エンジニアのキャリアと「35歳定年説」

▼誰に向けて書いてる?

・未経験でエンジニア(プログラマー)ー就職を目指している方。
・エンジニア(プログラマー)になってはみたものの「このままで大丈夫か?」と不安を覚えるようになった方。

▼あなたは誰?

既卒・第二新卒・フリーター専門の人材紹介会社でプログラマー就職支援をしています。
運営している研修 → https://college.daini2.co.jp/programmer
twitterやってます → https://twitter.com/kikushige3
Javaの講座動画撮ってます → http://bit.ly/2Scxpvf

▼業界知識がイマイチの人は・・・

以下でまとめているので見ておいてください。読んでいく中で知らない単語があったらこちらを読んでからの方が理解進むと思います。

プログラマーが気になるけど知識はゼロな人にまず押さえておいてほしい業界キーワード


▼「35歳定年説」の本懐

「エンジニア(プログラマー)35歳定年説」をご存知でしょうか?

技術のみで食っている人間は35歳くらいで働けなくなってしまうという風説のことなのですが、これは少なくない方にあてはまると考えてよいと考えています。

サッとググって「35歳定年説」を説明している記事を見てみましたが、こうなる理由として以下が挙げられていました。

・体力が低下するから
・新しいスキルを学び続けることの大変さ
・管理職へのキャリアチェンジ

偉そうで申し訳ないのですが、これらは間違いではないのですが少し浅いように思えます。

僕は「35歳定年説」の本懐は「市場価値の伸び悩み」にあると考えています。


▼エンジニアの技術と市場価値

エンジニアという言葉が「技術者」という意味であることからもわかるように、エンジニアは持っている技術に市場価値が大きく左右される生き物です。

技術に市場価値という値札を付けるのは難しいことですが、簡易的になら「技術のレベル」「技術の需給ギャップ」の2軸で評価できるかなーと思っています。

 ▽「技術のレベル」を伸ばす戦略

技術のレベルについて考えるうえで参考になるのがITSS(ITスキル標準)です。

ITSS(IT Skill Standard/ITスキル標準)は、経済産業省が策定したIT人材のスキル体系です。ITサービスにかかわるプロフェッショナルの教育・訓練などに、業界として有用な「ものさし」を提供しようとするものです。
マイナビ転職:ITSSまるわかりガイドより引用

「技術領域『業務システム』のレベル3では*****ができること」みたいなのが全ての技術領域&レベル別に整理されているものだと思ってください。

こんな感じ ↓ (情報処理推進機構:ITスキル標準センター:ITスキル標準概要より引用)

さて、ITSSにおいて技術のレベルは以下のように定義されています。

1〜2年目の未経験に毛が生えた状態でレベル1〜2、3〜5年目くらいの一人前な状態でレベル3~4、「高度IT人材」と呼ばれる強強エンジニアな状態でレベル4〜7と言った具合です。

「高度IT人材」になればプロフェッショナルとして高待遇な仕事を受けることが容易になるため「技術のレベル」を伸ばす戦略ではここがある種の目的地になります。

 ▽「技術の需給ギャップ」を伸ばす戦略

ある技術に対する市場ニーズ(需要)とその技術を扱えるエンジニア数(供給)にギャップがあればあるほど、給与を始めとする労働条件に大きな差が出ることは想像に難くないと思います。

市場から求められていれば求められているほど、希少性が高ければ高いほど市場価値の高い「オイシイ技術」だと言うことですね。

ここで株式会社ビズリーチさんが発表した「プログラミング言語別年収ランキング2018」を見てみましょう。

プログラマーで言うと2018年は「Go」「Scala」「Python」を扱える人の市場価値が高かったようです。

高速&シンプルな設計思想で人気に火がついている「Go」、学習コストが高く即戦力級のエンジニアが少ないため採用の難しい「Scala」、AIに強みを持ち世界的に人気のある「Python」と、どれも納得のラインナップです。

