かな中で、ビジョンにエネルギーを持たせるには、強い意思が不可欠です。強い意思は、自分が本当にそれをやりたいかにかかっています。それを確かめる一番シンプルな方法は、自分が1ユーザーとして強い価値を感じるかです。自分が1ユーザーとして価値を感じるコトは、自分の言葉でビジョンを話すことができますし、自分の意思を宿すことができます。大きな価値に、"強い原体験"が紐ついているのことが多いのは、"自分の視点"の大事さを物語っていると思います。

長くなりましたが、ビジョンを共有する際には、客観的なユーザーの視点に加え、主観的な自分の視点・意思ものせることが大事になります。

価値観とビジョンが深く共有できれば、物理的な距離があっても、スムーズにチームワークできるようになります。もしどちらかでも共有できていないと、常に考えがずれ続けるので非常にやりづらくなります。もしリモートワークでうまくいかないなと思ったら、一度、価値観とビジョンを徹底的に共有してみる事をお勧めします。

3. 定期的にFace to Faceで1,2を話す

1,2の方法で、心の距離を一気に近づけることはできるのですが、不思議なもので、顔を合わせない期間が長くなると、心の距離は少しずつ離れていきます。自然と離れていくことに気づくのは大事で、それが故に定期的にメンテナンスする必要があります(少なくとも私の経験では、これを完全に回避する方法はありません)。

できれば1ヶ月毎、少なくとも3ヶ月ごと、最悪でも半年に1回は、Face to Faceでビジョンを再び共有したり、近況を話し合うことが良いと思います。一度、信頼関係ができていれば、5分の会話でも、心の距離を元の状態に近づけることができますが、このFace to Faceの会話をするかしないかでチームワークのスムーズさは大きく変わってきます。私自身、定期的にFace to Faceのコミュニケーションを取るために、拠点を頻繁に移動したりしています。

明確なアジェンダがあるミーティングはむしろオンラインの方が効率が良いのですが、特に信頼関係を維持するためには、アジェンダのないカジュアルディスカッションや、仕事の話ですらない雑談をFace to Faceで実施する事をお勧めします。

Face to Faceで会えない場合は?

定期的に直接会う機会が作れればよいのですが、それができないこともあります。そんな時は、オンライン雑談をお勧めします。ビデオ会議でも良いですし、オンラインチャットでも、チームに合う方法であれば手段はなんでも良いと思います。大事なのは、時間を決めて、ちゃんと雑談することです。例えば、オンライン会議を10分前に切り上げて、残り10分を雑談に当てる、なども効果的です。

定期的な雑談は、それがオンライン上であっても、リレーションをメンテナンスする効果があります。直接会えない場合は、意識的な雑談をぜひお試しください。

まとめ

プロフェッショナルチームには、多様なワークスタイルを受け入れることが必然的であること、そして多様なワークスタイルでチーム力を最大化するには3つのキーポイントがあることを書きました。

1. 価値観を共有し、信頼関係を作る
2. ビジョンを徹底的に共有する
3. 定期的にFace to Faceで話す

初対面の人と、価値観を話し合ったり、ビジョンを共有するのは、初めのうちは小っ恥ずかしかったりします(私もそうでした)。しかし、そのような提案をしてNoと言われたことはないですし、実際に真剣に話してみると、その後のチームワークの質は劇的に上がります。加えて、リモートワークで生じがちな"顔が見えないことによるストレス"も劇的に軽減させることができます。昨今、避けようなくリモートワークされてらっしゃる方も多くいらっしゃると思いますので、参考になれば良いなと思います。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
9
LINE社にてAI事業のプロダクトマネージャーやってます。 https://www.linkedin.com/in/hiroki-nakamura/

こちらでもピックアップされています

あとで何回か読む
あとで何回か読む
  • 64本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。