38歳になった
ごおおおという音と揺れで目を覚ました。
ここはシェアハウスの庭にある車の中。軽バンの後部座席を倒して寝袋で朝をむかえた。
1月に友人から購入した車で泊まりはじめて半月が経った。
車の窓から見える空は青く、今日はとても天気が良い。
車体が揺れるほどの風の強い日だ。
誰もいないシェアハウスのキッチンに入り、冷凍されているパンを焼き、黒ごまのペーストを塗って簡単な朝食を済ませた。
38回目の朝を迎えたわたしは今、人生でもっともお金がない。
ついでに言えば、お付き合いしている彼女もいなければ、家も無い。
でも、人生でもっとも心が安定しているのがいまだ。
10代の頃、先行き真っ暗な将来の恐怖心で萎縮していた私は不安まみれだった。
20代は忙しく働くなかで、対人への不安に苛まれた。
30代は、2年の旅へ出て貯金が減り、お金の不安に悩まされた。
30歳後半になり、将来への不安は消え、対人は苦手だが恐怖を感じる事もない。貯金は無くなってみるとその不安も消え失せた。
現状、結婚はしていないし、子供もいない。
大きな事業を成した訳でもなく、社会に貢献する活動もしていない。
何の役にも立たない38歳のおっさんだ。
そんなおっさんであるが、自然を愛する心はあるし、変化を恐れず楽しめる心がある。
写真を撮るのが好きで、街をのんびり散歩するのが好きだ。
英語も出来ないのに海外を2年も放浪した行動力がある。
趣味としていたカメラを仕事してお金を頂けるまでになった。
10代から20代で自己否定を繰り返していたあの頃と大きく違うのは、どんな自分も受け入れる心を持てた事だ。
結婚してないのはダメじゃ無いし、子供がいないのはダメじゃ無い。
お金が稼げていない事もダメじゃ無い。
他人も自分も、いろんな人間であって良い、と思える心を持てるようになった。
この年になって、ようやく自分を満たす事が出来つつある。
自分を好きになってきたということだ。
次の一年は、相変わらず自分を楽しませつつ、現在の課題でもある「お金」を稼ぐ年にして行きたい。
稼いだお金で、畑や小屋を手作りして暮らしを作る。
余ったお金は、身近な友人達の小商いに使い循環するのがいいだろう。
楽しみな未来が見えてくる。
2018年2月12日
千葉県金谷のシェアハウスにて