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ダイキン井上会長から学んだこと

30年間ダイキンを率いられた井上会長の退任発表がありました。

驚きとともに、過去を思い出し、様々な想いがめぐりました。その中で、井上会長から、多くの影響を受けたなということを改めて感じました。

50歳以上も年も離れ、立場も離れた私みたいな一社員ですら、たくさんの影響を受けたのです。それ自体がすごいことです。

この振り返りで感じているものを、いま言葉にまとめないと、この感覚が薄れていってしまいそうな気がしたので、書いておくことにしました。

また、経営者としてチャレンジさせてもらう中で、井上会長がおっしゃってたことの意味を、昔の自分よりも少し深く感じることができるようになったのではないかという想いもあります。

まだまだ本質にたどりつけていないと思いますが、
現時点の自分の学びを残しておこうと思います。

井上会長との出会い


私がダイキンの新入社員1年目のときです。
経営幹部が集まる会議がマレーシアであり、私は空港で車を手配する係でした。そこで少し挨拶させていただいたというのが最初の出会いです。

その1-2ヶ月後、なぜか分かりませんが、夜ご飯を食べようと会長に呼んでいただきました。(空港での一瞬で、私のあふるる才能を感知したのかもしれません。笑)

その食事会で、"将来どうなりたんや?"と聞かれた際、
"経営者として勝負したい"ということを伝えたら、
"俺みたいな経営者になりたいんか?"と聞かれ、
"違います!"と即答し、大変失礼な回答をしたことを今でも思い出します。

その後も、お前みたいなやつはすぐ会社辞めたがるから、辞めるときはちゃんと言いに来いよと、こんな一平社員まで気にかけてくれました。

1. 人への興味とこだわり

ダイキンは人を基軸とした経営というものを掲げていますが、井上会長の人への強い興味・こだわりがあってこそ、体現されている経営思想です。

大企業の社長でこんな一人ひとりの社員に対して、興味をもち、向き合おうとする想いをもった方はほぼいないはずです。また、そう向き合ってもらえたら、人はうれしいものです。

私もBaridi Baridiというエアコンのサブスク事業を立ち上げ、経営者として、チャレンジをさせてもらっていますが、ここは一番影響を受け、こだわっている部分です。

現在、全従業員50名ぐらいの会社になりましたが、
どのポジションの採用面談にも参加するようにしています。

その面談の中で、その人が
どういう人生を歩んできたのか?
どういう考えで物事に取り組んできた人なのか?
どういう将来の夢をもっているのか?
などをできるかぎり理解したいと思っています。

もちろん、一人ひとりじっくり話すので、時間もエネルギーも必要ですが、そこの根底を理解したうえで一緒に働きたいのです。

また、入社後の育成方針についても、影響を受けています。
井上会長の言葉で、"心の持ち方で人は変わる"という言葉があります。

Baridi Baridiでは、"Daily Mindset" という言葉で伝えています。
①"日々の心がけ"を大事にしてください。
②リーダーはスキルではなく、あなたが大事にする"日々の心がけ"を対話ベースで伝えてください。の2点を伝えています。

社内向けの文章(一部抜粋)

抽象的な話なので、分かりやすくするために、携帯のOSとアプリによく例えて話をしています。"Daily Mindset"はOSや、"Skill"はアプリや。OSの部分がしっかりしてないとどんな良いアプリもちゃんと動かへん。

ますは、"OS"の部分を大事にしようと、対話の中で話をしています。

"人への強い興味とこだわり"というものは、なかなか数値として、見にくいものです。ですが、中長期的には、大きく会社を変えていきます。Baridi Baridiは事業開始から、4年目になりますが、その大切さを実感しています。

2. 思考の振り子

井上会長は思考方法について、"振り子"の例で話すことが多いです。

"ものごとを思考するうえで、"肯定"と"否定"の振り子をふって考える。その思考の中で、正しいと思える方向を見つけ出す"と言われています。

一見、簡単そうに見えますが、全く簡単ではありません。

井上会長がこれを自然にやり、正しいと思える方向を見つけ出されています。井上会長が議論をリードされているときの姿と自分自身の経験を重ね合わせると、その答えを出すために大事なことは3つあると推察しています。

