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人材育成

半年の入院を通じて会社の存続には人材育成と組織作りの大切さを思い知りました。自分が動く事が難しいのですから、誰かに頼む以外に仕事は進みません。

松下幸之助さんは、ご自身の体が弱かったので社員の人に仕事を頼むのが上手でした。社員の人に、自分に代わっていい仕事をしてもらうにはその人の特徴を掴み、能力を伸ばすのが不可欠です。そして依頼の仕方について生涯を通じて研究した人でもありました。彼自身が『体が弱い』事を、『人材育成の達人』と言われる長所に転換できた人でもあります。『特徴を掴み、長所を伸ばす』事は組織全体の力を向上させるのに欠かせない事だと思います。

長所を伸ばす

長所も短所もそれぞれ個性です。長所を伸ばし、短所を補う事は大切ですが、なかなかそれはできません。長所にうぬぼれる事なく、短所に劣等感を持つ事はありません。

出来の悪い上司は社員の欠点ばかり指摘する。しかし長所を見つけて伸ばし、よい成果へ還元していく視点がないといけません。会社も人も、短所を指摘して矯正したところで『普通』にしかなりません。世の中が求めているのは『普通』ではなく際立った長所から生み出された技術やサービスです。

短所はある程度放っておいてもいい。例えば、優秀なプロ野球のバッターがいたとしましょう。その人は漢字をよく間違える。だから漢字の勉強をさせて、バッティングの練習をさせないというのは大問題です。その人の世の中に対する貢献力や持ち味を無くしてしまったら意味がありません。

部下の長所を伸ばせる人は褒めるのがうまい。これは有名な話ですが、ある時松下幸之助さんが会長室で仕事先の人と面会し、新しいプロジェクトについて語っていた処へ部下の方が新企画の説明に来ました。分厚い資料をもとに、説明を始めたのですが、これはさっきまで幸之助さんが語っていたプロジェクトとほぼ同じ内容でした。仕事先の人は『同じことを繰り返しているだけだな』と思っていました。しかし説明が終わると幸之助さんは『それはいい考えやな∼君のその考えでいこう!』と言いました。

部下の方は大喜びされたそうです。普通なら『それは今、自分が考えていたプランや。一緒に頼むな』と答えるでしょう。ところが幸之助さんは、あえて部下の手柄という事にしてやる気を高めたのです。見事な人心掌握術に同席していた仕事先の人は、とても感心されたとの事です。

社員の数が少ない間は特に社員の人の特徴を掴み長所が表に出るような配置をすべきです。リーダーは自分の常識が、世界の常識と考えてはいけない。各社員が能力を発揮し、フローになれるような仕事の内容とボリュームを与える事はリーダーとして一番大事な仕事です。

天は一物は与える

『天は二物は与えず』と言いますが、逆に『一物は与える』とも言えます。その一物を見つけてその人を大事に育て上げる事は大切です。

人は多くを望みがちですが、もしひとつの物が与えられているならそれを大切にしていく事は大事です。色々なものが与えられているならいいが、たいていはそうではない。完璧にはなれない。そして様々な事に手を出す人がいますが、まずは自分の長所を生かす事に集中したほうがいい。凡人が多くの事を全て満足にこなせるという事はまずありえません。

人にはいい所と悪い所がある。いい所から学び、悪い所はやり過ごして、反面教師にすればいい。幸之助さんの著書『道をひらく』に『神様ではないのだから、全知全能を人間に求めるのは愚の限りである。人に求めるほうも愚なら、いささかのうぬぼれに自らおごる姿もまた愚である。人を助けて己の仕事が円滑に運んでいる。この理解と心配りが無ければ百万人の集団も単に、角突き合わした烏合の衆に過ぎないであろう』

他人に対してもいい所を受け入れてそれを活かし、悪い所はある程度見過ごすような柔軟さが必要です。自分も他人も天から与えられた優れた部分を見ていくべきで、それを活かす事です。自分にも他人にも二物以上を求めるのは贅沢です。互いにいい所を大切にして活かす事です。

自分は周りの人達に助けられているという事実を理解し、驕ることなく謙虚さを忘れずに他人の長所を認める。そして感謝の気持ちを伝えないといい組織は作れない。また適材適所ということを忘れると短所ばかりが集まった集団にもなります。そうならない為には日頃から雑談を心掛け、その雑談の中から長所と意志を見付ける事が大事だと思います。京セラの創業者、稲盛さんの『コンパ経営』の意味もこれに通じます。メンバーが自分の頭で考え、実行していけば、リーダーさえ不要な組織を作る事も可能です。

各々の人が、自分に与えられた課題について真剣に取り組み、考え抜いているとその解決策は湧いてくる。アインシュタインの言葉に、『インスピレーションは決して空虚な心には与えられません。それを得ようと血の滲むような苦心、努力をしている心にのみ与えられる尊い賜物です』

また本田宗一郎さんは『発明は全て、苦し紛れの知恵だ。アイデアは苦しんでいる人のみに与えられる特権である』と言われた。自分に与えられた課題にどれだけ真剣に取り組んでいる人がいるかが、組織の強さの原点です。与えられた課題が自分の長所に近い部分であると人は能力を発揮しやすい。人材育成を通じてリーダーが居なくても皆が充実して働ける、そういう人の集団を作りたい。

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