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#3: 成長を操作できるドライバーは3つしかないという話

今回は今迄よりも一段レイヤーが高い議論を扱いたいと思います。
そもそも何をすれば企業が成長できるのでしょうか?
もしかしたら、当たり前の話をするかもしれませんが、実務的な観点からは成長のドライバーは3つしかないという話をしたいと思います。


企業における成長とは

そもそも何をもって成長と言えるのかは難しいですが、本稿では、数値的なテクニックではなく、もっと本質的な基礎体力の成長について考えたいと思います。具体的には、中長期的な利益水準の成長を念頭におきます。

”中長期”といっているのは、短期的な利益の向上は、基礎体力の向上がなくても、資産売却等のテクニックで実現できてしまうためです。”利益”といっているのは、それが企業が生む付加価値だからです。売上成長だけであれば、採算度外視で広告費を投下したり、M&Aをしたりすれば実現できるかもしれませんが、それは企業が強くなったから実現できていることではありません。時価総額の成長ということもありますが、市場のモメンタムにも左右されるので、常に適切に成長を測定できるわけではありません。

企業は社会の構成員の一部であり、ステークホルダーとの関係性の中で存在しています。企業は利益を稼ぎ続けることで、継続的に顧客に便益をもたらし、従業員に賃金を払い、投資家にキャピタルゲインを還元し、政府に税金を納めることができます。利益創出が十分でないと、中長期的には市場で淘汰されるので、資本主義社会では利益創出の効率性が高い企業体が生き残っていきます。

成長のドライバー

では、成長をどのように因数分解すればよいのでしょうか?
様々な切り口が考えられますが、ここでは以下を前提とします。

  1. 実務的に操作可能である

  2. 経営である

例えば”運”も成長にとって大事ですが、操作可能ではないので、ここでは取扱いません。また、経営者のトップ営業は大きな売上を生むかもしれませんが、それは経営者の行動そのものであって、経営としてのアウトプットではないので、経営実務としては取り扱いません。

そのように考えると、成長のドライバーは、以下のように因数分解できると考えています。

成長の因数分解

掛け算表記しているのは、①全て一定程度は必要、②1つが突出しているとレバレッジが効く、の2点をイメージしていると思って頂ければと思います。

要素1:戦略

前回・前々回に扱ったように、戦略とは、簡単に言うと現状からゴールに向けた仮説です。戦略があることで、どのレベルに成長させるか、という指針ができます。

事業戦略については上記記事も参照頂けるとありがたいですが、ここでいう「戦略」は事業戦略のみを指しているわけではありません。

事業戦略の前提として、勝負する業界を決める必要があります。例えば、スタートアップの創業であれば、何を創業するか決めないといけないですし、多事業を展開する大企業の場合は、どのようなポートフォリオで勝負するのか決める必要があります。大企業の経営実務では、個別事業の戦略よりも、全社戦略としてポートフォリオ管理を取り扱うことが一般的です。その方が、全体としての成長に寄与できるからです。

どのような業界を選び、その中でどのようなポジショニングをとるのかは非常に重要です。巨大なTAMをもつ業界であっても、参入障壁が何もなければ、結局は大企業との資本の勝負になり、利益が上がりにくくなったりします。個人的には、利益の上がる業界を選定し、その中でユニークなポジショニングをとることが、成長を決定づける一番重要な要因だと思っています。

要素2:組織

とはいえ、戦略がよくても、それを引っ張る人材がいないと成長することはできません。もちろん、人材の個々の能力やモチベーションを伸ばすこと、外から優秀な人材を採用することは成長に寄与しますが、組織的なボトルネックを解消することで全体のアウトプットを増やすこともできます。

組織とは、つまるところ役割分担です。そのため、適切な人が適切な役割(=ポジション)につくことで、組織力が最大化されます。しかし、ポジションが求める要件と人材のミスマッチが起こることにより、組織のアウトプットが下がることがあります。それは人材レベルがポジションの求める要件に満たずにパフォーマンスが出ないこともあるし、逆にポジション要件を上回りすぎていてモチベーションが下がることもあります。

また、役割とは、堅い言葉でいうと責任と権限です。責任と権限はうまくマッチしないといけないですが、権限がないのに責任ばかり求められたり、権限があるのに責任がなかったりすると、組織のアウトプットが上がりません。

このように、組織構造の設計、人材の配置転換、人材レベルの向上、といった施策をとることにより、成長という変数に貢献することができます。

要素3:仕組み

適切な戦略が設定され、適切な組織ができると、最後のドライバーは仕組みになります。良い言葉が見つからなかったので、あえて”仕組み”と表現していますが、要するに、どのような会社を目指し、そのためにどのような制度・ルールを設けるか、ということです。

例えば、ゴリゴリにKPIマネジメントをする会社もあるでしょうし、業務のマニュアル化にこだわる会社もあるでしょうし、イノベーション創出を強みとする会社もあると思います。(もちろんハイブリッドもあると思います。)それによって、どのような仕組みを入れるべきかは異なります。

特に重要なのは、情報の流れです。企業では、外部でも内部でも様々なことが起こるので、日々意思決定の連続ですが、意思決定のためには情報が必要です。適切な情報が適切な人に入るように設計すれば、意思決定の質を上げることができます。

間違えてはいけないのが、事細かな情報を経営トップに入れればよいというわけではありません。意思決定と情報には、”レイヤー”が存在します。経営の判断に必要な情報と、現場の判断に必要な情報は異なります。そのため、どのような情報が誰に入るようにするか、ということを仕組み化しておくことは、非常に重要です。

特にヨコ串プロジェクトなど、組織的に情報ルートが希薄な中で重要な意思決定が求められる場合、定期的に集まる場の設計やアジェンダの設計を工夫することが求められます。この点は、各論になるので、将来的に記事として取り扱いたいと思います。

さいごに

本稿では、成長というテーマで、経営実務として何をすべきかを考えてきました。もちろん、経営には、成長とは別の重要テーマも存在します。例えば、資金調達やコスト削減は重要テーマですが、それ自体が成長というアウトプットに直接影響を与えるわけではないので、今回は扱いませんでした。コンプライアンスといったテーマも、会社を傾かせないためには重要ですが、こちらも成長とは直接的な関係が薄いので、取扱っていません。

今回は全体として、当たり前のことを書いてしまったようにも思いますし、概論的なまとめで1つ1つの内容は薄かったですが、意外とバランスよく成長をドライブするということが検討されていないケースもあるだろうと思い、あえて記載をしました。もちろん、各要素のどれか重要度かについては、会社によってケースバイケースだと思いますし、伸びしろがあるところを見極めることも重要です。

これからも、戦略・組織・仕組みのいずれかに関連があるテーマを取り扱っていきたいと思います。よろしければ、継続的に見て頂けると有難いです。


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