1つ目は"問いの立て方"です。
自分だけで正解を答えを出す、思考を深めるには、限界があります。そのためには、人との対話が必須です。

その対話の質は、
"誰に"、"何を"、"どのように"、質問するかで大きく変わってきます。

例えば、適当に人を選び、どう思う?何かいいアイデアない?みたいなふわっとした問いでは、対話の質は深まらないです。(私も意識していないとたまにこういうことをやってしまうので、よく反省しています。)

2つ目は"対話をする人との信頼関係"です。
当たり前のことですが、ここがなければ、対話自体が成り立ちません。
信頼関係というものは、一朝一夕で築けるものでもないですし、崩れるときは一瞬で崩れます。

ここについても、自分自身が未熟さを感じることが多いです。日々精進し続けるしかないと思っています。

3つ目は"リーダーの必死さ"です。
なんとかせなあかんと必死になれば、新しい思考はうまれます。納得のいく答えを出し切るまで、必死にやる、考える、中途半端に出した答えに甘えない。精神論ですが、これはとても大事です。

井上会長が人に話をするとき、問いをなげかけるときは、かなりピリッとし、みんな真剣な表情をします。そして、その真剣な議論の上で、答えを出します。

だからこそ、正しい方向性を決めて、実行までもっていけるんだと思います。

3. 1対1 / 1対10/ 1対100で話せるか?

"リーダーは人と1対1、1対10、1対100のそれぞれ話せるようにならないといけない"と井上会長はよく言ってました。(*1対100とは、100人に向けて話すという意味です。)

一度やってみたら分かると思いますが、それぞれで対話のあり方が違います。それぞれ違った難しさがあります。例えば、1対10で話していることを、そのまま1対100で話しても、全く伝わる言葉にならないのです。

"思考の振り子"のパートで書いた対話のあり方ももちろん大事です。それだけはなく、リーダーにとって、それぞれの場面で、自身の言葉を届けきるということは大事な仕事になります。

私自身も、なかなか上手くならず、日々試行錯誤しています。その中で、大事だと思うことは少しづつ分かってきたような気がします。今は特に以下の2つを大事にしています。

1つ目は、"事前準備をきっちりする”ということです。
・相手はどういう人であるのか?
(どういう想いがあるのか?/どういう状態にあるのか?)
・何を伝えたいのか?
・伝えたい言葉をできるかぎり分かりやすい言葉にできないか?

2つ目は、"一言に気をつける"ということです。
自分の意図したこととは異なって、受け取られることはもちろんあります。誰が聞いても、ネガティブな思いをしないように、事前にメッセージの内容をを相談したり、一言一言に細心の注意をはらって話すようにしています。例えば、間違った一言で、信頼関係が崩れれば、それ以降、正しいことを伝えたとしても、その人に伝わらなくなります。

(ちなみに、Baridi Baridiでは、毎週月曜日の朝8時から朝礼があり、社員50名全員に向けて話をします。日曜の夜から、今週は何をみんなに話そうか?と準備をするのですが、なかなか憂鬱な日曜の夜です。笑 )

そうした気付きをもとに、井上会長の話をされている姿を思い出すと、シンプルに本質的な話をし、分かりやすく、聞きたいと思える話になっているし、心理的にネガティブに響くような言葉もありません。

本人にお聞きしたがことがないので、
リーダーとして、どう言葉を伝えようとしているのか?伝えるために大事にしていることは何なのか?一度聞いてみたいです。

感謝とこれからについて

2020年以来、コロナ禍もあり、お会いすることができていません。 こんな生意気な若手社員にチャレンジを任せてくれていることへの感謝を伝えることができなかったのが心残りです。(あと、上に書いたことは一部で、経営者として聞いてみたいことが今はいっぱいあります。)

そういったことはコントロールできないことですが、この事業を成功させる、学ばせていただいたことをどんどん実践していく、周りの人達に伝えていくといったことは私のできることですので、感謝の想いを胸にやっていきたいと思います。

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