石垣島日記 ①
3月、海斗さんと共に、石垣島を訪れました。
帰りの飛行機の中、日記を綴っていたら、
とても長くなってしまった。
2回に分けて投稿します。
読んでいただけたら嬉しいです!
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飛行機から石垣島を望むと、美しい浜と、
陸上には水田や畑が広がっていました。
時間と、蓄えの少ないお金を割いて成田から飛んできた。
この島の姿を見たとき、間違えなく、
その価値はある旅になる、いや、なった、
という安心感みたいなものが、沸いてきました。
石垣島は、
本州ではなかなか見られない野鳥たちが、
旅の途中に立ち寄っていく場所として有名です。
ここなら餌がある。
旅路の途中にあるたくさんの野鳥たちが、
空からこの島を見て立ち寄ろうと考えるのも、納得がいきます。
石垣島は、里山の環境が充実した場所でした。
水田や畑が広がり、小さな山との境には、
田と森が入り組んだような場所があります。
そこには鷹が棲み、田や水路にいるカニやカエルに狙いを定めています。
夜、その田んぼはカエルたちの鳴き声で溢れ、
隣の森では、フクロウの仲間たちが鳴き交わします。
生き物好きとして、
自分のフィールドから離れた場所で、
出会ったことのない種に出会うことは、
とても楽しい。
久しぶりに、はしゃいでしまいました。
例えば、石垣島では、国内で200羽ほどしかいないとされるカンムリワシが棲んでいます。「フクロウの仲間」と先述したのも、リュウキュウコノハズクやリュウキュウアオバズクといった、見たことのない鳥たちでした。そして、その数もすごい。コノハズクは、本州ではなかなか出会うことのできない夏鳥です。石垣では、リュウキュウコノハズクが、夜、何度も頭上を飛びました。彼らの密度が高い場所では、交尾のシーンも見ることができた。生態の全貌の観察が難しいフクロウの仲間が、たった1日でここまで観察できるのは、個体数の多い証拠のようなものでしょう。
そして、最も衝撃的な出会いは、そこに住むある哺乳類との出会いです。
満月の夜、石垣の林は生き物の気配で溢れていました。前述のコノハズクはもちろん、野生化したクジャクや、オオクイナというツルの親戚に当たる鳥が、激しく声を上げます。慣れない土地の、それも夜の林でその気配に触れるのは、どこか不気味なものがありました。
好奇心と不安感のせめぎ合い。突然、何かが出てきて攫われてしまってもおかしくないような、自分のフィールドでは感じることのない、漠然とした恐怖心。ドキドキしながら鳥たちを探していると、突然、大きな何かが、目の前の木に止まったのです。カラスくらいの大きさだ。じっと見ると、向こうもこちらを見つめ返していた。どこか、僕たちを揶揄うような表情で、木にぶら下がり、逆さになって。
ヤエヤマオオコウモリ。
石垣に棲む、大きなコウモリです。
不思議な魅力と、見つめ合うことの不安感。
こんなのがいるのか。
小学生の頃初めてコミミズクに出会ったあの時、
初めてプランクトンを見て、
その独特な姿に驚いた、あの時の感情が、
蘇ってきたようでした。
そのほかにも、カタグロトビ、オオノスリ、ムラサキサギといった野鳥たち。
出会うたびに、海斗さんと共に黄色い声をあげていました。
自然は、
いつも新鮮な感情を与えてくれるものです。
大きなコウモリ、と、
頭の中で思い浮かべていても、
いざ実物を目の前にすると、
違和感や不安感、そして高揚感が、
純粋な驚きとして湧き上がってきます。
この感情はきっと、
言葉や思い込みでは、全く替え用のない、
無意識のうちに出来上がった自分の「常識」が、
強制的に壊される音みたいなものなのでしょう。
北にはホッキョクグマやハイイロオオカミ。南にはカンガルーやトラや、その他様々な生き物たち。まだ、出会っていない存在が、この地球上に溢れています。そして、彼らを一眼見るだけではわからない、彼らの営みが、複雑に絡み合っているのでしょう。あのコウモリだって、きっと追い続ければ、そこにはまた様々な感情を芽生えさせる営みが、あるはずです。
一生のうちに、
どれくらいの自然を見られるか
わからないけれど、
できるだけ、多くの驚きに出逢いたい、
と渇望しています。
けれど、目新しいものに心をときめかせつつも、
僕が感じたのは、
自分のフィールドの自然に
もっとしっかり向き合おう
ということでした。
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次投稿に続きます。
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