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楽しく話しましょう

『難しい事はやさしく、やさしい事はより深く、深い事は面白く』

これは作家井上ひさしさんの言葉です。世の中には難しい事を難しく言う人はたくさんいます。難しくて分からなければそれが高尚だと錯覚しているのかも知れません。しかし難解な話は何回聞いても分からない事が多いものです。分からないままにどんなに力説してもそれは無駄でしょう。相手が日本人の場合、日本語はある程度理解できるでしょうが、全てが正確に伝わっているとは限りません。

だから頭のいい人は他の日本語に翻訳して伝えようとします。頭がいいとゆうよりも勘が鋭く何よりも心が優しいのでしょう。難しい話をして、分かるのも分からないのもあなた次第だと放っておく人は意地が悪いのかもしれません。そんな人が多い中『あっ、これは分かってないな』と気づくとすぐに優しい言葉に置き換えてくれるような人は、人脈の輪を広げられる人でしょう。

難しい事を、やさしく言い換えるだけでも大変なのに、より深く、更に面白くしてくれるなんて、なんといい人だろうと思えます。なぜ面白いといいかというと、面白くすると覚えやすいからです。『ああなるほど、そういう事か』とか『そう言ってくれれば分かりますよ』とか、同じ事でも表現方法によって分かり易くも分かり難くもなる事があります。

学校でも先生が変わったとたんに勉強ができるようになる事があります。これは教え方が違うからでしょう。子供の側に責任があると思われがちですが教え方の未熟さも反省すべきだと思います。

テンプレート

ソクラテスが、大工と喋る時には大工の言葉で喋れと言いました。

以前、両親とトルコ旅行に行った時のホテルの朝食バイキングで父がオリーブの実を黒豆と間違って何回も『ウ~、また間違えた』と言っていました。また中近東では塩味のヨーグルト飲料が一般的で食事の時によく出されますが、甘いと思って飲んだものが塩辛かったというので顔をしかめている日本人が結構います。

同様に私も大学生の時にヨーロッパ旅行に行き、ガス入りの水を始めて飲んで『なんと不味いものだ』と感じました。今はこの3つとも私の大好物です。先日4歳の孫にりんごジュースがほしいと言われ、そこにあった自分がいつも飲んでいる炭酸水を与えたら、『ウ~ッ、辛い』と言ってそのうち泣き出してしまいした。大いに反省する所です。

人間は過去の経験や知識を元に自分の頭の中にこうした要素と構造が組み合わさったテンプレート(型紙)をたくさん持っています。そして見聞きした又、食した事象が頭の中の型紙と一致した時に『これは美味しいオリーブの実だ』等と判断し、分からなければ新たな型紙を造ろうとします。

伝えるのも同様に伝えようとする内容が相手の型紙と一致しなければ、うまく伝わりません。『伝わったはず』と『分かったつもり』との間に生じるズレはここにあるみたいです。

きちんと伝えるには伝えられる側の人に同じ要素と構造の型紙を作らねばなりません。その為の手っ取り早い方法が『見る』です。『見る』とは単に目で見る、無為注意ではなく五感をフルに使い目的意識を持って観る事つまり有意注意でないと意味が無いと中村天風さんが言っています。現地、現物、現人の3現で自ら経験しながら自分の視点を持って観ると要素が構造化されてより正しいテンプレートが作られます。様々な経験を通して型紙を増やしましょう。

自己評価と他者評価

人は自己申告である自己評価よりも第3者による他者評価を信じます。『うちの店はうまい』と『あの店はうまい』という情報なら多くの人は後者を信用します。CMを見ても、商品を褒めているのは大抵他者です。消費者の代表としてのタレントがその役割を果たしています。

つまり第3者が言う事により客観性が増し、説得力がアップします。他者評価はかなり威力のある説得力増幅装置と言えます。有名な例として、『劇団四季のオペラ座の怪人は凄いらしい』という名コピーがありますが、『劇団四季のオペラ座の怪人は凄いですよ』から最後の助動詞を変えただけで見事に自己評価を他者評価に変えています。

誇張

弱い犬ほどよく吠えます。また下手な芸人ほど表現が大げさです。同様に下手なチラシでは空疎な修飾語が多くみられます。見栄や強気は事実を歪め接頭辞が去勢を張ります。最たるものは『超』や『大』で本質を語っていません。これら一字を重ねても本質は何も変わりません。大特価、大転換、超高性能など大抵は上げ底や粉飾で祭り上げられています。例えば30年もたてば『新館』は立て直した本館よりも古くなります。リニューアルされた大阪駅よりも『新』のつく新大阪駅の方が古めかしい。

売り込みの言葉を考える時やカタログを作る時は少なくとも上記のような事に気を付けると正しく理解され、説得力が増えて受け手にも喜ばれます。

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