メモ書き 木庭顕『クリティック再建のために』/第Ⅰ章 クリティックの起源 2 出現 ―①
〔自分のための読書メモ。自分用手控えのため私見が混入しているので、同書を必ず参照いただく必要があります。加筆修正中です〕
木庭顕『クリティック再建のために』講談社選書メチエ,2022.
〇クリティックの誕生
原クリティックⅢのエクステンションにより、政治的決定手続が生まれた。これに、ある決定的な変形が加えられる。政治という営為が発展し、その重要なヴァリエーションとして、「デモクラシー」が生まれる。
「クリティック」は、デモクラシーの内部において、原クリティックⅢが新たな質を獲得する、ことによって生まれた。
〇イオニア
ギリシャ世界において紀元前6世紀の最後の3分の1の時期は、デモクラシーの生成期である。
クリティックは、哲学や歴史学とともに紀元前6世紀の最後の3分の1の時期に生まれた。
〇デモクラシーの思考手続
政治的決定手続:ディアレクティカ
デモクラシー:クリティック(ディアレクティカの前提に要請される手続)
〈政治的決定手続の場合〉
論拠P(所与のパラデイクマ)、これを原クリティックⅢの作用により、論拠P'へと展開する。論拠P’が、政治的決定内容たるQを導く。
この場合、Pの採取・選択には制限がなかった。論拠の限定は、権威の承認を意味するから、認められないからである。
*例えば、長老の箴言集に論拠が限定されてしまえば、長老の権威が樹立してしまう。巫女の神託のみが論拠になりうると限定されてしまえば、巫女ないし神意が権威となり、議論の実質が致命的に損なわれる。
〈デモクラシーの場合〉
ところが、デモクラシーにおいては、論拠の限定が行われる。
論拠Pに資格を要求する。この資格を欠くものを論拠から排除する(つまりはじめからPにならない)。
この論拠たろうとするパラデイクマを識別する、論拠たりうるものとそうでないものを識別するという要請に対応して、クリティックという思考作業が生まれた。
では、その資格要件とは何か?
それは、既に一旦ディアレクティカを経ているということ。
pを原クリティックⅢによってp´へともたらし、そこからパラディグマティックに導いたq。当該論拠の素材候補Pは、このqたる性質を有しているかどうかが吟味される、ということである。ディアレクティカを二段にすることと同義である。
この二段のディアレクティカに、一層深化した個人の自由、高度な個人の自由が懸かっている。
【メモ】
・人々の意識や思考様式(ディアレクティカ、クリティック)の変化と、社会における諸制度(政治的決定手続、デモクラシー)との連動なり影響のさせ方に特徴がある。
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