Hiroki Yoshida
ケネディスクールセミナーから見る海外のデジタルガバメントの課題と日本への示唆
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ケネディスクールセミナーから見る海外のデジタルガバメントの課題と日本への示唆

Hiroki Yoshida

6/9から6/11までケネディスクールとPublic Dgital共催によるDigital Service Convening2021が開催された。自分が留学時代にお世話になっていたDavid Eavesに声をかけていただき、Next wave of digital service unitとして経産省の取組を紹介した。

2010年代に英国GDS, 米国USDS、エストニア、カナダのCDSなど様々なデジタルサービスユニットが立ち上がり、そのムーブメントがあった中で日本やその他登壇した各国をNext Waveとして位置づけ、そのチームがFirst waveに何を学んだかが紹介された。

Davidには留学中の授業で本当に色々な学びの機会をもらっていたので、彼も感慨深かったようだ。特に我々経済産業省の動きとしては事業者向けのサービスにフォーカスして取り組んだ戦略が評価された。ターゲットを事業者にしたことにより、個人手続で生じるプライバシーの問題等を避け、素早くサービスのリリースまでたどり着くことができたということが注目のポイントだった。本イベントでも様々なインプットや気づきが得られたのだが、いくつかポイントを挙げてみたい。

多国間での政府システムオープンソースの共有

オープンソースの活用による政府システムの開発速度の加速が海外では進んでいる。例えばGOV.UK Notifyという英国の通知サービスはブラジルなどもオープンソースを活用してデプロイしている。

また、UKの調達ポータルであるDigital Market placeもオーストラリアやカナダなどによってソースコードを活用して作られている。

その他エストニアのXroadやインドのインディアスタックなども途上国中心にデジタルインフラ構築に活用されている。


こうした事例はデジタルインフラとしてのソフトウェアは国を超えた公共財として機能しうることを示している。特にまだデジタルインフラが整備されていない途上国においてはこうしたオープンソースの活用によってリープフロッグを達成できる可能性がある。先進国より途上国の方が先にデジタル化が進むといったシナリオは十分にあり得る。

オープンソースの利用に関する2つのあり方

オープンソースについては1)既に存在するオープンソースのソフトウェアをいかに活用していくか、ということと、2)自分たちの開発したソフトウェアをいかにオープンにしていくか、の2つを分けて議論していくべきとのコメントが挙げられた。
1)については、オープンソースソフトウェアをフォークしてサービスを開発した後のメンテナンスをどう考えるのか、その成果をいかにコミュニティに還元していくかもセットで考えていく必要がある。
2)についてはソフトウェアのライセンスをどういった位置付けにするのかや、実際にGithub等にプロジェクトを立てる場合、いかにコミュニティを発展させ、継続的に維持していくのか、体制を整備することが必要となる。
いずれの場合にも行政内部に継続的にこれを維持していけるメンバーがいてこれをサポートするコミュニティとの連携を通じて進めていくことの重要性が語られた。

Big ITからSmall ITへのシフト、アジャイルな開発体制への移行

IT調達の見直しにおいて、デジタルマーケットプレイスのようなITスタートアップ、中小ITベンダーも登録できるオープンなベンダー登録システムを構築し、大手ITベンダーに限らず、中小のベンダーにも政府調達の間口を広げたことで、英国では大手18社が8割のIT調達を行っていた状況から調達の分散化を進め、数10億ポンドのIT予算を削減したことが事例として挙げられた。一方でこうした調達を行うには、中小ベンダーでも参入しやすいシンプルな調達プロセスが必要であり、この点はデザイン思考による調達プロセスの見直しを通じてなされたとしている。
加えて、大手ITベンダーへの依存は、行政サイドのナレッジの不足から生じるものであり、内部にIT専門人材組織を抱え、彼らがベンダーの能力を正確に把握してともに開発できる体制が重要であるとされた。アジャイル開発を行う場合もベンダーサイドだけでなく、行政サイドにも知見を持った人材がいて共に開発できる体制を持っていることが重要であることが確認された。

行政組織内のデジタル推進組織と既存のIT組織間のコンフリクトをどう解決するか

デジタル化を推進する組織の行動規範がすぐに既存の組織内のIT部門に理解されず、改革が進まないケースがあることについて、どのような対処をすべきかということが議論にも上がった。この点についてはトップダウンによる組織内の権限の見直しとボトムアップでのチームの融合の重要性が確認された。デジタル化を推進していくためにはデジタル化推進組織に権限を与えるだけでなく、既存のIT部門にも考え方を共有して同じカルチャーを創出していくことが重要である。こうした取組は地道なものになるが、こうした場面でこそチェンジマネジメントのリーダーシップが問われることになる。

日本のデジタル庁立上げに対する注目とこれから

日本におけるデジタル庁立上げについても各国政府も注目していることがわかった。海外諸国のデジタルガバメント を進める担当者間では様々なネットワークが出来つつあり、こうしたネットワークに日本政府もコミットしておくことは今後日本のデジタルガバメント の取組を進めていく上でも重要になるだろう。
政府のデジタルインフラにおけるオープンソースの利用等が進んでいくと、今後デジタルサービスのクロスボーダーでの相互運用性が求められる状況が生じていくと考えられる。政府を介する移住やビジネス手続のクロスボーダーでのやりとりがデジタル化していくと、法制度だけでなく、デジタルサービスレベルでの国家間の相互運用性確保ができているかが国家の競争力にも影響するということだ。国家間のシステム間でのデータ流通が標準化されている方が、それだけやり取りが早くなり、経済関係や国家間の関係も密になっていく。これはデジタル上でのブロック経済化が生じる可能性もはらんでいる。このため今後国際標準に乗れるようなデジタルインフラ整備がより重要性を増してくるだろう。その波はまずはワクチン の接種証明で来るかもしれない。
そうした事態が来ないとしても、こうしたデジタルガバメントを進める国々による国際的なコミュニティに参画することで学べる価値は大きいだろう。

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Hiroki Yoshida
行政のデジタルトランスフォーメーションに従事。 東大公共政策大学院、シンガポール国立大学MBA,MPM、ケネディスクールフェロー修了。 「行政をハックしよう」発刊 https://www.amazon.co.jp/dp/4324110263