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笑顔

入院生活から

半年間の入院中、後半はリハビリの為もあり毎日出来る限り病棟の回廊形式になっている廊下をグルグル歩きました。初めの内は車椅子、次に歩行器、そして杖を使って回廊型になっている病棟を回りました。同じ場所でも回る方向を変えたり、たまに別の病棟まで行ったりと工夫して、兎に角少しでも上手に歩けるように努力していました。

同じところを歩いているので当然その時に出会う入院患者や病院関係者はほとんどが毎日何回も出会う同じ人達です。お互い顔見知りのわけですがそういう時、笑顔で挨拶してくれる人もいれば、毎日ふてくされて目を反らす人もいます。

場所が病院ですから入院患者でさほど楽しい事が無いのは分かりますが、挨拶もせずに仏頂面しているのは大きな損失だと気付きました。笑顔で挨拶してくれる女性などと会うとそれだけで嬉しく元気をもらったような気がしたものです。そこで気付いたのは、自分自身も仏頂面した歩行困難なオッサンだった事です。

それからは表情に気を付けて誰に対しても笑顔で、できればひと言声を掛けるようにしました。すると様々な人と話す事が出来ました。そして何よりも今まで優しかった看護婦さんたちからも、更に優しく接して頂けるようになりました。入院生活のレベルが一段も二段も上がったような気がしました。

『幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ』とフランスの哲学者アランはいいました。

愛犬との散歩の時

退院から一年ほど経った頃、生後2か月の子犬をペットショップから買いました。子熊の様なかわいい表情だったので、ロシアで有名な子熊の『ステファン』と名付けました。ロシアでは熊やライオン等の猛獣をペットとして飼う事は合法らしいです。免疫が出来る生後3か月を過ぎる頃から毎日朝と夕方、自分の歩行訓練も兼ねて一緒に散歩に行きます。

すると、毎日散歩中の同じ人や犬と出会い、人懐っこいステファンのお陰ですが、結構人間同士の会話もはずみます。道での立ち話だけですが、病院での経験もあり初対面の人達とも自然に笑顔で接するようになりました。

ある時ベビーカーを押す女性が近づいてきました。その時ベビーカーに乗っている赤ちゃんと目が合いました。その赤ちゃんは手足をバタバタさせ、とてもご機嫌な様子で、その無垢な笑顔につられて僕もほほ笑んでしまいました。これはステファンの笑顔が初めのきっかけになったのだと思いますが、笑顔には笑顔を引き寄せる効果があるようです。

辛い事が続くと笑顔が減ってしまいます。しかし笑っている余裕がない時ほど本当は笑顔が必要です。笑顔は楽しさや嬉しさを表現する以上の効果があります。『笑いに勝る良薬無し』ということわざがあるように、昔から笑う事は体にいいとされています。

医学の世界では『笑い』の効果に注目した研究が進められているそうです。まだ解明されていないメカニズムも多いのですが、『笑うと免疫力がアップする』『笑いのリラックス効果で、自律神経の働きが安定する』『脳の情動を司る部分が活性化し、ストレスが和らぐ』などの実験結果が報告されています。

この効果を活用して患者の免疫力を上げる為に落語の会を開催する病院があるくらいです。笑いは幸せの源、毎日にっこり笑って、心身ともに健康を目指しましょう。

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