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「未来と芸術展」は最高に面白い

森美術館で開催されている「未来と芸術展」に行きました。様々な刺激がいっぺんに受けられてくらくらするくらいなのですが、面白かったので概要を記録しておきます。本展示は5つのセッションに分かれていますが、全て興味深い内容です。本展示のキュレーションは森美術館の館長、シンガポールのアートサイエンスミュージアムの館長が参画しており、展示の順番や中身のチョイスが秀逸だと感じました。以下それぞれのセクションの概要になります。

1.都市の新たな可能性

1.はいわゆるスマートシティをテーマとしています。世界で実際に進むスマートシティプロジェクト、コンペでかけられたプロジェクトアイデアなどが並びます。サステナブルな居住空間のデザイン、サイバー・フィジカルの連携によるデータを活用した都市インフラ、トップダウンでないレジリエントな都市の拡張などがテーマになっていました。
個人的には会田誠のNEO出島がシュールで面白かったです。またアリババのマーケットプレイスでの購買データをマップに3Dでビジュアライズした展示も興味深かったです。

2.ネオ・メタボリズム建築へ

2.は建築におけるマテリアル、工法の革新が展示されています。ドローンによる建築、3Dプリンティングによる建材のデザイン、生物が分解可能な素材の活用、藻類や植物と建築の一体化による持続可能性の強化などです。
NASAが火星で居住空間を建築する際のシミュレーションが圧巻でした。ホテル全体を植物が覆い、空中庭園を持つシンガポールOASIAホテルのコンセプト展示があり、近くに住んでいたので懐かしかったです。

3.ライフスタイルとデザインの革新

3.は食や衣服の革新、ロボットとの共存などがテーマになっています。虫食や人工タンパク質、3Dプリンティングを利用した調理や、服の製造、自動運転、ロボットの倫理的判断について展示されています。
電通による3Dプリンティングの寿司店のコンセプトは面白かったです。

4.身体の拡張と倫理

4.では身体に障害を持つ人にとっての擬似身体、バイオ3Dプリンティングによる身体器官の製造、能力を拡張する形でDNAを改変した子供などについて取り上げられており、拡張する身体の有用性と倫理について問うています。やくしまるえつこの人類が滅んだ後にそこに人類が存在したことを示すための歌と微細生物によるインスタレーションは興味深かったです。

5.変容する社会と人間

最後に5.ではテクノロジーの進化とともに問題になる社会や人間のあり方について取り上げています。ボットによるフェイクニュースがツイッターで拡散された際の市民の反応、老人の終末を見とるロボット、人工授精を通じて子供に親が3人いる家族、常にカメラで監視されている社会、人の感情をいやすアートをFlickrのデータからAIが生成するインスタレーションなど社会の「当たり前」が変わり、人間のあり方が変わっていくことを投げかけています。

体験型の展示が多いため、ぜひ自分で行って感じてみてほしい展示です。本展示で示されているテクノロジーがもたら社会の変容について、すでに投げかけられている問いは顕在化しているものも多いと思います。これから5年くらいでその解像度は更に上がっていくのではないでしょうか。

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