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チームに弱音を吐いてもいい

2020年12月、大好きな自分のチームがガラガラと音をたてて崩れ始めていた。自分はいつもピリピリしていたし、チーム内で衝突がおこり、メンバーの顔には一番鋭角な彫刻刀で切り込んだような深い疲労が遠くから見ても分かるくらいくっきりと刻まれていた。

2019年10月に発足した掛川東病院在宅診療部は、医師1名事務3名でという精鋭部隊で地域のニーズに応え続けてきた。地域の信頼を得てどんどん増える新規依頼に対して、訪問診療医のリクルートは、どんなに上手にバットを振ってもボールにかすりもしなかった。

病状に関係なく依頼に即座に応えることをモチベーションにしていた当時のチームでは、残業が増え、チームカンファでも人の弱い部分ばかりに焦点が合ってしまう壊れたレンズを通してしか仲間を見られないような場面も多くなった。

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こんなことをするために掛川に来たんじゃない。

無計画に稲穂が刈り取られた田んぼのような自分のチームをみて、2021年1月に断腸の思いで新規患者の受け入れを止めた。すべての依頼を受け入れることを生きがいにいしてチームにとっては、金魚がいなくなった金魚鉢くらい空虚なことだった。そして鉢に残された水を通して見える向こう側の世界は意地悪なくらい歪んで見えた。


上の写真は、忘れていたメンバーの誕生日会を2021年2月に開催したときのもの。1ヶ月以上遅れたが、みんないつもよりちょっぴり高いプレゼントをした。「少し安心していんだよ」という鐘の音が遠くの方から聞こえてきたのを覚えている。


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もうあんな荒んだ時間を過ごすのは嫌だなと思い、チームの4つのチェックリストを作って毎週メンバーに確認するようにした。特に下の2つ、メンバーの幸福度と持続可能なかたちは、このとき大切に思えた。全く客観的な評価方法ではないんだけど。


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そこから半年間院外の新規患者さんを受け入れることはできなかった。


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それでもまた地域のニーズに応えられる日が来ると信じ、今目の前にいる方々に可能な限りの対応をした。まだ新規は受け入れできないですか?と連携機関から聞かれると、熟れたいちじくみたいに簡単に心が潰れそうになったけど、チームが一つになることを一番に考えた。


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2021年10月現在
常勤医2名、看護師1名、サポートスタッフ8名となった。

そして生まれ変わってもまたこのチームと一緒に働きたいと思えるメンバーに恵まれている。

2021年4月から看護師とサポートスタッフ2名がジョインし、7月からは待望の常勤医師が加わった。実に応募をかけ始めてから1年が経過していた。HUNTER×HUNTERがいつ再開されるのか分からなくなるほど長く心細い日々が続いたが、何もない掛川に来てくれた感謝は、職場環境で恩返ししたい。


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当院の在宅診療部は、通常の訪問診療をやっているだけでは駄目なんです。
・入退院調整(訪問診療医が地域包括ケア病棟の主治医も兼任するため)
・院長秘書業務(院長宮地が一人ではなんにもできないため)
・地域活動(住民がお互い支え合う地域づくりが求められるため)

業務は多岐に渡り、病院と地域の架け橋となったり、地域に深く入り込んでいくことが求められる。それは本当に過酷な業務内容で、例えば・・・

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仕事前朝6時から地元の栗で焼酎を作るために栗を拾わされたり


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地元の自然を多くの人に楽しんでもらえるように、テントサウナを担いで山入りし清流に飛び込んで強制的にととのわされたり。


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e-MTB(電動付きマウンテンバイク)で掛川の山々を縦走した後に、地元の林業について学ばされたり。


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新たな掛川特産物キウイフルーツの果実の下で焚き火を囲みながら自分を見つめ直したりと、とにかく過酷なのである。


そんな過酷な状況に柔軟に対応し成長し続けるスタッフに囲まれ、僕もだんだん働き方が変わってきた。


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今まで、大体のことは一人でこなすことができた。でもここ掛川での取り組みは、多くの人を巻き込みカルチャーを醸成する必要があり、何度も挫折している。自分の気持ちを分かってくれる人はいない、いつも孤独な戦いだと感じていた。

それでも、そんな自分勝手な自分にチームはついてきてくれている。
拗ねて駄々をこねても、うまくいかずに凹んでも、ストレスで八つ当たりしてもそれでも優しく声を掛けてくれる仲間がいる。

このチームになら弱音を吐いてもいい

と初めて思えた。ほんとは駄目なのかもしれない。でももう吐いちゃってる。なんなら今日も拗ねて途中で帰ってきてしまった。どうかこの文章を読んでまた明日優しく迎えてくれると嬉しい。自分も素直になる。

他のチームがどんな風か知らない、もっとすごいチームもあるだろう。だけど、このチームと一緒に働くことができることへの感謝を忘れずにいたい。

そして是非この記事を読んで僕のことを冷やかしたい人がいたら、是非掛川に遊びに来てほしい。 




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