【参加者募集編3】応募者1311名の属性発表
最低生活に困らない金額を人々に提供する代わりに、その私生活データを全て収集してその費用を賄うことに挑戦するExograph。
この実験が明らかにしたい問いは以下の3点。
1. そもそもやりたい人がいるのか。いるとすればどんな人か
2. やる場合に、社会的にどんな批判や問題が生じるか
3. 撮れたデータがどれだけマネタイズ出来るか。
今回の投稿で、第一の問いの答えが出ることになります。
近況報告:1ヶ月が経った
色々ありましたが、まずはメールCC一斉送信に関してご迷惑をお掛けした皆さま、大変申し訳ありませんでした。
メール返信と支払い含めて、12月末までに順次対応させて頂きます。
実験自体は
11/15 応募者締め切り
11/15~11/22 応募者選定・カメラ設置
11/25 被験者宅撮影開始
12/25 被験者宅撮影終了
っといった感じで、予定通りに進んでいます。
ここしばらくはTV、新聞、雑誌をはじめ多くのメディアの方に取材頂く機会に恵まれ、自分で近況報告するよりも良い感じにまとめてもらっていたので、noteの更新がおろそかになっていました、すみません。
被験者宅へのカメラ設置の様子などについてはこちらの記事が取り上げてくれています。
最近では海外のメディアに取り上げられ、英語圏以外の他にロシア・スペイン語圏からの問い合わせやフィードバックも得られており、日本の反応とのニュアンスの違いが見えてきています。
最終的な応募者1311名の属性(10/27~11/15)
近況報告が長くなりましたが、3週間ほどの募集期間で応募頂いた方の属性情報を公開します。
前回報告した11/10と、今回報告する11/15の間には以下のようにTV・新聞イベントが発生しており、そこらへんの影響が出てると面白いと思います。
11/10:応募者約400名
11/11:支給額の増額をPRTimesで発表=>毎日新聞・Yahooニュース掲載
11/12:毎日新聞朝刊に記事掲載。応募者約800名
11/13:テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、AbemaTV「けやきヒルズ」で取り上げられる。
11/15:TBS「グッとラック!」で取り上げられる。
が、結論から言うと大きな変化はありませんでした。
1. 応募人数と男女比
全応募者:1311名(男性:1045人、女性266人)
男女比に大きな差はありません。
10/27~11/10の2週間で約400人の応募があったのに対し、残り5日で追加約900人の応募があったというのは、マスメディアの力だなと思いました。
2. 年齢分布
赤が応募者全体、青が前回報告した11/10までの応募者の年齢分布です。
前回の報告で
もっとマス向けの紙の新聞やテレビなどへの露出によっても年齢分布は大きく変わってくるだろうなとは思う
っと伝えていましたが、引き続き20代~30代前半までの応募者が多い傾向は変わらないようです。
ちなみに最年少16歳から35歳までの人数は応募者全体の80%となります。
3. 職業
こちらも、学生2割、無職1割弱、その他7割強が働いている方という傾向は変わりませんでした。
4. 居住状況
これもほとんど変化なし
5. 年収分布
学生を除いた11/10まで(オレンジ)と11/15まで(青)の応募者の年収分布が以下です。
年収200万円以下の方から応募の割合が減り、年収200~500万円の辺りの方からの応募の割合が増えていますが、総じて変化なし。
前回同様参考までに学生を除く11/15までの応募者全体(青)と、日本全体の年収の分布(赤)が以下です。(参照HP)
20代~30代が全体の8割以上を占めているので、200~400万円の年収層の厚みがあれど、概ね日本の分布に近いのは興味深いです。
6. 実験応募の理由
ここは自由記述なので、数字はあくまでも目安程度に捉えてもらえると嬉しいです。
応募者のコメントをベクトル化、次元圧縮、クラスタリングし、人間が恣意的にそれぞれのクラスタの統合と名付けを行なっています。
ここから、いくつかピックアップしてみます。
6-1. お金が動機の人
最終的に応募動機に報酬のみを記載した人は全体の2割ほどで、それ以外はこの実験への何かしらの興味を持って参加してくれているようでした。
応募動機への記述の中に「金」「報酬」のどちらかのキーワードが含まれている人は全体の4割(541名)だったので、過半数の人はそれ以外の興味によって応募してくれているようです。
