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美しいかんざしはお好き?~うんちく編

ごきげんよう、都花です。
長い梅雨が明け、ようやく夏らしくなってきましたね。
夏の激しい暑さが苦手な私ですが、今年は長雨のせいで発生していたカビとの闘いを繰り広げていましたので、煌めく太陽が嬉しいです。

久しぶりに窓を全開にしますと、薄青の空、モクモクして美味しそうなフォルムの雲、濃く萌える緑の香り、蝉の鳴き声アンサンブル……そして額を伝う汗

暑い。暑すぎる。
少し前まで母とのほほんと言っていました。「今年は涼しくて過ごしやすくて、いいわね~」
当たり前だよ雨降ってたんだから。 

現在私はロングヘア―でして(美容院を自粛している為)髪が首にへばりついて熱さも倍増です。髪を結わくのですが、ポニーテールも髪が長いと首に髪の尾っぽがチクチク刺さるのが気になるのです。
そこで秘密兵器の登場ですよ。簪(かんざし)です!

簪と言えば、どんなものを想像しますか?舞妓さんがつけているヤツ?それとも花魁のつけた派手なヤツ?そこまで派手でない江戸時代のお姫様みたいなヤツですかね?
どれも素敵です。私は幼少期から大河ドラマを見て育ちましたので、昔のお姫様みたいなもの、憧れがありますよ。

かんざし今昔

簪は女性の髪を飾った「髪飾り」ですね。
江戸時代。平和が続く太平の時代と言われます。平和とは、言い換えれば退屈です。そうすると退屈を紛らわすため、様々な文化が生まれます。ここで言う文化とは、例えば娯楽とかファッションとか、楽しい事ですよ。
江戸時代では大衆文化も盛んです。女性のファッションもその一つ。日本髪が多様化し、そのため女性の髪を飾る簪も様々なものが生まれ、流行しました。
京都で作られた花びらモチーフの「花びら簪」をはじめ、細身ものもや幅広のものなど様々な形、素材も象牙やべっ甲、金や銀など多種多様です。櫛形もありますね。ちなみに上の画像は、「花びら簪」が江戸に伝わり発祥したと言われる「つまみ簪」です。

この簪ですが、実は歴史は古く、縄文時代まで遡ることができるんです。
なんでも、そのころ日本では「先のとがった一本棒」に呪力が宿るといわれており、その細い棒を髪に挿すことで魔をはらうことができるとされていました。素材は確か、石もしくは骨。北海道か東北の遺跡で出土していたはずです。男女共に挿していました。これが「髪挿し」です。

奈良時代になると、中国から様々な文化が入ってきました。簪もその一つです。横長の櫛や金属で作られた二本足の釵子(さいし)という髪留めが「簪」という漢字を書き、「髪挿し」から「かんざし」と読むようになったのですね。
ただ、今回自分の知識に一抹の不安があったので、笑
ネットで調べたところ、語源がもう一つ。平安時代の男女の、髪に花を飾る習慣から「花挿し」(かざし)が転じて「かんざし」になったという説。源氏物語にも記述があるとか。
どちらが正しいか私には分かりかねますが、歴史的には中国説、ロマン的には平安説、が好きですね。「花挿し」なんて素敵ですよね。実際花モチーフは多いですし。

ただ、その平安時代ですが、平安時代の女性の髪って想像できます?
ながーい髪、背に垂らしてませんか?笑
「垂髪」っていうんですって。その頃に一度簪は廃れているんですよ。
流行ってそんなものです。文化が移り変われば消えゆくものもある。

ところが、鎌倉時代から室町時代にかけて簪は復活します
庶民の女性が働く際邪魔にならないよう、ポニーテールやお団子みたいな髪型をするようになり、その髪留めとして用いられたのです。あと歌舞伎を演じた出雲阿国が若い衆の真似をして髷を結ったのがきっかけ、なんて説もあるみたいです。

なんにしても、女性が髪を上げるようになり「日本髪」と呼ばれるものへ移行する際に、女性の髪飾りとして復活したのですね。男性の髪飾りはこの時復活しなかったのでしょう。

余談・かんざしの使い道

男性は髪飾りをする習慣が消えた、と書きました。
しかし江戸時代、まだ廃れていない地があったのです。
それが琉球王国です。
その簪は「ジーファー」といいます。スプーンみたいな形をしていて、男女共に着用していました。身分によって素材に違いがあって、王族など身分の高い人が金(その他細かい規定がある模様)、一般武士が銀、平民が真鍮、卑しい身分が木。
一目で階級が分かる仕組みだそうで、なかなかシビア。

そのジーファーですが、髪飾りではない用途がありました。武器です。
女性が唯一持つことができた武器なんだとか。リアル・必殺仕事人。
襲われた際に相手に突き刺して逃げる、が基本戦術。
また、見えにくいことから暗殺用として用いられたと。だから寝所で女性は(暗殺防止の為)髪を下ろすのですね。寝所は簪の持ち込み不可。
また本土でも江戸時代において、武家階級では固い金属の簪を用いていたことから、護身用として娘に持たせていたと言います。


またその江戸時代、先端に耳かきのついた簪も登場したんです。
実際耳かきとして使用していた説もある一方、ぜいたく品を禁止する法が度々発令された為「簪はぜいたく品ではなく実用品である」という言い訳に使っていた説もあります。
くるしい言い訳!でも実際それで逃れているらしいので、案外法もゆるいですね。

そして現在のかんざし

そして、明治時代になって西洋化が一気に進み、女性の髪も日本髪から洋髪へと移り変わり、花柳界以外で再び簪は衰退しました
これもまた、仕方のない事です。

現代で、和服を着ている人は一部の職業の方以外、とても少ないですから。簪の出番は、せいぜい浴衣を着た時くらいでしょう。その浴衣も、今年は祭りや花火大会が全国的に中止が相次いでいますので、着られる機会はないでしょう。

しかし

しかしです。実は一本の棒だけで髪をまとめることの出来る簪は、とても便利なものなのですよ!
それこそ、農民の女性が邪魔な髪を結いあげる時に使うくらい。
しかも、最近は洋服にも合わせられるヘアアクセサリーとして復活してきています!
素材も、べっ甲とかではなく、ガラスやビジューや天然石をあしらった綺麗なものが多いです。

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こんな感じです。どうですか?洋服にもつけられそうじゃないですか?
飾りが少ない物でしたら、邪魔な髪を一括りする便利グッズです。
今回はうんちくが長くなってしまったので、次は現在の簪の種類なんかを、ぜひ紹介したいです。需要があればいいのですが。笑

あなたさえよろしければ、またお会いしましょう。

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