こうした市場ニーズの高い「オイシイ技術」を嗅ぎ分け身につけていくというのが「技術の需給ギャップ」を伸ばす戦略の基本となります。

プログラマー以外にもIT業界には

・AI開発や来たるシステム刷新ラッシュで需要の鬼高くなるデータエンジニア
・IoTや世界的スマホの普及などで高まる需要に対して数の少ないインフラエンジニア
・戦略的/本質的な思考と豊富な経験が求められるITコンサル

などなど…

需給ギャップの大きな技術領域・職種が結構ありますので、プログラミングにこだわらず市場ニーズと少し先の未来に気を配りながらオイシイ技術領域に足をつっこんでいくというのも戦略の一つでしょう。


▼エンジニアのキャリアに立ち塞がる壁

さて、技術レベルの高い「高度IT人材」になっている状態、市場ニーズの高い「オイシイ技術」で仕事をしている状態がエンジニアの目指すべき約束の地になるわけですが・・・

残念ながらここに辿り着ける人はそう多くありません。

多くの人は3~5年目あたりから徐々に「市場価値の伸び悩み」という壁にぶつかって収入や社会的地位が上がりにくくなり、ライフステージ的に子供の教育費や家やら車やらが気になりだす30~35歳あたりで耐え切れずドロップアウトしていきます。

これが「35歳定年説」のキモです。


▼なぜ「市場価値の伸び悩み」が起こるのか

例えばの話。

みなさんがメンバーの採用を一任されたプロジェクトリーダーだとしましょう。

Javaの開発を教育なしでお願いできる人材があと1人欲しいという状況で

 Aさん(33歳)
   └ 歴9年( Java 3年 / C# 4年 / VBA 2 年)

 Bさん(26歳)
   └ 歴3年( Java 3年 )

の2名が候補としてSES企業から紹介されました。

みなさんだったらどちらを採るでしょうか?

このプロジェクトで欲しているのはJava経験者なのだから能力的に大差ない

・・・と思いませんか?

歴が6年も違うのに…保有している技術の幅は段違いなのに…

プロジェクトメンバーとして選ばれる際の評価は大差ないというこの状況は

一人前(目安3~5年)になった後、急激に市場価値(≒収入)が伸び悩む

というプログラマー(というより全てのエンジニア)の前に立ちはだかる壁を表しています。

「リーダーより年上は気まずい」「指示を素直に聞いてくれそう」なんて理由で若手の方が有利になることもしばしばあります


▼なぜ多くの人が「約束の地」にたどりつけないのか

一般的なサラリーマンの場合、係長→課長→部長というように昇進することがキャリアの軸であり、徐々に「デカい仕事をする」「たくさんの部下を持つ」といった具合に業務と組織の責任範囲がある意味勝手に広がっていきます。

企業からの期待に一生懸命応え続けていればサラリーマンは何も考えずとも自然に企業内価値が向上していき、比例して給与も上がっていき、やがて「ローンでマイホーム」にも届くわけです。

一方、技術一本で食っていこうとするエンジニアは、業務と組織の責任範囲を広げにくいため、ひたすら個のスキルを磨き、市場価値を高めていくしかありません

そしてこれも結構重要なことなのですが、世の中の案件は一人前の人(それなりにできる人)向けがほとんどなのです。

ボーっとしてると企業からは市場価値の向上が望めないミドルレベルの案件しか振ってこないわけですね。

自分の時間を使って「高度IT人材」と呼ばれる状態までスキルを磨いたり、手を挙げて高難易度の技術を扱う案件にゼロからやり直すつもりで突撃したりしないと「市場価値の伸び悩み」に絡めとられてしまうわけです。