6-2. 実験の行く末が気になる
AI・ロボットが発達した未来の生き方を模索するExographの実験として、このような動機はユニークだと思いました。
5年前であればSFや冗談としか思えなかったサービスや価値観も、この数年のAIの進歩と諸外国の発展を見ると
「ひょっとしたら実現してしまうのでは…」
と感じるほどに、年々スピードが増しているのを感じます。
未来を先取りしたこの実験も、妙に実現し得ると思ってしまう人がいるのだと思います。
6-3. 自身の生活が役に立つのか知りたい
今の20代~30代前半はミレニアム世代と呼ばれ、それまでの世代と比べて社会貢献意識が高いと言われています。
そのためか「何気なく暮らしている自分の日常が、誰かの役に立つのなら嬉しい」という趣旨の動機で応募されている方がいました。
また性的マイノリティや精神疾患などを抱えている方から「自身の生活を知ってもらい、同じ境遇の人の役に立てて欲しい」という旨を志望動機に書かれている人もいました。
専修大学の武田教授がこの実験について毎日新聞に掲載されているコラムの一部を引用します。
政治哲学者アントニオ・ネグリとマイケル・ハートのベーシックインカム議論などを交えた、非常に面白い内容です。
こうしてAIとBIの組み合わせや「働かずに生きる」可能性が議論されるようになると、働く喜びや、働くことと結び付けて考えられてきた人間の尊厳がどこにゆくのかも気になる。近未来社会をデザインする時には「人はパンのみにて生きるにあらず」の言葉を改めてかみしめる必要があるのではないか。
「働かずに生きる」状態でも、社会に貢献する喜びや尊厳を保つことのできるシステムが、実はExographなのかもしれません。
6-4. 監視への抵抗感のなさ
割と印象的だったのが「自分のプライベートを他人に見られることに抵抗がない」という回答です。
ウェブ検索による自分の趣味思考、地図アプリを通した位置情報、SNSを通した交友関係、チャットアプリを通した会話内容、ECサイトにおける購買データを始めとして、ほぼ全てのオンラインでの情報を企業に提供している現状に対して、自室の行動情報提供に大きな心理的な壁は無いのかもしれません。
伊藤計劃が書いたSF小説『ハーモニー』では、「プライベート」という言葉はとても卑猥な言葉としてその時代は使われています。
今の時代における「プライベートな情報」は社会の繁栄のためにどんどん共有されていく。社会全体で皆がデータを共有し生活を豊かにする未来において、そこまでして隠したい「プラベート」とは何なんでしょう。プライバシーの感覚は、若い世代を筆頭にどんどん溶けていっているように思います。
今後の課題
1. 今回取得されるデータが1000人~1万人規模で取れた場合に利用したい企業の方と打ち合わせしたい
既に数社から問い合わせを頂いてますが、今回のような動画による自室のユーザー行動データが取れる場合に興味のある消費財メーカーや食品・飲料メーカー、医療や広告代理店といった企業の方と利用方法と具体的なサービス化について打ち合わせをしたいです。
その結果を踏まえ、この実験終了後に実際にサービス化していくかなどを検討したいと思っています。
2. 今回のプロジェクトに興味がある、法律家およびセキュリティ・画像処理(マスク処理・人物検知)・データベース・ネットワークインフラ周りで経験のあるエンジニアの方々と実現可能性を議論したい
自分一人でやれることに限界があることを痛感する日々です。
もし興味を持ってくれる方がいれば、twitterからご連絡頂けると嬉しいです。
3. 1月末の実験終了後に、今回の取り組み内容の展示を検討しており、作品制作を手伝ってくれる方、ギャラリーをお貸し頂ける方を募集したい
多くのメディアに取り上げて頂けている一方で、こちらの意図や結果を正しくより多くの人に届けたいと思い、展示を検討しています。
お力をお貸し頂けると大変嬉しいです。
最後に
取り急ぎExographに応募する人の特徴として、以下のような傾向があることが分かりました。
1. 男女比は4:1
2. 20代~30代前半が80%
3. 75%は有職者、18%は学生、7%は無職
4. 年収は概ね日本の年収分布に近い
5. 純粋に金銭だけの応募動機は2割弱、残りはこの実験に対する好奇心や社会貢献意欲など
結論:Exographは若い世代には受け入れられ得るコンセプトだった
皆さんの予想と比べて、どうだったでしょうか。
色々と意見頂けると嬉しいです。