一人前になると「既に持っているスキル」を使って気持ちよく仕事を続けることができます。周囲からは頼りにされ、求められる成果も出し続けられるようになります。

食いっぱぐれることなく生きてはいけるのですが、その反面成長は止まってしまい、35歳ほどで「あれ?なんか社内での肩身狭くなってきてね?生活苦しくなってきてね?同窓会行きにくくなってね?」となってドロップアウトしてしまうわけです。


▼「35歳定年説」に引っかかる人の特徴

以下の人は「35歳定年説」に引っかかる可能性があると強く意識しましょう。

 ▽主体性がなく、流されるように働いている

技術の獲得に主体的でない方。

どんな案件に関わりたいか主張もしない方。

保有スキルを見て打診された案件を受け身でホイホイ受け続けている方。

サラリーマンと違って主体性が欠如しているとエンジニアとして先細りする一方です。

 ▽技術LOVEでない方

嫌いではないが業務外で勉強するほど技術が好きでない方。

家族など、技術よりもLOVEなものができた方。

 ▽SES(技術派遣)で働いている方

先に言っておくと僕はSES(技術派遣)という業態を好きでも嫌いでもありません。未経験向けのプログラマー就職を支援している身からすると「ありがたや〜」と拝みたくもなる業態です。

しかし一方で、新しいことへの挑戦がしにくい業態、中級者からのステップアップが難しい業態だとも思っています。

エンジニアとしてのステップアップを応援しているSES企業ももちろん多数存在するのですが、業態的に限界があります。(案件豊富で教育環境も整った大企業、積極的に高位のエンジニアとバーターで案件に入れようとしてくれる企業であればかなりのレベルまで成長できるとは思いますが)

技術一本で食っていくつもりならば自分の器が会社の器を超え始めたと思ったら、企業内で「エース」と呼ばれだしたら、転職を考えてよいと思います。(企業からするとたまったものではないのですが、本人のエンジニアとしての人生を考えればやむなし・・・です。)

余談ですが、(意外かもしれませんが)フリーランスもSES同様に新しいことへの挑戦がしにくい業態、中級者からのステップアップが難しい業態だと思っています。

共通点は「既に持っているスキル」を起点として仕事が降ってくる点、未経験な領域で仕事を取りにくい(育成枠になれない、挑戦したいという意志を尊重されにくい)点です。

信頼と実績を先出ししないと案件取れませんからね。社外の人間を育成するメリットなんて基本ありませんからね。

業務外での学習や人脈、営業力・交渉力などをうまく駆使して立ち回らなければ新しい挑戦は難しいでしょう。

まあフリーランスは給与ベースが高いので仕事が継続的に取れてさえいれば大きな問題にはなりにくいでしょうが…


▼「35歳定年説」に引っかかったら?

エンジニアとして輝きが鈍りだし、新しいことに対する気力も体力も能力もなくなってきた・・・

家族のことを想うとキャリアチェンジも難しい・・・

30代半ばでこうなったらどうすればいいのでしょう?

個人的には技術一本をさっさと諦めて「サラリーマンになる」が一番かなと思っています。

一人前のITスキルを持った人間はこの社会では希少な存在なんです。

そのITスキルを引っ提げて必要としてくれるエンジニア以外の場所で仕事をしたらいいんです。

ITスキル × ○○ で生きたらいいんです。

マネジメントしたらいいんです。教育したらいいんです。コンサルしたらいいんです。

ミッション・ビジョン・カルチャーに共感できる企業で、組織のため社会のため仲間のために働いたらいいんです。

僕の中ではSEも立派なサラリーマンなのでSEという肩書になっても、もちろんいいと思います。

コードを触る機会は減るかもしれませんが、社会では余裕で生きていけるはずです。

もしかしたらそっち側で才能の花が開くかもしれませんしね!

「技術は嫌いじゃない」くらいなら寧ろそっちの方が自然じゃないかなと思います。

「35歳定年説」にビビッて立ちすくむでなく、特に若いうちは短期/中期の目標に向けてがむしゃらに目の前のことを、周囲から期待されることをがんばったらいいと思います。

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